INTERVIEWS
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Luke Slater

今年は新しいスタジオ「Spacestation 0」の設計に追われて忙しかったけど、数ヶ月後にはここからの初作品がリリースされる予定で、いろいろとおもしろいことを企画しているから休む暇はないね。去年から今年にかけて本当にすばらしいギグをやらせてもらったよ。「Temporary Suspension LP」と「Planetary」からのシングル曲をリリースして以来、DJと同様に好評を博しているし、今まで届かなかった新しい人たちにもきちんと伝わっている。現在たくさんのリミックス案件をこなさなくてはならないんだけど、今実はこのスタジオ構築のせいで制作進行が遅れているんだ……!

でも完全なものでない限り、妥協して中途半端なものをリリースすることはしないし、きちんと気を引き締めていくよ。 ご存知のとおり「Freek Funk」は家のガレージを改造したスタジオで、自分の中の転換期をむかえたころに制作したものんだ。その後ときを経て、十分に機が熟すころまで待って一気にリリースを放ったんだ。そのころには質の高い、前衛的で中身のあるようなものを時代が受け入れる準備ができたと感じたし、時代が変わっても色あせることのないものを作ったつもりだ。でも、それは理論上のことであって、制作はとてもシンプルなものだったんだ。一昼夜かけて1曲作り、必要であればその倍くらい作曲した。また昔のプログレッシブロックのイデオロギーに基づいたコンセプトアルバムを参考にして作曲もしたし、1曲1曲がひとつのストーリーを展開しているともいえるね。 情熱をもって音楽を愛すること、そして努力とユーモアのセンスが必要だな。 そうだね、時代の変化はその起きている瞬間には気付かないもので、過去を振り返らない限りその違いについてはわからないものだと思う。僕のキャリアの中でひとつ確かにいえることは、いろいろな国が開花し、同期し、そして廃れていき、そして再び開花していくサイクルというものがある。どんなことに対してもいえることだけど、自然の原理的には常に安定していることなんてありえず、常に変化していくものだと思う。そしてその変化がいつも僕を魅了してきたんだ。1990年代に初めて東ヨーロッパでプレイしたとき、当時はまだ一部地域ではビザが必要だったんだけど、テクノの第一波が押し寄せたときには、あまりにみんながその波を待ち望んでいたため、町はその波を一瞬にしてに飲み込んでしまい、一滴たりとも残らず波を吸収してしまった。そのすぐあとは全盛期はおろかすでにみんなはグルーヴをとらえ、ギグで遊ぶことをおぼえ、ひとつのギグから次のギグへとハシゴするほど一気に成熟期へと向かって行った。
今となっては好きだけでやっていける時代も終わり、何ごとも真にコミットしつつ、さらに人よりも抜きん出ないとやっていけないけど、僕はそのほうが好きだな。 僕のやっていることに関する考え方の原点は揺るぎなく固い。そこにはもちろんジャンルによって遊べる柔軟さもあるし、ときには既成の枠を超えていけるくらいの余裕もある。何ごとにおいても常にオープンでなければいけない。

僕が個人的にもっとも大きな変化をもたらされたのは、みんなが僕の過去の作品が好きだということがわかったこと。PLANETARY ASSAULT SYSTEMSのライブをするときは、PASクラッシックスから数曲聴けるとみんなに喜んでもらえるんだ。
そこで今の自分を形成しているのは、そういった過去があるからこそだと理解した。過去の自分と今を比べると、今のほうがより落ち着いていて気楽でいられるな。「ベテランの~」ということばを使って自分を評されると、ひとつの到達点に着いた感じがする。とはいえ、自分のやりたいことの半分くらいまでしか達成していないんだけどね。 「L.B.Dub Corp」は2007年に僕がロンドンで発案して誕生した最新の名前なんだ。その名のとおり、ダブの中でもまだ若くて、ナイーブ且つプログレッシブなものを意味している。ものすごく楽しんでいるよ!今のところは「L.B. Dub Corp」は”Mote-Evolver”と”Ostgut-Ton”のみの限定リリースだけど、これには満足しているよ。「PAS」はプロジェクトを始めてからこの1年、たくさんのトラックをリリースしてきていて、最近では”Mote-Evolver”レーベルから「GT(REMIXES)」や、去年はOstgut Tonからアルバム「TEMPORARY SUSPENSION」を、そして”Peacefrog”からすべてのバックカタログをリリースしたよ。そしてLuke Slater、それは実体あるものすべてを取り囲む大君主であり、強情なきかん坊たちのアニキ分であるLuke Slaterだね!(笑)まだときどきリリースしているよ。最近では”Third Ear Rec”からリミックスや、そして過去には”Mute”と”Nova Mute”からリリースしたな。こういった別名義での活動は僕にとってとても重要な意味があって、それぞれの音を通して違ったストーリーを語っているんだ。 2006年に”Mote-Evolver”の初リリース作品として「GT」がリリースされたんだけど、当時はちょうど僕にとって心機一転、新しい時代の始まりだった。2010年に入ってから、あのシンプル且つ代表的なトラックを3人の親しいミュージシャンに託し、料理してもらおうという気になったんだ。「Planetary」からのトラックで未だかつてまだやっていなかったことは、リミックスをすることだったんだ。そういうわけでも僕にとっては特別なリリースでもあったし、リミックスされた作品はすべて最高のものだった。実をいうとGTは車や乗り物から名前をとっていて、「Grand Tourer」という意味なんだよね。 リミックスのオファーは自分からアーティストにダイレクトに行っているんだ。才能あるアーティストが、僕のトラックに吹き込んでくれる魂を感じ取るのが好きなんだ。自分が納得するアーティスト、納得する作品でなければ、率直に「ブルシット」っていうよ。それが作品というものだし、そのアーティスト作品が好きだからオファーする。その昔、親レーベルと契約していたとき、なんらかの理由で誤ったリミキサーが選ばれたことがあったんだけど、今後は断固としてそのようなことがないようにしたいね。僕はいろいろなアーティストの楽曲を好きでかけるけど、好きなことをやらなきゃ音楽をやっている意味がないだろ? いずれかのタイミングで出したいと考えているよ。 とにかくたくさんのアイテムがあるから、一度スタジオを覗きに来るといいよ!あらゆるハードもソフトも揃っているから。信頼しているもの?そうだな、実はどの作業をするにしても、コンピューターによるDAWは信頼していない。転じて、僕は常にバックアップを複数とることにしているぐらいなんだ。通常の方法みたいに、曲を書いて、そこにどんどん上書きしていくというルールとは違うんだけど。 LucyやSubmerge、Samuli Kemppi、Marcel Fenglerなど、” Mote Evolver”のレーベルアーティストたちは本当にプッシュしているよ。あとまだ名前は出せないんだけど、12月に12インチを出すアーティストも。あとはJames Ruskin、Surgeon、Equalized (Shed)、Cari Lekebusch、Norman Nodge、Gary Beck、Virgil Energizer、DJ Pete、Kirk Degorgio、Skudge、Shakleton、Robert Hood、Speedy J、Ben Gibsonとか。挙げ始めたらキリがないぐらいだよ。 今回は5日間の滞在になる予定だよ。去年から今年にかけて「Melt」「Mysteryland」「I Love Techno」「Dour」「Bloc」「Aquasella」といったビッグフェス、そして”awakenings” ”Berghain” “Fabric” “Nitsa” ”Sub Club” ”Atomic Jam”という名だたるクラブでライブを行ってきたわけだけど、11月13日(土)のageHaでのギグは、ツアー最後のPAライブショーのひとつなんだ。本当に楽しみにしている。
そしてやはり醍醐味は東京でおいしいものを食べること、そして東急ハンズに立ち寄ることかな。「CLASH」そしてプロモーターの”Third-Culture”のアラキとマナミが、とてもよくケアしてくれるんだ。 なんてことだ、僕はかれこれ10~12回ぐらいは来てるんじゃないだろうか!?僕は日本が本当に好きなんだ!前回訪れたのは、今年の初めだったかな。年明けすぐの「CLASH」でケンイシイとプレイしたよ。 そうだな、初来日のときの話をしようか。そのときは、リキッドルームでライブセットとDJセットをやって、本当に疲れていたんだ。そのときアテンドしてくれたプロモーターが、ボトルに入った変な飲み物をくれたんだ。蛇だったか虎だったか、何かが入ってる飲み物をね。そしたら、それを飲んで以降のことは一切何も覚えていなくてね。これは僕の脳裏から一生離れないミステリーのひとつだな。 まず街に溢れている計算されたような色使いに、心を奪われるね。あと、最近ではショップの数も少なくなったとはいえ、毎回レコードショップに足を運ぶようにしている。東急ハンズもお気に入りだね。そして毎回カップラーメンは買って帰るようにしているよ。スタジオで空腹になったときにもってこいなんだ。 みんな、本当に愛してるよ!ageHaで会えるのを楽しみにしているよ!