INTERVIEWS

HIROSHI WATANABE

毎回そうなんですが、実は全てのタイトルは僕の場合最後の作業なんですね。アルバムの場合でしたら、楽曲も全て揃ってからそれぞれの曲名とアルバムのタイトルを決めて行きます。
そういう中で今回はいつもよりも更に決めるのに苦戦しまして…、なかなか決まりませんでした。なぜかというと、漠然と自分自身が今年40歳となる2011年にどんな作品を出すのかとか、さまざまな環境の中で作り上げれられた作品ということもあり、作り始めた時からアルバム全体に一つのコンセプトが決してあったわけではないんです。そういう意味では、まさに自然の流れの中を自由に模索して辿り着いたという感じだと思ってます。
ただ、それはあくまでも作業工程のことで、作り上げられたアルバムには自分の無意識の中で意識的に動かされてる何かというものがあることも感じていましたので、自然にでき上がったものを出揃ったときに、「さて、今回のこのそれぞれのパーツは何を意味してくれているのだろうか?」とその謎を解くようにして最後に悩んだんです。
そうしている中、だんだんと見えていった言葉は「POSITIVE」というものでした。そこから連想してストレートに「プラス思考=POSITIVE THINKING」ということへ発想が向かい、その言葉を「THINK POSITIVE」とおき、この言葉の解釈をさらに探究して行きました。そうしたときに実は「POSITIVEを考える」のではなく、自分自身から「POSITIVEというバイヴへと同期していくことが大事なのだろう」という結論が、「SYNC POSITIVE」という言葉で完結したんです。これは偶然とは思えなかったですね。ここに辿り着いたときはおおおっと胸騒ぎがしましたよ。「コレダ!」って叫びました。 一つ前の質問でも触れましたけど、僕自身が今年40歳になるという意味で、勝手にアニバーサリー作品と思っているところがあるんです!(笑)。そういう意味でも自分を振り返ってみて、随分と長い間この音楽へと思いを注いで来たんだなって勝手にセンチメンタルな気持ちになりつつも、またこの先、自分が進んで行く人生へエールを送ることができるような前向きな力というものを込めてることは確かです。
前作「GENESIS」はもっともっと何も考えずに勢いで作っていたことを覚えています。でも、今はより一つ一つの存在する意味と答えを求めていることは確かなのだろうと思います。そういう意味でアルバムの中の変化というものは、僕の生きてきてる変化そのものなのかも知れないですよね。というか当然そういうことなのだろうと思います。アルバム最後の曲を除いて、実際には全てがインストルメンタルな音楽ですからね、言葉でストレートに何か伝えたいことを音楽に載せることは不可能ですから…。
なので、言葉に載せることのできない音だけの表現の中にはたくさんの感情、言葉で言い表せない想いが詰まっているのだと思いますよ。 そういってもらえますと大変うれしいです。それぞれ名義を分けていることで頭を切り替えていることも実はモチベーションを保つのにとても役立っています。もっとベーシックな部分でいえば、自分自身の原動力はあくまでも純粋に生活そのものでしかないです。作り上げる作品が自分自身の経験以上のものにはでき上がらないだろうと思っているので、音楽そのものに常に意識を向けているわけでもないです。地道に少しずつでも良い経験、良くなかった経験を積み上げて、人生をとおして音へとそういうものがにじみ出る音楽がしたいですよね。
原動力とは別にインピレーションという部分においていいますと、結局は自分の幼少期に感じていた世界観がずっと心にあって、その何かを探究し続けているだけなのかも知れないです。もう少し説明をしますと、自分の場合の音楽は、言葉にはできない情景というものを心の中で形にしていく作業だと思うんです。必ず思うのはある一定の広さを超えた壮大で荘厳なイメージなんです…。そういう漠然としたイメージがどこから来たのかはハッキリ分からないですが、なぜかメランコリックな旋律のものへ吸い寄せられていってしまいますね。 その質問はとてもむずかしいですね……。一番簡単な言い方をしてしまえばそれはやはり「好きだから!」ということですよね。それが一番正しいんです。だけど、ずっと続けていくと、好きという気持ちだけではなく、やはり活動や内容に自分の人生を懸ける意味や在り方、もしくは誰かの中での存在意義みたいなものまで大きく捉えていくことは確かなんです。
これはあくまでも自分の場合ですが、一番自分自身の生活や思想、想念、存在というものからなるエネルギーを一点へと集約できるのが、自分にとって「音楽」だということに過ぎないです。その先には多くの人と繋がり、関わり、音を通じて生きているということを共有したいという欲求に駆られます。大袈裟に思われるかもしれないんですけど、毎回楽曲を作るときというのは、自分への期待と不安があって、奇跡を起こしたいと強く願っているんですね。その連続なんです。恐らく今後も、一番シンプルに好きという思いと、人生を通して自分自身が外へと放出していく技法として音楽は止められないことは確かですよね。
音楽に触れているとき、作っているときというのはまるで時間という感覚がないです。瞬間、瞬間の連続で、作業中というのは何分とか何時間という感覚が無くなって行きます。不思議な次元にすっと入り込んだように。 困難なのは自分の人生を全うするということが困難なのだと思っています。音楽を通じて表現すること自体へは、そのように思ったことはないのでしょうね。ただ、先程も述べました通り、常に毎回自分自身のゴールラインが上がって行く中で、奇跡を起こせるかどうか?と自分へ切迫した気持ちへと追い込むことはあります。だけれどこれは困難ということではなく、裏を返せば快感なんです。追い込み派なんでしょうね。 実にギリシャの"KLIK RECORDS"との関係は2004年からなのでかなりの回数になってますね。国土も日本の半分以下ですし、決して大きな国ではないんですけど、実はシーンはしっかりあるんです。ギリシャのイメージってきっとミコノス島だったりサントリーニ島だったりと、青い海に島というイメージも強いかと思いますが、僕がツアーで行く場所は島も行きますが、もっともっとローカルな場所にもたくさん廻って来ます。たとえば会場にお客さんがそれこそ2000人以上集まるバークラブのようなオープンスペースであったりして、お客さんは皆それぞれ音楽を思うがままに楽しんでいたり。ビーチパーティーなども夏のツアーではいろいろまわりますし、いろいろなケースがあって面白いです。
ただ、近年のこの経済状況はとても深刻ですので、やはりアンダーグランドシーンにもとても多大な影響が出ていることも確かです。以前のようにはイベントも成立しなくなっていますよね。もちろんこれは世界的なことでもありますからギリシャだけに限ったことではないですけどね。日本であっても震災前からこの経済の問題はあるわけですから。因みに、2004年から数えると間違いなく15回以上は行ってますね。 エピソードですか、もうたくさんあり過ぎて書き切れないですよね(笑)。とにかくギリシャの人は皆とてもおおらかで人なつっこくて、とくに日本人に対してとてもリスペクトしてくれてますので、どこに行っても温かくむかえてもらえることは大変ありがたいです。僕のツアーは毎回ギリシャ国内をあっち行ったりこっち行ったり飛行機や車で移動しまくりなんですが、その間のエピソードは尽きないですよ。あるツアーの最後、最終目的地でDJをしたと思ったら、もうその場を離れてタクシーでアテネの空港に向かわないと日本行きの飛行機に乗り遅れる、みたいなあり得ないスケジュールを組まれたこともありました。僕はタクシーで山道を2時間走り、そのあと高速道路をまた2時間ぶっ通しで270キロ出されて向かったり…。正直に死んでしまうかと思ってました。因みにギリシャの人は大体英語しゃべれる人多いんですけど、そのときのタクシーの運転手は英語は全く喋れないのでいちいちその運転手が自分の奥さんに携帯で電話をして、僕に電話をよこし、会話をしてまた電話を戻したり…もう訳がわからない…。因みにその奥さんは僕に電話越しに「あんたその時間に空港に行くって間に合うわけないじゃないの!」って怒ってる訳わけ。僕も「そんなこと言われても知らんがな」って…。この予定を組まれたことをそのときはタクシーの中で激怒してたけど、どこにも気持ちはぶつけることはできずに…。だけど、海外ではこういうことはなんだかんだよくある話でもあるので、結局繰り返すことでタフになっていってしまうんです(笑)。こんな話はたくさんありますよ!もちろん良い話もいっぱいです。 アルバムの制作中でのツアーでしたのでもちろんとても良いブレイクとなりましたからね。そういう意味でツアーをしている2週間、作り上がっているトラックを早速それぞれの場所で掛けてみたり、お客さんの反応をみたりできたのも良かったですよね。そしてツアー中には現地で1曲作り出したものもありますし、そのデータを日本に持ち帰って完成させたんです。それぞれの事柄は絶妙に完璧なタイミングで成立しているように思えます。 制作時とお客さんの前での表現とは確かに微妙に違いはありますよね。やはり制作時はあくまでも1人の世界ですから。パフォーマンスというのは誰か相手がいて成立しますし、リアルタイム性が高いですからハプニングを楽しむわけです。制作は個人の中でそのさまざまなハプニングを一つ一つキャッチして行く作業ですから地道な作業です。とくにライブやDJのときの感覚というのは、プロとしての現場の流れやお客さんの反応はもちろん意識しているのですが、自分の場合は何よりも自分自身が音へ入り込めていられるかを基準にしてます。これもDJやパフォーマーによっては意見はまるで違うと思いますが、自分の場合は自分の意識がフッと消えられる瞬間が見えたときが一番心地よく、その想念によって会場にいるお客さんと一体化が結果として生まれるということが好きなんだと思ってます。 全曲精魂込めて作ってるのでね、とくにというといえないです。ただ、たとえばMINGUSSに歌を歌ってもらったラストナンバーの「Scent Of Tomorrow」は、実際には原曲を丁度1年前のKAITOヨーロッパツアーのときに制作したんです。モスクワに数日間滞在しているときに、大雪で外にも出れないときがありまして、その間にホテルで作っていたものだったりするんです。なのでそれぞれの曲に対して、思いは勝手に込められているのだと思ってます。「Scent Of Tomorrow」に関しては、海外リリースする中で歌詞を日本語オンリーで制作したことは逆にこだわった部分ですし、メッセージも強いものとなってますよね。そのほかどの曲も気が付かないかも知れないですが、自分なりに小さな変化やこだわりを持って制作しているので、自分としてはとてもでき上がりに満足しています! 昨年彼女が僕のKAITOとしてのライブに遊びに来てくれたときに、いろいろと話をしたことがきっかけで、実際に彼女から僕へアルバム制作のプロデュースをしてもらいたいと依頼がありまして、昨年MINGUSSのアルバムを完成させたんです!僕の役目は総合的な目線でまとめあげ、ミックスダウンやアレンジの改良などが主です。素材や作曲に関してはすべてMINGUSS本人のもので構成されています。とてもすごいアルバムになってます。必ずリリースしなくてはならない作品ですので現在機会を探っているところです。そして、そういう経緯の中で今作のボーカルトラックへは、彼女しか歌ってもらいたい人はいないと思えまして、依頼したわけです。MINGUSSにはとても強い音楽へのエネルギーを常に感じます。僕が言うのはオコガマしいですが、本物の匂いがすごくするんです。以前に彼女が1人で作ったというデモを聴いた瞬間にそう感じましたよ。 そうですね、変わらずずっと音楽を作り続けて、より多くの人と触れ合っていきたいですから。今年もまだまだたくさん作る予定です!KAITOのリリースも控えており、今年シングルを出して、来年初頭から春にかけて再びアルバムをリリースできるように動く予定です。TREADもついに6枚目のアルバムを作ろうと思っています。
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