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Leonard Part Sixx a.k.a. Underdog

子供のころ、いつもラジオのチャンネルをWDAI-FMに合わせていた。WDAI-FMは、そのころのシカゴではメジャーなディスコチャンネル。Kenny Jason(後の"Hot Mix 5"のメンバー)とJeff "Get Down" Davisが、お気に入りのDJだった。ラジオを聞いているうちに、かかっている音楽がどうやってミックスされているのかが気になり始めたんだ。また当時は、ディスコやR&Bのレコードをメインに買っていたんだけど、そのミキシングやエディットのクレジットで、よく見かける名前があった。Walter Gibbons、Tom Moulton、Larry Levan、Tee Scottなどなど。これらのミックスがどうやって作られているのか、興味があったんだ。
自分がDJを始めるきっかけを与えてくれた人の1人が、シカゴ南部の"The Bitter End"というクラブのアフターアワーズでDJをしていたMichael McNealだ。彼は、Music BoxのRon Hardyにも時折足を運びつつ、頻繁にニューヨークにも飛んで、最新のアナログやSunshine Soundのアセテートをゲットしていた。「DJは他人よりも抜きん出て、オリジナルな何かを持ち合わせていないといけない。」と、彼にいつも言い聞かされてきた。エディットも同じような経緯で始めたんだ。ポーズエディットやテープをスプライスしたりして、カセットデッキでミキシングやエディットのスキルを磨いていった。その頃は、本当に若かった!だけど、若いなりに試行錯誤し続けたんだ。Underdog Editは、そのころからの試行錯誤の賜物だよ。 シカゴでのFrankie KnucklesとRon Hardyの存在は、ニューヨークでのLarry LevanとTee Scottの存在と同じなんだ。この2人の素晴らしいDJプレイを見聞きできたことは、自分の人生で1番の体験の1つだよ。自分の覚えている"Ronnie"の思い出のひとつは、needle-skip(針飛び)パーティーだ!Ronは、1曲を最後までかけて、しばらく放置してから次の曲をかけることがよくあった。このスペシャルなパーティーでは、彼はレコード1枚1枚を最初から最後まで、内側の溝で針が飛んで、ブツッブツッと音が聞こえるまでかけるんだ。針飛びの音がループしてきて、クラウドはどんどん熱くなってくる。Ronはわざとやっているようだった。針飛びのループ音に被せて、いろいろなサウンドエフェクトが聞こえはじめて、最後に、彼独特のリールエディットが重なってくるんだ!本当にマッドだったよ!でも、クラウドはそれを受け入れてたんだ!これはまさに音楽の力であり、音楽によってハッピーアクシデントが起こったと言えるんだ。 自分のかける曲で、ストーリーを伝えたいんだ。偉大なDJは、自分のセットの中で、自分の表現したいストーリーを伝えていると思う。クラウドと繋がれば、より良い表現ができる。そこにやりがいを感じる。自分のヴァイナルコレクションは、自分のストーリーを伝えるに足るところまで来てると思うんだ。少なくとも、そう願いたい。それを受け入れてくれるかどうかは、クラウド次第だけど。 真実。その曲に潜む真実やアーティストが表現しようとしていることを引き出すことかな。自分のエディットに対するアプローチは、いわゆるエディットのサウンドを出したいわけではなく、その曲の本質を失うことなくバージョンをエクステンドしたいんだ。また、自分にとって、エディットは、自分自身のDJのために作るものだと思ってる。Ron Hardyのエディットは、彼自身のDJに合わせて作られたもの。Ron Hardyのようなプレイを、よほど意識してDJするのでなければ、Ron Hardyのエディットが、その人のDJに生きるかはわからない。世界中で、自分のエディットが受け入れられて、皆にプレイされているのは嬉しいけど、自分はあくまで、自分のDJのためにエディットを作っているんだ。 The Shrineは、アフリカでもっとも知名度のあるFela Kutiのナイトクラブをイメージして作られているんだ。このクラブのミッションは至ってシンプル。過去から現在に至るアーバンミュージック、カルチャーのベストな部分をプレゼンスしていくことなんだ。(Music BoxやParadise Garageのような)大きなクラブシーンを作ろうとは思っていない。それは、今日のアメリカのシーンが求めていないから。自分たちの時代のクラブカルチャーは、コミュニティそのものであり、仲間であり運命共同体だった。そして、そのころの音楽はこういったテーマを反映していた。今の若者は、コミュニティや仲間意識といったことにあまり関心がない。だけど、どんな世代だって自分たちの過去の経験に基づいて、自分自身の"シーン"を作り上げているんだ。 あいにく、LISTEN:UPは終わったんだ。だけど、RonはThe Shrineに欠かせないDJだよ。彼は今ここで、"ILE"っていうマンスリーパーティーを持ってるんだ。このパーティーは、LISTEN:UPで自分たちがやってきたことを体現している。僕はいつもRonのファンだし、彼と一緒にやれたことを誇りに思う。"グッドミュージック"こそが、まさしく自分たちが毎回パーティーで表現しようとしていたものなんだ。幸い、近い将来また一緒にパーティーをやる予定だよ。 うん、まだ買ってるよ。未だにヴァイナルジャンキーだよ!だけど、DJとしてはある程度、世の中の変化に適応していかないといけないと思うんだ。だから自分は、世界中の他のDJと同じように、ある程度デジタルに移行してSeratoを使っているよ。自分のヴァイナルコレクションをデジタルに落とし始めているんだ。だけど、良いサウンドシステムで聞くアナログの音には決してかなわないけどね。 ワオ!音楽は自分にとって全てだよ!音楽を探求することに人生の大半を費やしてきたんだ。多くの人がディスコについて気付いていないことは、シンプルな4つ打ちに内在する人間模様なんだ。West End RecordsのMel Cherenの後期の言葉なんだけど、「ディスコはダンサブルなR&Bだ」とは、よく言い得たものだ。例えば、MFSBの"Love Is The Message"は、純粋にR&Bだけど、Earl Youngのドラムが入ることで、体が勝手に動いてしまう。ディスコもR&Bと同じように心の中に生き続けるものなんだよ。 The Shrineでの仕事のほかに、Underdog Editsの新作に取り掛かっているところで、これもアナログで出そうと思っている。デジタルはJuno Downloadでもゲットできるよ。あとは、リミックスやオリジナル楽曲の制作も少ししてるよ。スタジオから少々離れていたので、また戻って力を入れようと思ってるんだ。そして今年は、Underdog Editが注目されてきたエリアに旅行してみたいと思っているよ。 DJで呼んでくれて、また、自分のストーリーを伝える場を与えてくれてありがとう。World Spinの当日は、楽しんでくれることを祈ってるよ!