INTERVIEWS

Andrew Weatherall

 ありがとう、アルバムの出来には満足しているよ。もともと自分が主催しているダンスイベントでプレイしたいと思える曲が少ないのに不満だったのがきっかけで作ったんだ。他にないなら自分で作ればいいじゃないかと、笑えるぐらい気づくのが遅かった。なにせ1万枚以上もレコードを持っているんだからね。今回のコラボパートナーのティムともとてもいい感じで一緒に仕事ができたよ。 以前ロンドンで「Haywire」というエレクトロテクノイベントを主催していたんだが、彼はそこのレギュラーだったんだ。お互い音楽好き同士で共通の友人もいたので仲良くなり、かれこれ10年以上の友達だよ。ちょうど彼がスタジオスペースを探していた時に俺の共同スタジオに空きがでて、その後で新しいエンジニアを探さなきゃと思っていた頃には、ティムは俺の作業スタイルを把握していたので自然に彼に依頼したんだ。その数年前から隣のスタジオで俺が作るサウンドを聴いていたから、俺が何を求めているかすでに分かっていたんだ。彼に頼むのはとても自然な事だった。
彼もDJというよりは自分の音楽を制作しながらレコード屋で働いていて、なんだか若い頃の自分を見ているようだった。音楽に使えるお金があればちょうどいい、ってぐらいに働いていた頃の自分をね。俺よりプログラミングについて詳しいので「こんな音がほしい」と言うとすぐに理解してくれる。俺はこの道に携わって25年以上も経つが、今でも学ぶ事はたくさんある。ティムとは教え合って学び合う関係なんだ。それにお互いを笑わせる事もできるから、常に新鮮な仲でいられる。 80年代初頭にリリースされてからずっと好きだった曲なんだが、世間は長い間この曲の事を忘れていたらしい。最近はコンピレーションを出したり、ジャーヴィス・コッカーやブリティッシュ・シー・パワーが彼らのカバーをしたりしているので、また少し注目が集まっているようだが。新しいクラブイベントを考えていた時に「宇宙からの愛」というフレーズを見て、ネーミングはこれしかない、とピンと来たんだ。その名の通り、異世界からの音楽って感じがするよな。
もともと音楽に夢中になったのも、つまらない町での生活を忘れさせてくれたからなんだ。自分の心を動かす音楽は必ず何かしら異世界、異次元から現れたような感じがするんだ。エコーや音ズレがたくさん入ったそんな音楽なら、レゲエでもロカビリーでもなんでもいい。 ジョン・ベッチェマンの詩の朗読をアレンジした「Late Flowering Lust」は、以前から親近感を持っていた作品だ。年老いた男女が酒の勢いにまかせて若い頃の熱情を取り戻そうとするが、虚しいだけという、自分にも覚えがある話だよ(笑)。自分の作品にはシリアスで少しダークな音楽も多いけれど、それを作りながら仲間と笑い合えるのがこのスタジオの空気なんだ。ティムともしょっちゅうふざけあっていたよ。どんなに真剣な仕事でも、楽しいと少しでも感じられなければ飽きてしまうからね。お互いダークなユーモアが理解できるんだ。スタジオで作業を続けていると、こんなに変わったサウンドを出してお金をもらっているんだと考えればどうしてもおかしいと思えてくるものだよ。

 


50に近づいてきて、激しいダンスができなくなってきたからだろうな(笑)。そのくらいのBPMの方がビートの間に余裕があっていいんだ。初期のハウスミュージックもそのくらいのBPMだったんだよ。後でテクノビートがどんどん早くなっていったんだ。時代とともにドラッグが変わっていったのも関係あるのか、単純に我慢が弱くなってきたのかな。
俺自身は音楽の中に我を失うような単調なビートが好きなんだ。突然ビートが変わったりドロップが入ったりするとこっちのテンポが狂ってしまうしね。以前はもっとグルーヴを効かせたハウスやディスコサウンドが主流だったんだ。

自分はレゲエを通して音楽を学んだ。ビートは結構早いんだが、ハーフテンポに落とすリズムで踊りやすいのが特徴だ。ミック・ジャガーがレゲエ調の曲のリズムに苦労していたキーボード奏者に「ジャングルを歩くライオンを想像すれば分かる」と言ったという話があるんだが、まさにそんな感じだね。だからジャングルミュージックと呼ばれているのかな? 確かにこのアルバムは「Love from Outer Space」でかける音楽が欲しいと頭の隅のほうで考えていたんだ。それがアルバムを作った理由の全てじゃないが、半分ぐらいは「Love from Outer Space」用にと考え、残りはダンスフロアを意識せずにプロデュースした。ただ合理的なものじゃなくて聴いている人にとって特別な体験になるような作品にしたかった。だからダンスフロアトラックを中心にボーカル入りの歌も入れたんだ。観客に「さぁ踊れ」と一方的に命令するんじゃなくて、もうちょっとパーソナルなコミュニケーションをとりたかったしね。歌詞が聴きづらかったり意味不明でも、ボーカルがあるとインスト曲より聞き手との間に対話が生まれると思うんだ。
ダンスフロアは身体的には合理的な場所であっても、頭脳を使う場所じゃない。クラブはきっかけを作る場所なんだ。そこで生まれる友情が何よりも大切なモノであって、クラブはもちろん大好きだけどそこが全てだとは思わない。そこで出会うたくさんの人の中から本当に仲間と呼べる友達を見つけ出すのが大事なんだ。クラブカルチャーも浅はかで無意味なものだからね。だけどクラブやイベントなどでアイデアが生まれることはしょっちゅうある。クラブに人が集まるのは、何千年も昔、人が洞窟などで集団で共存していた時代から変わっていない証拠だ。共通点を見つけ出して他の人間たちと共存したいと思うのが本能だからだ。それは宗教だって音楽だって酒だって詩の読み合いだっていい。大事なのは何をしているのかじゃなくて、そこで起こる人同士の交流なんだ。人間は何かに属したがる本能を持った生き物で、クラブも立派な部族だ。木の棒を叩いて作ったビートがコンピューターで作られるようになっただけの違いさ。 よく人に「このアルバムは前のアルバムとこう違う」と感想を言われたりするが、僕自身はその違いがよく分からないんだ。ある朝起きて「さぁ、今日から新しいアルバムを作るぞ、コンセプトはこんな風にしよう!」なんて言ったりしないんでね。もっと自然な流れで作られる物なんだ。この地下スタジオでは作業が終わることはないよ。半年か1年に1回誰かに「そろそろ溜まってる曲をまとめてアルバムにしたらどうですか」と言われて作業に取り組む感じだ。
50に近い年齢になったが、進化は止まることはない。年を取るごとに経験を積んでも、中身はグラムロックを初めて聴いて興奮した12歳の頃と変わっていないんだ。そういう自分の核なる部分は失くならないんものなんだろうね。
もし自分が明日からアコースティック・ギターと歌のアルバムを始めたとしても、知っている人ならそのサウンドはアンドリュー・ウェザーオールのサウンドだとすぐに分かるだろう。自分が好むコードやフィーリングは変わらないからね。音楽学者にならどこがどうアンドリュー・ウェザーオール流のサウンドなのか全て細かく指摘できるだろう。ターナーとピカソの絵画を見分けられるようにね。
おっとなんてこった、今僕は自分をピカソと比べてたのか?(笑) 新しいアルバムをエンジョイしてもらえれば嬉しい。この音楽はなんのジャンルなんだろうなんて余計な事は考えずに、ただ純粋に楽しんでほしいね。

そして何年もの間応援してくれてありがとう!まだこれからも当分は続くことを期待してほしい。


開催日:11月23日(金・祝日)
会場:千葉"幕張メッセ"
時間:21時
料金:当日9800円 前売8800円
出演:【HALL 9】Flying Lotus, Squarepusher, Amon Tobin ISAM, Tnght, DJ Krush, Kode9,
【HALL 11】電気グルーヴ, ORBITAL, Four Tet, Andrew Weatherall, NATHAN FAKE, DJ Kentaro, 高木正勝,
【SPECIAL GUEST】DAITO MANABE

開催日:11月24日(土)
会場:大阪"ATCホール"
時間:21時
料金:前売¥7,800
出演:FLYING LOTUS, ORBITAL, SQUAREPUSHER, FOUR TET, ANDREW WEATHERALL, TNGHT, NATHAN FAKE, KODE9

■electraglide 2012
http://www.electraglide.info/ アーティスト:The Asphodells (Andrew Weatherall & Timothy J. Fairplay)
レーベル:Rotters Golf Club / Beat Records
フォーマット:CD
発売日:11月3日(土)
価格:¥2,200

■BEATINK
http://www.beatink.com/Labels/RGC/Andrew-Weatherall/BRC-347/
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