- 80年代の頃にシカゴやデトロイトのアーティストが作ったオリジナルトラックと、それを聞いて影響された今の若い世代のアーティストのトラックをミックスすることに意味があると思ったんだ。 -
- これからメインフロアでのDJを控えていますが、どのようなお気持ちですか?
「WIRE」は日本で最も重要なエレクトロニックミュージックフェスティバルであり、長年にわたりDJや日本のエレクトロニックムーヴメントに多大な影響を与えたんだ。俺は初期の頃から回す事ができてとてもエキサイトしているし感謝しているよ。すごく楽しみだし、15周年っていう特別なアニバーサリーにオファーをもらえて光栄だよ。
- 「WIRE」では1時間と、普段のプレイより短い時間ですが。
時間が短いからこそ会場とお客さんの熱を感じとることが大事なんだよ。DJは常にライブなんだ。
- Giorgio Moroderには会われましたか?
まだ会えてないんだ。彼は、ディスコミュージックの先駆者で俺も大きな影響を受けているよ。映画のサウンドトラックをDJで使ったりするんだけど、彼が関わった曲もたくさんあるからね。
-〈Tresor〉からリリースしたミックスCD『KERN』は、Dark Comedy、Robert Hoot、Inner Cityなどの昔の音源とJonas Kopp、Sebastine Sanなどの最近のトラックなど新旧が混じってのミックスになっていますが、ご自身ではどういった作品にしようと思われましたか?
80年代の頃にシカゴやデトロイトのアーティストが作ったオリジナルトラックと、それを聞いて影響された今の若い世代のアーティストのトラックをミックスすることに意味があると思ったんだ。このミックスに収録したトラックは、コレクションしているレコードの中から200枚選び、その中からさらに25枚選んだ。もとの200枚は、俺自身思い入れのあるトラックばかりだよ。だから25枚に絞るのは大変だったよ。その中には、発売されていないトラックや、このミックスのために作られたトラックもある。俺のキャリアを反映した作品と言ってもいいくらいだ。デトロイトやシカゴを感じさせるトラックが多いけど、俺はブラックミュージックに対して大きな憧れを持っている。彼らのビート感やグルーヴ感にね。だからこの作品は、ブラックミュージックのカルチャーを意識したヨーロッパ人の解釈なんだ。1枚だけ、入れたかったけど手に入れられないトラックがあったんだ。それがClaude Youngのトラックだったんだけどね。 - 私の感想なのですが、個性の強いトラックをショートミックスで展開されて面白かったですいる部分が特におもしろかったです。SoundcloudやPodcastなどのフリーミックスではなく、作品としてミックスを作る時、どういったことを意識されますか?
コンピレーション制作は常にアルバムとして、または自分史上のベストコレクションとして制作しているよ。ミックスCDは大体半年かけて作成していて、過去のどの作品も最高のセレクションをして、独自性と非凡さを追求しているよ。
- あなたはどういった音楽に影響を受けてこられたのですか?
とにかくいろんな音楽が好きだったよ。1番最初に好きになったのはパンクミュージック。当時ビートルズが流行っていたけど、俺には普通過ぎて好きになれなかったな(笑)。あと、KraftwerkやPink Floydといったエレクトロニックミュージックも聞けたしね。新しい音楽を自分で探して聞くのが好きだったよ。
- EPにもこのミックスの収録曲がリリースされていますが、Daniel Bell「Blip」と最後のCapracara「Flashback '86 (DJ Hell's 2013 Rework) 」がハイライトでした。この2曲に関して何かエピソードはありますか?
昔、Danielに初期の曲についての話を聞いた時、未発表のミックスをくれると言ってくれたんだ。つまり彼は20年前にミニマルハウスサウンドを完成させていたんだよ。本物の革新家だ。「Flashback '86 (DJ Hell's 2013 Rework) 」は新しいサウンドでありながら、同時に90年代のデトロイトに引き戻してくれる最高のトラックだと思う。
- EPに収録されていなくて残念だったのが、The Horrorist「The Horrorist / Wet & Shiny (DJ Hell's 2013 Rework) 」でした。すごく好きな曲だったので。この曲に関しても何かエピソードがあれば教えてください。
ありがとう。今でもよく覚えているけどこの曲は90年代はじめにリリースされて、アメリカやヨーロッパの大きいフェスティバルでプレイされていたんだけど今では過去の曲になってしまったと思うんだ。だからもう1度手を加えてクラブシーンに蘇らせようと決めた。今年中に〈GIGOLO〉からリリースする予定だよ。
- 「WIRE13」で共演するWESTBAMの「U NEED DRUG」リミックスされていますね。初めて曲を聴いた時、どう思われましたか?私は、ダンスミュージックではなかったので驚き、本人にインタビューで、これはメジャーミュージックへの挑戦なのですか?と聞きました。また彼とはどういった仲でしょうか?
俺にとって2013年で最も優れた曲の1つだよ。そうなんだ、これはDJを意識して作られてないんだ。これはアルバム全体を通して違ったアイデアとコンセプトで作られているからなんだよ。WESTBAMと俺は、すでに20年以上のとても良い友達なんだ。彼が人生を通して手がけた仕事はとても尊敬しているよ。俺の手がけたリミックス曲は今Beatportで手に入るよ。オリジナルのサウンドをキープしながらそれをクラブで再現するようにしているよ。
- David Bowieの大ファンだよ。すごい影響を受けたんだ。彼の音楽とファッションとアートワークにね! -
- 〈Tresor〉とは、今までに仕事をされたことはありましたか?また〈Tresor〉は、名門レーベルとして認知されていますが、どういった印象をお持ちですか?
〈Tresor〉はテクノ史上最も重要なレーベルの1だよ。レーベルの人々は、80後半から90年代初期のベルリンで現状を打破したんだ。そしてデトロイトミュージックとの繋がりができたんだよ。彼らはデトロイト、シカゴ、ニューヨークといったアメリカ中のDJたちの作品を買って、のちに〈Tresor〉から彼らの曲をリリースしたんだ。俺自身も1992年ごろ“Tresor”に何回も出演して〈Tresor Recored〉のコンピレーションにも参加したよ。
- 毎回アートワークにも惹かれますが、今作は何かストーリーがあるのでしょうか?
これは俺の自宅なんだ。山の近くにあって、ここでも仕事しているよ。David Bowieのポスターが飾られているショットがあるんだけど、これはベルリンでフォトグラファーのMick Rockからネガフィルムを買ったんだ。それでポスターを作ったんだよ、Mick Rockのサインも入れてね。
- David Bowieが、お好きなんですか?
大ファンだよ。すごい影響を受けたんだ。彼の音楽とファッションとアートワークにね!
- あなたは、アートワークやご自身のビジュアルを非常に大切にされているように思いますが、いかがですか?
ありがとう、グラフィックやグラフィックアーティストには良い目を持っていることを願うよ。新しい〈GIGOLO〉のコンピレーションには日本の有名なグラフィックデザイナーを起用していて、もうすぐ完成する予定だよ。
- 今日はMartin Margielaの服ですが、Martin Margielaはお好きなんですか?
Martin Margielaは、過去20年の間で最も革新的なファッションデザイナーだと思う。彼のコンセプトと服は、俺の世界に大きな影響を与えたんだ。自分の為に作られたのかと感じたぐらいに。そして彼が会社を去った後、ブランドはその力と魔力を失ったんだ。
- ちなみにどういった趣味をお持ちですか?
いろんなスポーツをするよ。テニスやサイクリング、スキーもよくするよ。
- あなたといえばDJ/プロデューサーの他に、〈INTERNATIONAL DEEJAY GIGOLOS〉のオーナーという側面がありますが、レーベルを作った経緯を教えてください。
1997年にレーベルを立ち上げたんだけど、理由としては当時音楽が大きく変わりつつあるのを感じていて、自分がやりたいように動けるレーベルを持ちたいと思ったからだよ。
- 今、カタログは何番まで出ていますか?300番までですか?
我々は300番まで到達したよ、その最後の番号にはDJ Hell - feat Klaus Nomi - 80年代にNYで亡くなったオペラ歌手をフィーチャーしたんだ。もうすぐ全てのカタログをデジタル化するよ。過去の全作品をそうできたらっていつも思ってたんだ。そうすればこの先15年は全ての曲を買う事が可能になるよ。
- レーベルオーナーとして、どういったアーティストの曲を出したいと思われますか?
今才能のある若いプロデューサーがたくさんいるんだ。彼らは無名だけど音楽の才能があって、もっと有名にしてあげたいと思ってる。注目してほしいのは、これから〈GIGOLOS〉から出る2枚組のCD「Gigolo CD 14」だよ。
- レーベルを運営する上で何が1番大変でしょうか?
音楽関係の会社を運営する事については、以前とはもう同じじゃないよ。世界中で経済危機があったから産業は過去2~3年でほとんどどん底に行ったんだ。だから音楽を売ったり、レーベルを運営するのは以前とは再び同じ状況にはならないよ。本当に良い音楽は今でも売れるし、才能あるアーティストは常に自身の道を切り開いていくものだけどね。
- 小さいクラブはDJを始めた頃を思い出させてくれる大切な場所だよ。ナイトクラブはDJにとって原点に還る場所だね。 -
- 「WIRE」でプレイされてみていかがでしたか?あなたのプレイを聞いていたら、選曲がロマンティックでヨーロッパの街並みを想像してしまいました。
どうもありがとう。あの日かけた音楽には俺自身も心を打たれたんだ。だからこそオーディエンスの心にも深く響いたんじゃないかな。
- プレイ中レコードをオーディエンスに見せていましたが、プレイは全てレコードだったのでしょうか?
俺はまだレコードとCDRでプレイしてるよ。新しいデジタルシステムを近々試してみるよ。
- 日本に滞在中は何をされましたか?「WIRE」中、もしくは滞在中で思い出に残ったエピソードはありますか?
前回の来日ではディズニーランドに行ったよ。滞在中は現代美術館での展示を常にチェックしてる。ホテルのプールとサウナはいつも行ってて、東京の友達とは常に美食を探求しているんだ。もちろん、気に入ってるデザイナーの店、例えばRick OwensやCOSMIC WONDERのショップにも行ったよ。
-日本では大箱でのギグがほとんどですが、100人~200人くらいの規模のパーティーでDJすることはありますか?大箱ではできない、エクスクルーシヴなDJを1度見てみたいです。
小規模でのプレイもするよ。小さいクラブはDJを始めた頃を思い出させてくれる大切な場所だよ。ナイトクラブはDJにとって原点に還る場所だね。
- 今度、日本に来日する予定はありますか?
今年の12月にファッションショーのDJで来日するかもしれない。
- では最後に、これからのプランを教えてください。
もうすぐテクノのアルバムを制作する予定だよ。