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TINY DUCKS

 
- あまりBPMに縛られない僕らなりのEDMと表現しています。-

 
- アルバムを聴いてまず思ったのが、フロアでも栄えなおかつ曲としても聴けるトラック群で、絶妙なバランスだなと思いました。美しい部分と歪ませた部分が見事に共存しているというか。それがTINY DUCKSの個性なのかなと思ったのですが、お二人はTINY DUCKSの音をどのような音と捉えていますか?

TINY DUCKS:そのバランス感を良く捉えて頂きありがとうございます。やはり僕らは立場は違う(オーガナイザー, DJ, クリエーター)といってもクラブで育ってきたので、フロアで全く使えない曲を作るつもりはありません。ただ現状の日本のシーンを考えると普段クラブに遊びにくる人、音楽を楽しむリスナーの人、そしてDJをしている人とでは、かなりの差があると感じています。そこを埋める為には何が必要なのか?を常に考えているので、それが仰って頂いた個性に繋がっていると思います。

  - 個人的に好きだったのが1曲目「At The Beginning」や5曲目「Hold On」、15曲目「Sword Of the Far East – 戦場の花(Ryoji Takahashi Remix)」です。ダウンテンポのように聴こえながら自然と心は弾む、そんな曲でした。アルバムはバラエティー豊かな楽曲群でしたし、このアルバムは、どのようなコンセプトの下、作られたのでしょうか?

RYOJI TAKAHASHI:コンセプトは広義の意味でのEDM(Electronic Dance Music)です。そして歌物を多く作る事を目標としました。僕らがTINY DUCKSを始めた3年前にすでに世界ではEDMが流行っていて、エレクトロハウスやダブステップ, ドラムンベース, コンプレクストロ.,プログレッシブハウス、そして世界的に下火だったトランスもが再度人気を集めていました。その時に僕らは「EDM!!なんて素敵な言葉なんだ!カッコいい音なら全部EDMでいい、ジャンルとかどうでもいいでしょ!」って盛り上がっていました。そこから1年半、都内のクラブで様々なDJたちのフロントアクト的にギグをやらせて頂きました。

その後、僕のわがままで半年ほどフィリピンに行かせてもらったのですが、帰ってきてシーンの変わり方にビックリしたんです。前はカッコいい曲をDJが使えば知らない曲だとしても盛り上がってくれていたお客さんが、知らない曲にはあまり反応せず、有名曲がかかると爆発して騒ぐような感じにです。もちろん世界的にもそういう流れはあるのですが。

その時にアルバムを作ろうと思っていた僕らは「エレクトロニックで踊れる楽曲ならなんでもEDMでしょ?」ってコンセプトを決めました。そしてもっと一般の人にも「こんな音楽ありますよ!」ってお勧めしたいので歌物を多く作りたいと思ったんです。その為、Introの「At The Beginning」や「Hold On」などのダブステップ系や「The Gravity On Tokyo」などの4つ打ち系を入れ、あまりBPMに縛られない僕らなりのEDMと表現しています。

 

 

  - 「Stay With Me」は、このアルバムでもリードが使われていますね。このアルバムでもリードトラックの1つだと思います。この曲はお二人の中でどういった曲でしょうか?

RYOJI TAKAHASHI:この楽曲に関してはまず寺田一郎(Ichiro Terada)氏に触れさせてください。

寺田氏はSMAPさんの「胸騒ぎをたのむよ」をはじめ、ARASHI(嵐)さん、篠原涼子さん、工藤静香さん、他多数のアーティストの方に楽曲提供をおこなって来た大先輩です。縁あって一緒に飲ませて頂いた時に意気投合し、現在も公私ともに仲良くさせて頂いてます。その“飲んだ時”がTINY DUCKSを結成したすぐ後で、すぐに僕らのギグに遊びに来てくれました。そこでYOSHIMASAにも紹介して、僕らの関係がスタートしました。

アルバムを制作するに当たって、前にも書きましたが「歌物を多く入れたい」と考えていた僕らは、日本人なりの独特な哀愁メロディにはすごく特徴があると考えました。そこで日本人としてはトップクラスと言っても過言ではない寺田氏にプロデュースチームに入って頂くように依頼しました。っと、こんなカッコいいこと言ってますが、飲みの席で「一緒にTINY DUCKSのアルバム作ろうよ〜〜」とダダッ子みたいにお願いしただけですが(笑)。

そしてTINY DUCKSの為に一緒に制作に入り、まず何曲かラフを作りました。その中の1曲が「STAY WITH ME」です。実は当初ボーカルは自分たちで歌っていました。ほぼ完成という時に僕らの出版社にあたるSMP(SONY MUSIC PUBLISHING)の方に聴いてもらった時に、「ボーカルが弱くないですか??」とご指摘頂き、リリースのタイミングも決まっていましたが急遽ボーカルを差し替える事となりました。
そこからゲストボーカルとして参加してもらった竹本健一氏を紹介してもらい、レコーディングしてと、ドタバタながらもいろいろな方に助けて頂いて完成した想い入れの強い楽曲です。お陰さまでしっとりと哀愁のある日本人らしいボーカルEDMになったと考えてます。

 
- TINY DUCKSのサウンドを聴いていると、どこか懐かしい感じがします。特に「Meaningless」、「Please Don't Go」、「Can't Forgive You But I Can't Breath Without You」などは、ポップスの要素とトランス的な要素が合わさっているように思ったからです。意図的にそのようにした楽曲はありますか?

RYOJI TAKAHASHI:いろいろな所に気付いて頂いて本当にありがとうございます。トランス的な要素としてはRYOJI TAKAHASHI名義にてトランスを作っている事もあり、トランシーな要素は大好物です。その為、TINYDUCKSの音源の節々にそれが現れていると思います。そしてポップスの要素ですが、“一般の音楽リスナーにこんな音楽ありますよ”とお勧めする意味も込めて、メロディーラインをなるべく口ずさめるように作りました。そしてそれがBeatmaniaシリーズのDaisukeやavexさんで活躍した藤原かほり(Kahori Fujiwara)さんを「Meaningless」で起用した理由でもあります。
 
- 今回収録されている楽曲は、ほとんどがRADIO EDITですが、このアルバム自体はDJツールというわけではなく、リスニングトラックだという意図でしょうか?

TINY DUCKS:このCD不況の中でCDを買って聴いて下さる人はきっと音楽好きのリスナーの方だと考えています。その為、クラブではなく通勤の電車、ドライブ中、ランニング中など日常生活にとけ込むように聴いて頂きたいです。
そして、現在のDJはファイルで音源を買うのが一般的になりつつあるので、DJツールとしてExtended VersionはDigital(配信)限定とさせて頂きました。
(iTunesはCDと同日11月19日リリース。beatportは12月17日リリース)

   
-トランスのSuper SawやHooverサウンド、そしてサンプリングを切り刻み、さらに汚したヒップホップやエレクトロの要素、音楽的なピアノリフに美メロのボーカル、過去に関わってきた音を全て混ぜたようなサウンドだったので今のスタイルになるのは必然だったように思います。-

 
- ユニット名がTINY DUCKSで、海外でも活躍できる日本人アーティストを目指しとプロフィールにあったのがユーモラスだなと思いました。ユニットを組んだ経緯や命名した経緯を教えてください。

TINY DUCKS:ユニットを組んだ経緯ですが、数年前にYOSHIMASAのオーガナイズするイベントへRYOJIが出演した事がきっかけで、何か組んでやってみない?という話になりました。そして一緒にトラックを制作し始めました。そして数曲溜まった時にclubasiaさんでYOSHIMASA&RYOJI TAKAHASHI名義でライブセットをやりました。その時のイベント名がDANzoo(踊る動物園を意味する造語)だったんですね。そしてライブセットが盛り上がった事を切っ掛けに「ユニットにしちゃおう!」と結成になりました。

命名の経緯は、その時点の二人組は踊る動物園の中でワイワイ騒いでいるだけの、まだ何者でもない小さい動物でした。ただ将来的にはその動物園を抜け出して、世界へと飛んで行きたいな!と野望をもっていました。まぁアヒルは飛べないって後で気付いたんですが(笑)

そこで二人で話して「小さくてヨチヨチ歩く感じからDUCKで良くない?TINY DUCKSってゴロも何となく良いし!」と名前が決まりました。

  - RYOJI TAKAHASHIさんは、プロデューサー/作家としてのキャリアが豊富で、DJ YOSHIMASAはDJとしてのキャリアが長いように思います。TINY DUCKSとして活動する時のお二人の担当は何になりますか?

TINY DUCKS:ギグの時はYOSHIMASAがDJをして、その上にRYOJIがAbleton Liveを使って音を重ねる感じです。あらかじめ作っているオリジナルやマッシュアップ、リミックスなどにブレイクでドラムを足したり、所々にボイスやSEなどのサンプル、シンセなどを重ねたりしています。
音源制作はRYOJIが担当していますが、DJ,オーガナイザーとして毎日のようにクラブにいるYOSHIMASAが今のTINYDUCKSにはどのような音が必要か、オリジナル、マッシュアップ、リミックスを含めてRYOJIに依頼や指示を出しています。

  - プレスリリースに今までに日本人が作るボーカルトラックが世界中のクラブで使われた事はない。と書かれていましたが、世界で使われない理由は何だと思いますか?

TINY DUCKS:すみません、少し語弊がある書き方でした。もちろんAKさんやTomomi Ukumoriさんなど多数の方のボーカルが世界で使われていると思います。
ただEDM、ダブステップやエレクトロハウス, 昨今のアッパーなハスウのようなジャンルでは僕らの知る限り有名なDJが使ったというのはないと思います。

理由としてはまず日本人は英語が下手だと言う理由が大きいと思います。AKさんやTomomi Ukumoriさんが英語を話せるかどうか知りませんが、僕らが歌を聴いている限りネイティブな人と何ら代わりはありません(僕らが英語が下手だという理由もあるかもしれませんが、、) もちろん日本語で世界的にヒットする可能性もあるかもしれませんが、コンスタントにヒットを出して行くには日本語では難しいでしょう。
そして圧倒的にこの系統のジャンルでボーカルトラックを作っている人が少ないという理由もあると思います。日本人のクリエーターはポップスをすごくうまく作る方々がたくさんいらっしゃいますが、やはりトラック物になると弱く感じます。それを世界中の耳の肥えたDJ達が選ぶか?と言うとやはり厳しいと思います。TINY DUCKSとしても日本人のボーカルを起用する際には、まだまだ英語の問題をクリアできていませんが、1つずつ進んで世界中のクラブやフェスで日本産の楽曲がコンスタントに使われるように努力していきたいです。

  - 今年はULTRA JAPANの開催もあり、EDM元年とも呼ばれています。お二人のサウンドもEDMと呼べると思います。お二人のキャリアを考えると本当に様々な音楽に接してこられていると思いますが、いまやられているエレクトニックサウンドに現在辿りついた理由を教えてください。

TINY DUCKS:4〜5年前から世界的なEDMの流行りをキャッチしてAviciiやZedd, Skrillexと言った若手アーティストの音を聴いた時に、エレクトロニックで踊れて斬新でありながら、ずっとダンスミュージックを聴いて来た人にはどこか懐かしい感じもありました。トランスのSuper SawやHooverサウンド、そしてサンプリングを切り刻み、さらに汚したヒップホップやエレクトロの要素、音楽的なピアノリフに美メロのボーカル、過去に関わってきた音を全て混ぜたようなサウンドだったので今のスタイルになるのは必然だったように思います。

  - EDMブームは確かにありますが、まだまだ日本人のEDMアーティストの数が足りないように感じていいますがいかがでしょうか?このシーン/ブームは今後どこへ向かうと思いますか?発信する側に課せられている課題は何があると思いますか?

RYOJI TAKAHASHI:機材の進歩でマッシュアップやリミックスを作るDJは増えたように思いますが、ただオリジナルを作る、さらにはボーカルトラックのオリジナルを作るとなると圧倒的に少なくなるのではないでしょうか。そしてクラブには行かないクリエーターさんと現場でDJしている方との間にもまだまだ壁があるように感じます。

確かにEDM元年と騒がれてはいますが、フェスでもない限り一般の人がクラブに来て一緒に盛り上がるのはほど遠く感じています。“知ってる曲だけで盛り上がる環境”を変え、どんなEDM/クラブ初心者が来ても「楽しかった」「あの曲カッコ良かったけどなんだろう?」って思えるような環境作りが必要だと思います。
今は世界的に見てもダンスミュージックはポップシーンと同じ列に並び始めています。日本にも素敵なクラブがたくさんあります。ぜひそこから巣立った人が世界の舞台で活躍し、そしてまた日本へ素敵な音楽、ギグを届けられる。そんなサイクルを生み出せるように世界中のDJ達がコゾッて使うような楽曲を生み出すアーティスト/DJが増える事を願っています。

YOSHIMASA:世界中でとんでもない盛り上がりになっているEDMも日本では今年が元年といっていいでしょう。そういった意味では日本ではまだまだ歴史が浅い音楽なので、今は少ないと思いますが、来年あたりには日本人アーティストが増えてくると思いますし、実は知られていないだけで結構いたりします。TINY DUCKSももうすぐ結成して3年ですが、ここにきてやっと少し注目してもらえるようになりましたが、それまでは結構辛い時期もありました。

各クラブでEDMの音楽は当たり前のようにかかっていますが、純粋なEDMのパーティーが多いかというと意外に多くない。まだまだメインはEDM以外の他のコンテンツでサブフロアでEDMをやる形が多いなぁと思います。きっと来年はもっとメインフロアに出てくるDJ、アーティストが出てくる。そうしたら日本人EDMアーティストはもっとたくさん誕生するでしょう。

EDMは日本人に馴染みやすい音楽だと思いますし、来年にはウルトラ級の大きなフェスもさらに増えますし、日本ではまだまだ盛り上がっていくでしょう。DJも増えてパーティーも増えて、僕らがやり始めた頃に比べたらEDMの海外アーティストの来日公演も増え、それが来て当たり前になってきている事はEDMファンには素晴らしい事なんですが、日本人のEDMアーティストにも、もっと注目してほしいですね。もちろんTINY DUCKSもよろしくお願いいたします。
 


  - Release Information -

アーティスト:TINY DUCKS
タイトル:JUST A STORY
発売日:iTunes&CD/11月19日   beatport/12月17日
価格:2,160円(税込)

●トラックリスト
01. At The Beginning -Intro-
02. Millennium Fever feat. Saga Bloom [Radio Edit]
03. Conquer The World [Original Mix]
04. Stay With Me feat. Kenichi Takemoto [Radio Edit]
05. Hold On feat. Michika [Radio Edit]
06. Life Is A Game [Original Mix]
07. Hey [Album Re-mastered]
08. Meaningless feat. Kahori Fujiwara [Radio Edit]
09. The Gravity On Tokyo feat. TTSYa [Radio Edit]
10. Please Don't Go feat. Zai [Radio Edit]
11. Can't Forgive You But I Can't Breath Without You [Radio Edit]
12. Stay With Me feat. Kenichi Takemoto [Ichiro Terada's PianoMix] -Outro-

-Bonus Tracks-
13. Kid Massive & Tiny Ducks [Smash It Sultan + Ned Shepard Edit] (Only CD)
14. Millennium Fever feat. Saga Bloom [Frank Lamboy Remix]
15. Sword Of Far East - 戦場の花 [Ryoji Takahashi Remix]