INTERVIEWS
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Nick Höppner

<Ostgut Ton>の立ち上げ時からマネージャーとして関わり、現在はアーティストとしてテクノ/ハウスのアンダーグラウンドシーンの第一線で活躍するベルリンの重鎮、Nick Höppner。3月にリリースされた彼のデビューアルバム『Folk』を紐解きながら、アーティストとしての彼を形成するまでの歴史、そして彼が永くに渡って見てきたベルリンから現在の音楽シーンに至るまで、さまざまな思いを語ってもらった。

Interview & Text : yanma (clubberia)
Coordination : yuko asanuma
Translation : ultr-vybe, inc.
Photo © Katja Ruge

 

 

 
- 最初は耳障りに聴こえるかもしれませんが、ノイズの中に不屈のメロディーがあり、今聴いても鳥肌が立つものです。 -



 
 - あなたの音楽には一貫して力強さとメロディーの心地良さがあるように思います。<Ostgut Ton>を連想するとハードめの音楽の印象を持ってしまうのですが、本作も力強くてもちょうど良いテンションで聴く事ができました。ご自身の中で、作品作りに対して一貫する共通性や特に拘る部分はありますか?



私はスタジオに、あらかじめ固まったアイデアを持って入ることはありません。アルバムを制作している時に唯一あった目的は、アルバムの最初から最後まで楽しめるリスニング体験をリスナーに提供する事でした。私はダンスミュージック以外の音楽からも多くの影響を受けていて、特にメロディーに強く惹かれます。若い頃はDinosaur Jr.やMy Bloody Valentineの様な音楽を聴いていました。それらの音楽は、最初は耳障りに聴こえるかもしれませんが、ノイズの中に不屈のメロディーがあり、今聴いても鳥肌が立つものです。

 

 

 
 
- 本作は、すべて新曲かと思いますが?本作はどのような作品にしようと考えられましたか?



このアルバムはいくつかのラフなアイデアがあっただけで、コンセプトはありません。先に話した様にアルバムの最初から最後まで通して楽しめる作品にしたかっただけです。最初からこの作品はいくつかのトラックを集めたただの“コレクション”ではなく、“アルバム”にするつもりでした。それを自分の慣れ親しんでいるクラブトラックによって構成し、それをエモーショナルな内容のある、さらにタイムレスな作品にしたいと思いました。

 

 

 
 
- 私は、特に「Mirror Images」と「Relate」が好きでした。低音のループ感と浮遊感のあるメロディーが非常に心地よかったです。『Brush Me Down EP』の雰囲気を今に当て込んだようにも思いました。あなたの中で、本アルバムの中でキーになる曲はあったりしますか?



いいえ、強いて言えばアルバムそのものが「キー」です。全てのトラックは私にとってそれぞれに意味があり、それらが全て等しく重要な作品となりました。私はこの作品でたくさんの事を学びました。本作の制作プロセス全体が、私にとってとても重要な経験でした。

 

 

 
 
- 音楽のキャリアは、どれくらいになりますか?おそらくかなり長そうなのですが。また、音楽的背景も伺えたら嬉しいです。



私の音楽ライターとしての活動を含めると、1990年代の終わりに始まりました。その前から地元で少しDJをやっていましたが、本格的にDJの活動をスタートさせたのは2001年にベルリンに移ってからです。ティーンエイジャーの頃は本当に普通の音楽を聴いていたと思います。U2やThe Cure、Joy Division、The Sisters Of Mercyが好きでした。その後メタルを聴いていた時期もありますが、最も衝撃を受けたのはJoy Divisionです。その後は、Dinosaur Jr.やラップのA Tribe Called Questのアルバム『The Low End Theory』を通過しました。10代の後半以降は、常に幅広い音楽を聴くようになりました。インディー/パンクロック、ラップ、ジャングル、ドラムンベースや、よりアブストラクトなエレクトロニカ、やがてハウスやテクノが好きになりました。80年代や90年代に育った人にはありふれた流れだと思います。

 

 

 
 
- <Ostgut Ton>も今年10周年ですか?ここまでで何か苦労した点やエピソードがあったら教えて下さい。



2008年にレーベルの知名度が一気に広がった後は、所属アーティストへの責任を強く感じる事もありました。たくさんのアーティストを抱えながら常に共通点を持ち、なおかつ民主的にレーベルを運営していく事は簡単ではありません。

 

 

 
 
- 現在のアンダーグラウンドな音楽でのビジネス、特に音源を制作して流通させるビジネスモデルは、今後どうなっていくと思いますか?レーベルというものを発展させていくには、何が必要だと思いますか?



私はもう音楽を販売するレーベルの人間ではなく、今は音楽を作ってプレイするアーティストの側になりました。ですから、この質問への答えは控えさせて下さい。いずれにせよ、この質問には誰も簡単に答えられない様に思います。

 

 

 
 
- 例えば私が10年前までのベルリンが最高だと思っていたとしても、たくさんの今の若い人たちは、今のベルリンが最高だと言うでしょう。 -




 - 世界的にヴァイナルブーム的なことを良く聞きますが、どう体感していますか?実際に売り上げが上がっているのは、ジャズやロックといったジャンルだと聞きますが、それでもエレクトロニックミュージックも同様にブームは起こっているのでしょうか?


私はレコードを買ったりプレイしたりする事を今まで止めた事が無いので、私にはリバイバルはありません。正直に言うと、昨今のレコードというフォーマットに対するハイプには全く興味がありません。私の観点から言うと、むしろ弊害に感じます。

 

 

 
 
- ベルリンの音楽シーンが注目を浴びて暫く時間が経ち、少し落ち着いた印象です。良くも悪くも街の雰囲気や音楽シーンになどに変化は感じますか?



私は物事には全て二面性があると信じているので、いつどの時代を切り取っても、そこには良い点と悪い点があると思います。シーンの「最盛期」とされる時期も、ほとんどの場合が主観的なものです。例えば私が10年前までのベルリンが最高だと思っていたとしても、たくさんの今の若い人たちは、今のベルリンが最高だと言うでしょう。
悪い側面の1つとして、ベルリンのナイトライフが浄化され過ぎてしまったことが挙げられると思いますが、きっと私が知らないところで面白いアンダーグランドシーンが存在していることでしょう。その一方で、良いところはナイトライフが非常に多様でプロフェッショナルに運営されているところです。それに近年のベルリンは本当にコスモポリタンになってきていて、それを私はとても楽しんでいますよ。

 

 

 
 
- 同様に、ベルリンの音楽の時代を経て、その影響を受けた子どもたち(音楽やアーティストの意)が続々とでているように思います。あなたにとってベルリンの音楽シーンが残したものや、ヨーロッパでどのような役割を担ったかなどを教えてください。



確かに、クラブに関して言えば、今でも誰もがベルリンにインスピレーションを求めていると思います。しかし音楽的なところでは、テクノとハウスにおけるベルリンからの影響は常に過大評価されてきたと思っています。よく考えてください、Moritz von OswaldとMark Ernestus以降、本当に多大な影響を与えた人に誰かいますか?

 

 

 
 
- 日本のクラブシーンについて印象があれば教えて下さい。



お客さんの熱心さのレベルが違いますね。皆さんとても誠実で、よく音楽に精通しています。
いつも日本でプレイしている時に感じるのは、一時期の<Ostgut Ton>というハイプのせいではなく、お客さんが実際に私と私がかける音楽に興味を持って聴きに来てくれているという事です。ですから、本当に心からプレイすることを楽しむことが出来ます。

 

 

 
 
- 今後の予定について教えて下さい。



つい最近、<Ostgut Ton>の10周年記念のコンピレーションの為にトラックを提供しました。夏の終わり頃にはアルバムのリミックス作品としてThe Black Madonna、Aardvarck、Liit、そしてHervaのリミックスがリリースされます。



 
- 以上です。ありがとうございました。

 

 


- Tour Information-

5月22日(金)大阪"CIRCUS" (http://www.clubberia.com/ja/events/235293)
5月23日(土)代官山"AIR" (http://www.clubberia.com/ja/events/236285)



- Release Information -

アーティスト:Nick Hoppner
タイトル:Folk
レーベル:Ostgut Ton
発売日:3月29日
価格:CD ¥1,998(税込)、LP ¥2,754(税込)

[トラックリスト]
1. Paws
2. Mirror Images
3. Out Of
4. Rising Overheads
5. Grind Show
6. Come Closer
7. Airway Management
8. Relate
9. No Stealing