INTERVIEWS

Andrew Weatherall

 Tim FairplayとのThe Asphodellsを挟んで、ソロ名義としては2009年の『A POX ON THE PIONEERS』以来の作品となる新作『Convenanza』を2016年の頭にリリースしたAndrew Weatherall。春にはソロ名義の新作をひっさげて、「Rainbow Disco Club 2016」などで来日ツアーをひさびさに行う。

 ここ数年では新作のアルバム・タイトルになっている、南仏の古城フェス「Convenanza」 のオーガナイズをはじめ、300枚限定のアナログ・レーベルBird Scarerや、これまた超限定のアナログ・オンリー会員制レーベルMoine Dubhといったレーベルを運営。さすが、自らの作品に『Stay Down』だとか、「Hope We Never Surface」と「アンダーグランド宣言」じみた名前を付けるような男である(どちらもTwo Loneswordsmenの楽曲タイトルより)。コマーシャリズムに引きずられることなく、独自の美学に貫かれた活動を続けている。まさにUKのDJカルチャーにおけるアンダーグラウンドの良心というか、核心にい続ける、そんな男だ。新作は、やはりここ10年ほどで、ある意味でトレード・マークともなった彼のロックンロールなボーカル・トラックもあれば、1990年代中頃から2000年代前後の彼の作品を思い起こさせるようなダークでメランコリック、そしてダビーな美学に彩られたエレクトロ・トラックが並んでいる。

取材・文:河村祐介

 

 

 
小さな行いを通じて少しでも世界を変えようとした、そういう人々について考えてる



──新作を、あなたが行っているフェス『Convenanza』と同名のタイトルにしたのはなぜでしょうか?

影響はしているかもしれないけど、タイトルに関して深くは考えていなくて。俺自身には、わからないな。俺は計画してアルバムを作るわけではなくて、ただ音楽を作りたい時に作っているだけだから。でもだからこそ、自分がやることすべてが作る音楽に反映されているんだとは思う。無意識にフェスがインスピレーションになっている可能性はあるね。アルバムを『CONVENANZA』というタイトルにしたのは、あの言葉が儀式と超越を意味するから。宗教的でない人々の儀式と超越、それがナイト・クラブというものだからさ。


──アルバム全体のコンセプトはなにかありましたか?

特になかったよ。ただ考えてみれば、アルバムに収録された歌は…非常に暗喩に富んだ、ある種の“ストーリー•テリング”な歌の数々なわけだけど、あれは俺の個人的な観点、世界に対する俺の考え方や世界に対して自分の感じる思いを描いたものなんだ。たとえば「Kicking The River」という曲はテクノロジーに対する自分の考え方について歌ったものだし、「The Confidence Man」は『白鯨』を書いたハーマン•メルヴィルの小説、「The Confidence-Man: His Masquerade」(※1857年:日本題「詐欺師」)にインスパイアされたものでね。その小説には川を渡るボートに乗り合わせた賭博師や詐欺師だのが登場するんだけど、そこから俺のなかに「ああ、宗教も一種のペテンだよな」って思いが浮かんできて。たとえばテレビで大衆伝道師(※テレビ他のマス•メディアを通じて説教を行うTelevangelistsら)なんかを見れば、あいつらみたいな連中は基本的に「Con-man」(詐欺師)なわけじゃない? 誰の人生にも、いくらかの「騙し」は含まれているものだろう、と。要するに誰もがなんらかのフィクションを生きている。


──(笑)なるほど。

で、「自分のフィクション」を抜け目なくうまくやりおおせる人間も、もっと大胆にそれをやって他人から金を巻き上げたり、あるいはエモーションの面で誰かを支配するためにそういうことをやってる人間もいる。一方で、「自分のフィクション」がうまく演じきれない人間もいる。

えっとなにを言おうとしてたんだっけ…… そうだ、例えば「The Last Walk」というトラックには、あそこにはふたりのドイツ語作家、ハンス•ファラーダ(Hans Fallada:ドイツ人作家)とロベルト•ヴァルザー(Robert Walser:スイス人のドイツ語作家)の名前が登場するけれども、あの曲は「小さな行い」についての歌でね。例えば、ハンス•ファラーダの書いた小説「Alone In Berlin」(※1947年:ごく 普通のドイツ人夫妻が手紙他でナチスに対する草の根の反対活動を行い、逮捕•処刑されるストーリー。実話に想を得ている)も、「ある男がたったひとりでナチ党に挑む」という話だ。「The Last Walk」も、そういった小さなジェスチャー/些細な行為について歌ったものなんだよ。

もちろん、そういう行為の9割は失敗に終わるものだよ。ただ、少なくとも彼らは、たとえ小規模なレベルであっても──それは人類に及ぼす影響でも、あるいはその人間と社会や他者との繫がり程度の話でもいいんだけど──なにかを変えようとトライした人たちなんだ。小さな行いを通じて少しでも世界を変えようとした、そういう人々について考えてる。


──つまり本作はフィクションやハイプではなく、地道に世の中を変えようとしている人の側に立つというようなことですね。そして前作からソロ作としては7年近い月日が流れています。ジ・アスフォデルスには エレクトロ・ディスコというのがひとつ明確にあると思うのですが、ソロの楽曲を作るときのコンセプトのようなものはありますか?

ああ、俺の頭の中でははっきりしたソロ/それ以外のさまざまな作品っていう違いはあるんだけど、それがなにかは自分でもわからない。自分にはある「違い」を感じられる、というか…よりこう…「ソロプロジェクト」的な感覚があるのかもしれない。でも、本能的なところで判断してるって感じだけど。そうは言ったって、俺の作る音楽はすべて、俺からすればパーソナルなんだよ。ただ、なかにはより個人的な繫がりを感じるものもあれば、それに較べてパーソナルな感覚が薄いものもあり、ということで。

 

 

 
誰もオリジナルにはなれないからね。そんなの不可能な話だし、「自分には唯一無二のオリジナルな個性がある」なんて考えるのは無理。




──ではサウンド的な部分で質問を。以前の『A Pox On The Pioneers』よりも、エレクトロニックな要素が増えていますよね。そして感触とはロックンロールよりかは、23skidooのようなファンクがその根底にあって、さらにいえばセイバーズ・オブ・パラダイス後期のようなダブの要素が強いように見受けられます。そのあたりは意図的なにかはありましたか?

ああ、うんうん! 君の言っていることはわかるよ。納得。それに、ほかに今まで指摘されたのは……Fad Gadget、Big Audio Dynamite、Fun Boy Three、そしてThe Clashあたりかな。そこらへんは俺のルーツみたいなものなわけで、ほかの人々のやったことを俺なりに解釈したものだ、と言えるよ。ただ、決してそれを意識的にやったわけじゃないし、ほかの誰かみたいなサウンドを狙ってやってみよう、みたいな決定のもとに生まれたものじゃないっていう。とにかくナチュラルにこういう音になったってことだし、とにかく自分は彼らみたいな人たちの音楽を聴いてきた、ダブやロカビリーなんかをたっぷり聴きながら俺は育ったんだしね。要するに、無地のキャンバスを前にして、「よし、ここにはThe Clashを少し持ってきて、ここにはFun Boy Threeを少々…」なんて具合に、考えながらこうなったわけじゃないっていう。だからさっきも話したように、聴き手の受け取り方次第ってこと。うん、だよな。だから、ある聴き手は霧の中から特定の影響を聴き取るし、ほかのリスナーにはまた別の何かが聴こえる。俺としてはそれは大いに結構だね。というのも音楽ジャーナリストの誰もが同じ影響を指摘してきたら、それはそれで俺には逆に不安だろうしね。俺の作品のレビューと読むと毎回少なくとも5つか6つの違う名前が出てくるんだよね。で、それは俺としては良いことだと思っていて。それだけ自分の受けた影響は潜在的なもので、俺の内面にもっと深くしみ込んだものだってことなんだと思うし。自分はなにかのパスティーシュをやろうとしているわけじゃない、そう言いたいんだよ。


──ええ、わかります。

だから、さっき名前の出てきたアーティスト、彼らを模倣しようとしたものではないし、意図的にポスト•パンク的な響きの作品にしようとか、あるいは80年代っぽさを狙おうだとか、なにであれ、意図してやっているわけじゃないんだ。俺はコピーを作ろうとはしていない。たとえばThe Crampsも、好きなロカビリーやサイケデリック音楽を自分たちなりにやろうとして、結果的に彼ら独自のものを生んだ、オリジナルな存在になったわけで。


──(笑)そうですよね。

それとか、Billy Childishがやっているのもそれと同じことだよ。彼自身はそれを「Dustbin Mods(=ゴミ箱モッズ。Billy Childishの率いたThe Buff Medwaysの楽曲に「Dustbin Mod」がある)」と称しているんだけど、彼は彼なりにR&BやLink Wrayっぽいものを目指してやっているっていう。そうして独自の音楽を生み出したわけだし……もっとも完全な意味での「オリジナル」ではないけどね。彼のやっているのは非常に古いスタイルの音楽なわけで。ただ、彼はあのちょっとよじれた彼独特の感覚で「好きななにかの近似値」をやっているし、それゆえに彼はデフォルトでオリジナルな存在になっている、というか。なにかを始める際の開始地点という意味で、オリジナリティは過大評価されていると俺は思うんだ。だって、誰もオリジナルにはなれないからね。そんなの不可能な話だし、「自分には唯一無二のオリジナルな個性がある」なんて考えるのは無理。

 

 

 
真面目になるのも必要だけど、音楽を作っているわけで、ガンが見つかったわけじゃない。作業に笑いは大切なんだ。




──今回共同制作にNina Walshが関わっていますが、彼女との再会、そして本作を共同に制作するに至った経緯を教えてください。

彼女は素晴らしいミュージシャンだし、素晴らしいエンジニアでもある。だから一緒に何かを作りたいと思ったんだ。彼女とのセッションも流れで一緒に音楽を作ることになった。最初は2、3曲から始まって、1年経ったらアルバムにするのに充分なトラックが揃っていたんだ。


──彼女はあなたにとってどんなアーティストですか?

彼女はいろいろと試すのが好きだし、スタジオで楽しんで作業をするのが好きなアーティストだね。俺も彼女も当然ちゃんと作業はするんだが、あまり真面目になりすぎないようにしているんだ。スタジオでは笑い声が絶えなかったし、ダークなトラックを作っている時でさえも楽しかった。常にお互いを笑わせ合うのが俺たちで、それは作業においてとても重要なことなんだよ。真面目になるのも必要だけど、音楽を作っているわけで、ガンが見つかったわけじゃない。作業に笑いは大切なんだ。


──今回いくつかの曲(「Frankfurt Advice」、「We Count The Stars」など)で、印象的なトランペットが使われていますが、なにかアイディアの起点になることがあったんでしょうか?

いや、あれはただ、俺の友人のChris Cornettoというアーティストに吹いてもらったもの…(苦笑)。誰が参加するか云々は自分がどのスタジオに詰めているか、その場に誰がいるか、それ次第だっていう。たとえば今回ギターとベースで参加してくれたFranck Alba、彼はPiano Magicのメンバーだけど、彼はNinaのボーイフレンドだから参加してくれたし…あのトランペット奏者に関しては、彼は俺たちの友だちでね。たまたまスタジオに遊びに来たんだけど、ふと「次に顔を出す時はトランペットを持ってきてよ」と声をかけたっていう。そういった偶然なんだよ。


──それがなにであれ、手元にあるもの/身近なものを使ってアートをクリエイトする、という。

そうそう、そういうこと!だから、仮に俺が最新テクノロジーのたくさん揃った部屋に入れられても、それはそれでオーケイ、結構な話なんだよ。ただ、俺がテープ•レコーダーと棒っきれ、木の枝しか転がっていない部屋に入れられたとしても、俺はやっぱりそこからなにかを作り出すだろうね(笑)。だから、機材や技術がどれだけ高度かどうかは関係ない。とにかくどうにかして音楽を作ろうとするだろ。トランペットもほかと同様、大いなる「ゲーム•プラン」みたいなものはなかったし、でかいキャンバスを前にした俺たちが、Chrisに向かって「さあ、Chris、やってみて! 絵の具を投げつけてくれ!」とけしかけたっていう(笑)。


──来日ツアーが目前ですが、日本のファンにひとこと。

いつも暖かいサポートをありがとう! 日本のファンは、俺以上に俺のことを理解してくれている。27年経ったいまでもファンでいてくれて、本当に嬉しいよ。もっと頻繁に日本に行けたらいいんだけど。アルバムを楽しんでくれることを祈っているよ。ま、気に入らなくても俺は気にしないけど(笑)。というのはウソで、本当は気にしている (笑)。会えるのを楽しみにしている。

 

 

- Release information -

タイトル:Convenanza
アーティスト:Andrew Weatherall
リリース:2016年1月22日(水)
レーベル:Rotters Golf Club/Beat Records
価格:2,200円(税抜)

[Track List]
1. Introduction
2. Frankfurt Advice
3. Confidence Man
4. The Last Walk
5. Kicking The River
6. Disappear
7. We Count The Stars
8. Thirteenth Night
9. Ghosts Again
10. All That's Left *Bonus Track for Japan
11. Youth Ozone Machine *Bonus Track for Japan

■Official Site
http://www.beatink.com/Labels/RGC/Andrew-Weatherall/BRC-494/

- ANDREW WEATHERALL "CONVENANZA" JAPAN TOUR -

【RAINBOW DISCO CLUB 2016】
開催日:2016年4月29日(金)9時開場/12時開演 〜 5月1日(日)19時終演(2泊3日)
会場:東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ
出演:Andrew Weatherall, and more(約20組予定)
料金:一般発売チケット(15,000円)、当日券(17,000円)
■clubberia page
<Day 1>
http://www.clubberia.com/ja/events/248742-RAINBOW-DISCO-CLUB-2016/
<Day 2>
http://www.clubberia.com/ja/events/248743-RAINBOW-DISCO-CLUB-2016/
<Day 3>
http://www.clubberia.com/ja/events/248744-RAINBOW-DISCO-CLUB-2016/


【東京公演】
開催日:2016年4月30日(土)
会場:WOMB
時間:OPEN 23:00
料金:前売3,000円、当日3,500円
■clubberia page
http://www.clubberia.com/ja/events/248400-ANDREW-WEATHERALL-CONVENANZA-JAPAN-TOUR/

【大阪公演】
開催日:2016年5月1日(日)
会場:CCO クリエイティブセンター大阪
時間:OPEN 14:00/CLOSE 22:00
料金:前売3,500円/当日4,000円、GROUP TICKET(4枚組)12,000円 

■clubberia page
http://www.clubberia.com/ja/events/248401-ANDREW-WEATHERALL-CONVENANZA-JAPAN-TOUR/
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