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サイケデリックテクノレーベルBoshke Beats。オーナーのAlex Tolsteyが語る

数々のサイケデリックテクノをリリースする老舗レーベルBoshke Beats。The Delta、Extrawelt、X-Dream、Midimilizなどが所属するシーンの人気レーベルだ。そのオーナーを務めるのがAlex Tolstey。過去にThe Labyrinthにも出演しているほか、BoomやTribal Gatheringといったフェスティバルとも深い関係をもつ彼。12月8日から大阪、東京、長野でギグを行うために来日。さらには、日本のレーベルLiquid Drop Grooveからコンパイルアルバムをリリースと、聞きたかったことをまとめて聞くにはいい機会が訪れた。
 
 
 
 
「当時、サイケデリックテクノを扱うレーベルは皆無だった。」


——レーベルBoshke Beatsを始めた経緯から教えてください。
 
サイケデリックテクノを広めるため、グラフィックデザイナーをしているInga Burinaと自分とで2001年に立ち上げたんだ。レーベルが誕生したその背景には、非合法レイヴやヒップホップ、ギャングスターまでのすべてのストリートカルチャーが影響している。当時は、テクノとトランスが融合してドラマティックで映画のような展開をする楽曲を提案するレーベルは皆無だったよ。だから、そのスタイルに特化するレーベルを自分たちで始めたわけだよ。レーベルを始める前から、自分たちの中でサイケデリックテクノと呼んでいた。それ以外にどうジャンル分けしたらいいのかわからなかったしね。サウンドは新しかったし、フロアでのフィードバックもすごく良かった。

——Boshke Beatsのコンセプトはありますか?
 
クオリティーの高いダンスミュージックをアウトプットする、これに尽きるね。才能あふれるアーティストとプロデューサーが出会い、ビジョンを形にしているんだ。さらに言えば、映画のようなドラマティックな展開を持つテクノ。そしてテクノに近いヒプノティックなトランスを軸にした音を届けていくこと。この土台には、レイヴへの愛や、旅をすること、異なる文化を融合させることなど、いろんな想いが含まれているよ。
 
——看板アーティストであるMidimilizやSpirallianzにX-Dreamとの出会いを教えて下さい。
 
モントリオールのパーティーでMarco SchmeddingとTim Wandelburgに出会った後に、別のパーティーでArneにWayanを紹介して意気投合しMidimilizが生まれた。X-Dreamは、彼らがアルバム『Irritant』をレコーディングしていた時に、スタジオを訪ねてからの付き合いかな。
 
2000年当時、ハンブルグ近郊の街エルムスホルンにArne、Wayan、Marco、ほかにもPlanet BENとMarcusとJanが集まっていた。そこで生まれたものは、本当に真似をすることは不可能なサウンドだと今でも思っているし、これからも同じような物は生まれてこないだろう。彼らが集合して起きた音のケミストリーは、今もなお、唯一無二のスタイルだよ。
 
これらの出会いをきっかけに、Midimilizの2枚目のアルバムは生まれ、自分はX-Dreamのディレクター兼マネージャーとして今も携われているのは光栄なことだよ。
 
——今、Boshke Beatsに所属するアーティストを教えてもらえますか?
 
X-DreamにThe Delta。ポーランド人アーティストのJurek Przezdziecki(別名義はBigwigs、Tromesa、Epi Centrum)。アメリカ人アーティストのAdam Jay。PPP ProjectやOn3名義で知っている人も多いと思うけどイスラエル人アーティストSam Waller。そしてYUTAが主宰するテクノレーベルLiquid Drop Grooveからリリースしたウクライナ人アーティストのHimmelkompass。メキシコ人アーティストのAnyer Quantum。ロシア人アーティストですでに2006年に日本でアルバムをリリースしているFuzzion。スウェーデンのPallida。スイス人アーティストのWicked Wilmaなど。レーベルを一緒に運営しているIngaはグラフィックなどデザインを主に、音楽と同等にビジュアル面でのディレクターを担ってくれているよ。
 
MidimilizはExtraweltとしてアクティブに活動していて、今までに3枚のアルバムをリリースしている。Sven VathのCocoonとも契約し、週3回ペースで各国でプレイを続けている彼らを誇りに思っているよ。
 
——Boshke Beatsのヨーロッパ内における活動についても教えてください。
 
楽曲のリリース、パーティーやフェスティバルでプレイ、これはヨーロッパのみならず世界中でやっている。自分自身はダンスミュージック以外にも、ロックからヒップホップまで、ありとあらゆるジャンルのプロデュースをしているから絶え間なく忙しいよ(笑)。このインタビューを読んでもらう頃にはLiquid Drop Grooveとのコンパイルアルバムも情報解禁になっていると思う。そのアルバムはBoshke Beatsのテイストを感じてもらうことができる、そう確信しているんだ。




「シーンの始まりに貢献したアーティストたちと、もう一度最高の音楽を作りたい。」

——あなたの名義Acid Blackについて教えてください。ネーミングの由来やコンセプトなど。またあなた自身についても。

 
16歳の時、住んでいたイスラエルでDJを始めたんだ。このシーンの多くの人がたどる道と同じように、Blue RoomやTIPやDragon Flyなどのコンピレーション、Juno ReactorやEtnicaにMan with No nameとAstral Projectionなど、シーンの先駆けといわれるアーティストたちの音を聞き、感銘を受けたのを覚えているよ。1999年、サイケデリックトランスもプレイするようになったけど、リリースされる楽曲がどれもこれも同じようなテイストになってきて、つまらないと感じていたんだ。それで、2000年にテクノに夢中になり始めたんだ。Sven VathやRichie Hawtinにインスピレーションを感じてのめりこんでいったよ。同時に、サイケデリックトランスに対しては冷めてしまって、まったくプレイしなくなった。
 
——そうなんですね。
 
サイケデリックトランスの素晴らしさに再び気づくのには時間がかったよ。そのきっかけには、X-Dreamのリミックスアルバムがあるんだ。もともと2006年にTIPと、このアルバムを作るプロジェクトが始まりかけていたけど、問題が起きてストップしたんだ。復活したのは、2014年。Man With No Name、Tsuyoshi Suzuki、LOUD、Hallucinogen、Atmos、Ollie Wisdom、GMS、James Monro、Eat Static、Blue Planet Corporation、ManMadeManといった名だたるアーティストたちとリミックスアルバムの制作に取りかかった。この時だよ、サイケデリックトランスの素晴らしさを理解し直し、DJとして再びサイケデリックトランスをプレイしようと思ったんだ。そしてAcid Blackと名付けたんだ。
 
Acid Blackのコンセプトは、昔のパーティーのバイブレーションや楽曲クオリティーにリスペクトし、新しい形で今に伝えていくこと。良き時代の感覚を残しながら、新しいものを生み出していくってことだね。国境や人種を超えて愛されているサイケデリックトランス、その素晴らしさを伝え続けていくことは重要だと考えている。そして、そのシーンの始まりに貢献したアーティストたちと、もう一度最高の音楽を作りたいんだ。



——Boshke BeatsやAlex Tolsteyとして、テクノシーンにどのように切り込んでいきますか?
 
自分自身はやっぱりトランスの人間なんだなって思ってる。テクノシーンはより商業的だし、いろいろな部分で狭いと感じることもある。自分は、テクノもトランスも両方聞くしプレイもする。両者が混ざり合ってより良いシーンになっていったらとは思っているけど、難しいかもしれないね。質問からそれてしまうけど自分は、レイヴカルチャーにもっと力を注ぎたいね。


——ヨーロッパのトランスフェスティバルをあなたはどう捉えていますか? BoomやTribal Gatheringと深い繋がりがあると思いますが…。
 
まったくの別物だけど、自分が好きな2大フェスティバルだよ。Boomは20年前に始まって、今も進化し続けている。そして、ヨーロッパのフェスティバルの見本となっていると思う。フェスティバルをライフスタイルとして捉えている点において、多大な影響を与えているんだ。地球・社会・環境を考え、循環社会、自然環境保全もコンセプトとして打ち出し、毎回違う内容で20年続けているんだ。本当にすごいよ。参加者数もこの20年間ずっと増え続けているしね。


BOOM festival 2012出演時の映像


——初来日はLabyrinthだそうですね?
 
そう、2001年。今ほど大きくはなくて、その時はJames MonroやEmok、そしてSon KiteにShiva Chandraがプレイをしていた。あと、大阪のRINGでプレイしたな。日本のシーン、そしてパーティーのクラウドは本当にベストだよ。愛しているよ!
 
——ありがとうございます。その日本のレーベルLiquid Drop Grooveからもコンピレーションがリリースされますね。
 
MATSURIのYUTAのテクノレーベルで、彼のコンセプトやビジョンに共感している。12月にリリースされるこのコンピレーションアルバムには、サイケデリックトランスを聞いているリスナーなら知っているアーティストも多く含まれている。Extrawelt、4D(DarshanとJames Monroのプロジェクト)、LoudのEitan、Sam Wallerなどトランスシーンのアーティストに、HimmelkompassやJurek Pfrzezdziecki、Adam Jayといったテクノシーンのニューカマーたちの楽曲がブレンドされているアルバムだよ。
 
——大阪、東京、長野を回るツアーも控えていますね。
 
最近絆が深まったYUTAや、旧友であるDJ Tezとブースに立てることに興奮しているよ。それにX-DreamやAce Venturaも出るよ。世界トップクラスのクラブであるageHaでプレイができることは、アーティスト/DJとして本当に光栄なことだよ。
 
——最後に今後の予定や伝え忘れたことはありませんか?
 
X-Dreamのリミックスアルバムは本当に素晴らしい仕上がりで、サイケデリックトランスを昔から聞いているダンサーにも、そうでない次世代にも聞いてほしいと心から願っているよ。90年代にイギリスで生まれたレーベルはいくつかあるけど、テクノ寄りのサイケデリックトランスをリリースし、ダンサーを虜にしていたレーベルFlying Rhinoからリリースしたんだ。ShpongleやGMS、Dickster、Mad Tribe、Man Made Man、Loud、Atmos、Eat Staticなど今でもサイケデリックトランスシーンのトップを走るアーティストたちのリミックスが収録されているから。
 
今後の予定といっては、Boshke Beatsからリリースする予定のコンピレーションアルバム『CHRONIKA V』の制作をしながらバイナルを出したいな。だいぶ忙しくなるな(笑)。

 
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