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ブラックホールへの旅にでかけよう。Jeff Mills x C.O.L.O -COSMIC LAB-インタビュー

Text:Kana Yoshioka
Translation:Takamori Kadoi

  2024年が幕を開けて早々、ジェフ・ミルズ来日公演の知らせが届いた。そしてその公演は、2000年あたりから日本のコアな現場で革新的な映像をドロップしてきたCOSMIC LAB(コズミック・ラブ)が主宰するものだった。公演のタイトルは、COSMIC LAB presents  JEFF  MILLS「THE TRIP -Enter The Black Hole-」……一体、この両者は何をしでかしてくれるのだろうか。とっさに頭を過ったのは、彼らの公演に対する大きな期待だった。さらに情報を掴むと、80年代より活躍する日本のポップ・クイーン戸川純も楽曲に参加しステージに登場するらしい。

「THE TRIP」は、ジェフ・ミルズがUR時代から30年以上もの月日をかけて温めてきた宇宙への探索と挑戦でもある。エレクトロニック・ミュージックを軸に創造の世界に身を置き、聴覚・視覚ともにこれまでも、宇宙を異次元の空間を生み出してきた彼が、人々のフィジカルな部分に深く入り込んでくる超越した映像を放つCOSMIC LABがともに、「ブラックホール」をテーマにどんな時空と空間を創り上げるのか。実に楽しみな故、公演についてジェフ・ミルズとCOSMIC LABのC.O.L.Oに話を聞いてみることにした。4月1日(月)ZEROTOKYOにて、エレクトロニック・ミュージック史上これまでに類をみないブラックホールへの壮大な宇宙の旅を、我々は体験することとなる。


 


「ブラックホールの向こう側に、何があるのかは誰も知らない」(ジェフ・ミルズ)


―「THE  TRIP」はジェフさんの中で継続しているプロジェクトですが、どのような内容のものになるのでしょうか?

ジェフ・ミルズ ジェフ・ミルズ 「THE TRIP」は遡れば、90年代初頭からアイデアがあり、2005年あたりからパリで開催されるイベントの構想を考え始めたんだ。そのアイデアは私のサイエンス・フィクション、宇宙科学への興味からきていて、日頃からNASAや他の航空宇宙局がどのような動きをしているのかをチェックしている中で、宇宙探索が進化するほど複雑なことになっていることに気付き、人類が宇宙で過ごす時間が多くなるほど、どようなことが起きるのかを考えるようになったんだ。その中で、宇宙探索というものは必ずしも成功に終わるわけではなく、不幸な結果を招くことも起こるということに着目するようになった。そこで100本のサイエンス・フィクション映画を集めて、その中で地球へ戻ってこれなくなったシーンだけをピックアップしてミックスを制作したんだ。それを元に「THE TRIP」のパフォーマンスを2008年にパリのグラン・パレで開催をして、映像を巨大なスクリーンで見せることをしたんだよね。その時のメッセージは「それでも人類は前に進むしかない」ということだった。「THE  TRIP」は私の中では稀にみる発想のプロジェクトで、アブノーマルとも言えることが織り込まれているんだ。そして自分の中で長年続いているプロジェクトでもある。

―宇宙へ出て地球に戻ってこれなくなったとなるとネガティヴなイメージもありますよね。

ジェフ・ミルズ 現実的に考えるとネガティヴなことも含まれてくるよね。宇宙への探索は、宇宙で活動していくことへの人類の挑戦だけど、そもそも宇宙は人間が生活をするのには適していないし、ベストを尽くしたとしても危険は伴う。だけどそういった概念をアイデアを駆使して、シナリオを作ってクリエイティブなものにして世の中に出すことにより、それに触れた人々が、現実的な事実から身を守ることを考えることができる。それは今回の「THE  TRIP」のテーマであるブラックホールの話にも通じるのだけど、人々はブラックホールの存在を知っていて、ブラックホールが物体を吸い込むことも知っている。だけどブラックホールの向こう側に何があるのかは知らない。宇宙には危険性の高いものが多く存在すると思うから、そういったことに人々はあらかじめ触れて考えておくべきだと思うんだ。

―「THE TRIP」では「私たちはどこからやって来て、どこへ向かうのか」というメッセージを提示され、今回のパフォーマンスではブラックホールをテーマにしましたが、何故それを選ばれたのですか?

ジェフ・ミルズ 時間、時空などあらゆるものの動きが循環して、ブラックホールを生み出す……私は常にこのアイデアを頭の片隅に置いているのだけど、調べていくうちに面白いと感じたことは、空間が循環する上で時間は強力な引力を持つブラックホールへと向かって動いていて、その動きが感情を生み出しているのかもしれないという考えに至ったことだった。またすべてのものの行き着く先がブラックホールだとしたら、それは事象の地平線(EVENT HORIZON)に向かっているということになる。よってその事象の地平線の先には何があるのかを想像するし、その中ですべてのものの終わりにはポイント・ゼロ(・フィールド)が存在するのではないだろうか。それを5つのチャプターで表現しようとしているのだけれど、実際にはもっとさまざまなシナリオを考えることもできる。このアイデアがブラックホールをテーマにした重要なポイントなんだ。




―そのブラックホールへの旅を、新作アルバム『THE TRIP -ENTER THE BLACK HOLE』ではどのように表現をされましたか?

ジェフ・ミルズ 時と空間がどのようなものになるのかを表現するために、少しの物理的な知識と多くのイマジネーションを働かせて曲を作ることを考えた。着想の原点で面白いと感じた点は、宇宙とはどのようなものなのかということと、現在の私たちは宇宙に住んでいないし、私たちの現実的な時空の流れは常に一方に向かって前進しているということだった。だけどブラックホールに入ってしまうと、時間が止まる、あるいは繰り返す、逆走するということが起こりうる。もちろんこれは私の想像であって、例えば時間が止まってしまうことはとても興味深いことだし、私たちがいるこの現実に対するパラレルユニバースがブラックホールの向こう側に存在するのではないかとか、時間が逆走していくのではないか、ということを考えることはもの凄くエキサイティングで想像力をかきたてられることだった。だけどそれを音楽で表現するのはとても大変で(笑)。まず音というメディア自体の性質を考えないといけないし、音とは具体性とか、性格性を持たないとても抽象的なメディアだから、となるとストーリーを書いて想像を掻きたてるサウンドとリズムで表現しなくてはいけない。だからストーリーテリングをしっかり考え、音のディティールでそれをどのように表現していくかを考えた。また特別なケミストリーが生まれるよう、この音が人に伝わった時に人はどう感じるかを考えないといけないしね。

―例えば収録されていた「When Time Stops」では時間が止まるということを表現した曲がありましたが、非常にミニマルでした。

ジェフ・ミルズ 最初はオーディエンスにフリーズしてもらって、時間が止まる部分を表現しようとしたんだ。だけど人間は現実の世界に存在する限り、時間を止めることは不可能だということに気づいたんだ。なので時間が止まることをあえて逆手に捉えて、他の曲以上にダンサブルにしてみたんだよ。



 

ミュージカルのようにステージ上で展開するエレクトロニック・ミュージックの新しい形


―アルバムには戸川純さんとのコラボレーション曲、「矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン」「ホール」が収録されていますが、戸川さんとコラボレーションされたことに関して驚きました。どのような経緯を経て曲を制作されたのでしょうか?

ジェフ・ミルズ このアルバムを作りかけていた後半に、エレクトロニック・ミュージックというものがただ単にダンスをしたり、リスニングしたりするものだけではないと感じて、もっと新しい形でプレゼンテーションできるのではないかと考えるようになったんだ。それにこの40年くらいのエレクトロニック・ミュージックの歴史の中で、新しい方向性のものが提示されていなかったことに気づいた。例えばブロードウェイやラスベガスのショーでは、ひとつのショーの中にダンサー、シンガー、その他のパフォーマーがいたりと総合芸術的に表現をしている。そのような表現を自分のアルバムで行うのはどうかなと考えて、実際にそれを形にするにはどうしたら良いのかリサーチしていった結果、ショーをやる上でヴォーカリストがところどころに出たり入ってくるようなパフォーマンスをしていく、ブロードウェイのミュージカルのようにさまざまな要素が出てくるということをやってみるのも良いのではとアルバムにヴォーカリストを入れることにしたんだ。
 そこで日本にいるシンガーをリサーチし始め、その中でも戸川純さんが面白いということを知り、問い合わせをしたら彼女がこのプロジェクトに興味を持ってくれたんだ。もちろんそこに至るまでの間、彼女のパフォーマンス映像や出演していた映画作品を観たり、彼女が80年代にやってきたこと、音楽のタイプ、リリックでどのようなことを書くのか、またファッションやトレンドのアイコンであったことも知り、彼女の高い能力が今回のテーマに当てはまると思ったんだ。



―歌詞も素晴らしく、このアルバムをより一層魅力的なものにしたと思います。曲を作る上で戸川さんとはどのようなやりとりをされましたか?

ジェフ・ミルズ 最初にプロジェクトのコンセプトと理論を、彼女に話をしたんだ。だけどそもそも彼女は非常に優れたソングライターだから、特定のことをディレクションするというよりは、基本的にはプロジェクトの内容だけを伝えて、私は待っていたという感じ。その結果、我々人類が生きている中で抜けられない現実と、抜けられないホールに対する(ダブルミーニングを持つ)素晴らしいリリックが届いた。「矛盾」というタイトル名は彼女からのアイデアで、彼女と曲作りをしてみて本当に素晴らしいシーケンスを生み出すことができたよ。

―「矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン(Long Radio Mix)」では、ヤプーズのメンバーであるギターリストのヤマジカズヒデさんや、キーボードディストの山口慎一さんが参加されていますが、ロック的なアプローチがアルバムの中でとても新鮮でした。

ジェフ・ミルズ そもそも私はDJをやる前はヒップホップやジャズ、ロックなども聴いていたし、むしろ今はエレクトロニックミュージック以外の音楽、特にジャズはよく聴いているんだ。ブラックミュージックやロックなどの音楽の初期のレコーディング方法や、ミュージシャンたちの在り方が自分の基盤になっているから、今も曲を作る時に、他のジャンルを取り入れたアイデアが浮かんでくることがある。それにファンキーなギターがあれば、ファンキーなドラムがあり、そのファンキーなドラムはドラムマシンへ繋がっていき、そのドラムマシンからハウスミュージックへ繋がっていくなど、音楽はすべて繋がっていると感じているんだ。
 それにもちろんチャック・ベリー、リトル・リチャードがやってきたことではあるけど、ロックが初期にやっていることはダンスミュージックの本質に近いものがある。人を踊らせるということや、雰囲気がね。ロックのコンサートではクライマックスがあって、ゆっくりした部分もあって、次のクライマックスもある展開だけど、それはクラブでも同じなんだよね。DJとしてロックとダンスミュージックを比べてみると、呼び方、タイトルが違うだけで、観客からのレスポンスは近いものを感じる。それは、私たちがどこから来たのかということを忘れてはいけないというプロセスにも繋がっていくのだけどね。



Director & Dirty VFX:C.O.L.O(COSMIC LAB)
Visual creator:KEN IMAI, Shoto Higa(COSMIC LAB)


 

人々とコネクトしてイマーシヴ(没入)な映像を作る


―4月1日にZEROTOKYOで開催される「THE TRIP -Enter The Black Hole-」は、C.O.L.Oさんが主宰するCOSMIC LABとの共演になりますが、どのような内容のパフォーマンスになるのかお聞きできればと思います。ちなみにジェフさんと、C.O.L.Oさんが出会ったきっかけは何だったのですか? 

C.O.L.O 2016年に東京・浜野離宮朝日ホールという会場で、「THE  TRIP」の前ヴァージョンのようなものを行いまして、その際にプロデュースされていたのが、URのメンバーでもある石崎雅章さんだったんです。それで日本で公演をやる前にジェフが日本の映像作家を探しているということで、COSMIC LABをご紹介頂きました。ちょうど僕自身もVJをやる上で、何かを直接的に説明するだけの映像というよりも、体験を通じて直感的にインスピレーションを与えるような、ある意味、魔術的な力を映像表現の領域に取り戻したいなと思い始めていた頃で、空間自体をある種の儀式というか、空間装置みたいなものとして捉えて、作り始めていたんです。そんな時に、ジェフの「THE  TRIP」の概念を聞いてシンクロするものを感じ臨ませて頂きました。それがジェフ・ミルズさんとの初めての出会いになります。

ジェフ・ミルズ 日本で初めて「THE  TRIP」を行おうと決めた時、人々とコネクトできる能力を持っている人たちとパフォーマンスを行いたいと思っていたんだ。あの時の公演でC.O.L.Oは観るだけでなく、人々を繋げる、また没入体験できる内容の映像を作ってくれたことは私にとっても凄く特別なことだった。あの時に初めて観客の人たちへ「THE TRIP」のコンセプトを伝えられる体験を与えることができたのではないかな。

C.O.L.O. ジェフと制作した中でユニークだなと思ったのは、ブリコラージュ的な感覚の鋭さでした。そこに在るものに新たな視点や解釈を与えて、世界観を次々と創り上げていく姿には良い刺激を貰いましたし、あの時は「宇宙におけるエレガントな法則や構造に注目している」というようなことを話していたり、巻き貝や渦巻き銀河、シダ植物など、なぜ同じ渦状のカタチのものがこの世の中に多く存在するのかという話もしました。自分はアナロジカルな視点を持って、一見、関係なかったり相反するような要素が、実は繋がりがあるような興味深い事象や、不可視な繋がりを可視化していくような行為を映像を使って表現しているところはあるので、良い話ができたことを覚えています。




―COSMIC  LABの映像をこれまでに何度か体験していますが、身体(フィジカル)に響く映像を体験させてくれる印象があります。“没入する“というキーワードがお2人に共通する点なのではと感じます。

C.O.L.O 2016年に一緒に演目をやらせて頂いた頃は、市販されているVJツールでできることに限界を感じていた時期で、それで自分たちでVJシステム(COSMIC LAB LiveVisual System “SpaceTrip”)を制作して、そのVer.0が出来上がった頃だったんです。それを使い「THE  TRIP」のパフォーマンスを行ったんですが、その時期にジェフと一緒に世界観を作りあげることができたことは凄く良い経験でした。COSMIC LABでは2015年に100人の僧侶と共に作品を作ったことがあり、その時の空間が本当に魔術的というか、儀式的な空間装置になったんです。それを可能にしたのが「COSMIC LAB LiveVisual System “SpaceTrip”」のシステムやVJの技術で、それを土台に没入できるシステムを作る確信性が持てたんです。そこから早くも8年も経ってしまったんですけど、自分たちはどんどんそのシステムをアップデートさせておりまして、今回の会場となるZEROTOKYOにはCOSMIC LABのビジュアルとライティングをコントロールする没入タイプのシステムが入っているので、ジェフの方へ声をかけさせて頂いたんです。

―C.O.L.Oさんは現在、ZEROTOKYOの映像関連のディレクションも行っているのでしょうか?

C.O.L.O ZEROTOKYOがオープンする1年前に我々のVJシステムに関するコンセプトをプレゼンさせて頂いて、それで採用したいとお返事を頂いてインストールさせて頂きました。特殊な機材なので、そのスペックを最大限に活かせるのはまずは我々なので、初期のオープニングではCOSMIC LABと長谷川白紙さんでやっている超感覚音楽イベント「EPONYM 1A」に、∈Y∋ さんを招いて公演をしました。それでそれをやりながらいつか「THE TRIP」を自分の中でやりたいとずっと思っていたんです。

ジェフ・ミルズ 引き続き一緒にできることが嬉しいよ。2016年に行ったパフォーマンスはシンプルだったけど、今回はシンプルなんだけど複雑で、もっとディティールにこだわりのある内容になる。もっと多くの可能性があり、映像のムーヴメントから更に異なる体験ができるような側面もあることだろう。先ほど「時間を止める」ことに関して話をしたけれど、音楽や映像でどのようにその「時」を表現するか、なかなか難しいことではあるのだけど、今、皆で考えているよ。だけど間違いなくC.O.L.Oはそれを映像で実現してくれるだろうし、それを初めて東京で行うことに関してエキサイティングしている。今回は新しいコンセプトの元でのデビューでもあるしね。




「元を辿ると、UR時代から始まっているひとつの世界観に通じているのではと感じています」(C.O.L.O)


―映像面に関して、お2人はどのようなやりとりをされていますか?

C.O.L.O ジェフからしっかりディレクションはありつつ、良い意味で言い過ぎないというか。「THE TRIP」は抽象性が強いので、いろいろな方向に解釈ができる。それに対してアイデアの提案や意見をもらいながら、例えばジェフの方から映像やデザインに関して手書きのラフがきたりして、それに対して僕からジェフの方に戻したりしてやりとりが進んでいます。

ジェフ・ミルズ 「THE  TRIP」には本当にたくさんの側面があって、私のアイデアを映像で置き換えられる方向を探しながら、私自身、観客の人が納得いくようわかりやすく伝えるにはどうしたら良いかを考えている。そのアイデアを実現させることは難しいことだけど、一番大切なことは、観客が空間で宇宙にいるように感じてもらえなければならないから、大半の時間は暗闇をキープしてそれを持続しなければならない。銀河と銀河の間はすごく離れているから、点在しているもののそれぞれの間にスペースが存在するし、となるとライティングが存在する部分としないところで宇宙を表現しなければならないしね。地球人は宇宙へ行ったことがないけれど、宇宙がどんなものなのか概念的なものはある。だからライティングのタイミングも戦略的に行わないといけないし、大半の時間は暗闇で、その暗闇の中から見えてくるものでなければならない。例えばその暗闇の中から戸川純さんや、私が現れる時も、暗闇に包まれているような表現にしないといけないしね。なので「暗闇の中にいる」ということが、今回のパフォーマンスの印象になるかもしれない。それとはまた別の側面で、色に溢れた世界……宇宙にはたくさんの色があるから、それを私は音で表現をしないとだしね。そういった私のアイデアや想像をC.O.L.Oに投げかけているけど、きっと彼が映像で具現化してくれると思っている。




C.O.L.O 映像に関しては、現時点ではまだ制作中ではあるんですけど、昨年の11月にジェフが「THE  TRIP」の制作の話をしに来日をした時に、今回のキーワードになるようなインスピレーションをくれて、その話がとても深かったんですね。その時に、何故ジェフ・ミルズが「ブラックホール」と言っているのかを理解することができたのもありますが、それはジェフが行き着いているアフロ・フューチャリズムに対する部分も凄く大きいのだろうとも感じました。僕は日本人なので当事者になるのは難しいですがとても関心があって、ジェフは最初に「すべての存在はブラックホールに向かって吸い込まれている」ということを話をしましたが、それっていろいろな捉え方ができると思うんです。
 今回のチームはジェフ以外のほとんどが日本人だけど、ジェフの提示するアフロ・フューチャリズムにコミットして作品が出来上がっていくということが、元を辿ると、UR時代から始まっているひとつの世界観に通じているのではと感じています。その大きなスパイラルの力学によって我々生命は平等に吸い込まれている。我々の存在を超えた畏怖を抱く対象というものを普遍的に捉えることができる内容をジェフから聞けたことが、凄く印象に残っていました。それとブラックホールに対する今回のタイトルも、ジェフがUR時代に「Escape Into the Void」という言葉を使っていたことを知っていたので、それが今のジェフの考えの原点なのかと思い聞いたところ、やはりそうであったようで、「長年かけて考えてきた構想にようやく着手する」ということも話していました。

ジェフ・ミルズ ブラックホールに対する考えを辿ると、まさにそこに行くつく。マイク・バンクスとアイデアの話をしたのは1992年のことで、X101のシリーズで制作をしていた「Saturn」プロジェクトの先のリリースについて話をしていたんだ。その頃から私はそのシリーズの対象となるサブジェクト探しリサーチをし始め、URに在籍していない頃も個人的に追跡や分析をしていた。それで2011年にブラックホール理論が証明されてからは、そのブラックホールをパフォーマンスでどう証明していくか、数々のスケッチをして、アイデアを書き溜めてきて、それが今回の「Into The Black Hole」となったんだよね。だからこの構想は、30年くらい継続して考えてきたことでもあるんだ。


「さまざまな枠を超えヒューマニティー(人間性)の視点で考えている」(ジェフ・ミルズ)


―ジェフさんは、アフロフューチャリズムとブラックホールの関係をどのように考えていらっしゃいますか?

ジェフ・ミルズ アフロ・フューチャリズムに関しては、アフリカン・アメリカンの視点から話をしなくてはならないけど、そこにはまず絶望というものがあった。アフリカン・アメリカンの人々は、自分たちの原点に立ち返り考える情報や知識を破壊され、知ることや学ぶことも違法にされていた歴史がある。だから「私たちはどこからやって来て、どこへ向かうのか」ということについて、自分たちがアフリカからやってきたのかもわからないことから、考えが宇宙へ向かうということは物語の起点となる可能性はある。例えばトニー・アレンは、1・2・3・4・5という法則はあっても、その間にあるストーリーは自分で選ぶことができると話していたけど、自分たちの起源に関してのストーリーは我々で作ることが可能だということなんだ。
 例えばサン・ラーは土星からやってきて、土星へ帰ろうというストーリーを作ったけど、それは彼らが社会から切り離されているから、自分たちの原点を探さないといけないということに根ざしている。なので私たちが考える、「自分たちはどこからやって来て、どこへ向かうのか」ということに関して宗教や学問が作りあげたストーリーもあるけど、それは我々が考えることができるということなんだ。そしてアフロ・フューチャリズムというとアフリカ回帰のような印象があるけど、私はそれ以上に広く物事を捉えないといけないと感じていて、さまざまな枠を超えたヒューマニティー(人間性)の視点で考えているんだ。人生は宇宙の暗闇の中に存在し、ヒューマニティーというのはこの大きな宇宙に佇む岩の上にぴょこんとあるようなものだとね。

―人類が向かう先を表現するところでは、COSMIC LABの方向と合致することが多そうですね。

C.O.L.O まさにその通りで、ジェフさんが以前「自分はどの宗教にも属すことはないけれど、どの宗教に対しても尊敬の意を表す」とインタビューで話をされていたんですが、今日話をしていることは、意識として宗教にも絡んでくることでもあって、それは全人類が考える課題でもあり、問題意識でもあり、考えていく内容なのではと思います。それを今回はブラックホールに焦点を当てることで、すべての存在を超えた、他力本願とでもいいますか、人間の存在を超えたようなものに対してアクセスすることで我々はこういった視点でまた踏み出せる、ということをこの作品を通じて感じています。

ジェフ・ミルズ 人類には、今生きている私たちが与えられた時間よりもより多くの時間がある。だから私たちが地球から与えられた短い人生を考えれば、自分たちがどこからやってきて、どこへ向かうのかということは、皆が考えるべきことでもあるということ。だけどその時に、自分たちが与えられた人生よりももっと長い時間が存在しているという視点を持つだけで、まったく新しいアイデアや新しい考えが生まれる可能性があると思い、ブラックホールをモチーフにしたんだ。



―「THE TRIP -Enter the Black Hole-」の楽しみ方をお2人から教えてください。

ジェフ・ミルズ 音楽だけでなくより多くの感覚……視覚であったり、形、深さ、サスペンスなどいろいろな物事が入ったプロジェクトになる。表現を総合的に見せたいから、ライティングもコスチュームも重要視しているし、コンテンポラリーなダンスも取り入れたりして、それを今の時代にどう表現できるか。これは私が考える2024年のエレクトロニックミュージックがどうあるべきなのかを表現するひとつの形であり、ダンスもできるし、次に何が起きるのか予測がつかないより多くを得られる体験を通じて、予期しない宇宙、ブラックホールへの旅を疑似体験できるイベントになると信じています。

C.O.L.O 僕自身、映像をずっと扱ってきていますが、自分が作る映像のアプローチとして「ダンスミュージックとしての」ということは凄く重要なことで、つまり映像を用いて身体的な反応を引き出すということなんですけど、どんどんその部分が大きくなっていまして、それは当然身体じゃだけでなく「ブレインダンス」のような表現でもいいと思うんですけど、深い意識の部分をマッサージしていけるような映像を作りたいというか。その先に生命が肯定されていくような感覚などを感じてもらえたら嬉しいです。そして今回の楽しみ方のポイントですが、サイエンスの側面は当然あるのですが、ジェフが立てた仮説に対して、自分の価値観を重ね合わせてみるのもいいと思います。
 あと、僕の20年来の友人であり、世界を舞台に活躍するファッションデザイナー落合宏理(FACETASM)さんとのコラボレーションも感慨深いものがあります。彼とは20代の頃にバーニングマンにも一緒に行ってますし、同じ時代の光景を見てきた表現者同士でジェフとこうやってコラボレーションできるのはとても嬉しいです。コンテンポラリーダンス界を代表する梅田宏明さんの参加もとてもスペシャルなことですし、音楽だけでなく幅広い視点を持って楽しめる内容になると思いますので、楽しみにして下さい。

ジェフ・ミルズ 皆さんとこうやって探索できることがすごく楽しいし、とてもエキサイティングだよ。これはこれまでに前例がない、私にとっても初めての試みになるので、是非楽しみにしていてください!



◼️公演情報


◼️:black_small_square:COSMIC LAB presents  JEFF  MILLS「THE TRIP -Enter The Black Hole-」supported by AUGER

2024年4月1日(月)
ZEROTOKYO(東京都新宿区歌舞伎町1丁目29-1)

第1部公演: 開場 17:30 / 開演 18:30 / 終演 20:00
第2部公演: 受付 20:30 / 開場 21:00 / 開演 21:45 / 終演 23:15
*PART2入場受付は20:30よりスタートします。

一般前売り入場券 ¥11,000(チケットには「THE TRIP」オリジナルZINEプレゼント特典が付きます)

チケット購入はこちらから
https://www.thetrip.jp/tickets

出演:
Sounds: JEFF MILLS
Visuals: C.O.L.O(COSMIC LAB)
Singer: 戸川純
Choreographer: 梅田宏明
Costume Designer: 落合宏理(FACETASM)
Dancer: 中村優希 / 鈴木夢生 / SHIon / 大西優里亜

詳細はこちら
https://www.thetrip.jp/

 

◼️JEFF MILLS『THE TRIP - ENTER  THE BLACK HOLE』


3月20日リリース
LABEL:AXIS, U/M/A/A


配信リンク:https://lnk.to/JeffMills_TheTripEnterTheBlackHole

Tracklist:
1. Entering The Black Hole
2. 矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Silent Shadow Mix) * 
3.Beyond The Event Horizon
4. Time In The Abstract
5. ホール*
6. When Time Stops
7. No Escape
8. 矛盾 - アートマン・イン・ブラフマン (Long Radio Mix)*
9. Time Reflective
10. Wandering
11. ホール (White Hole Mix) *
12. Infinite Redshift 
*戸川純 参加曲