文:Yanma(clubberia)
写真:Masanori Naruse
今年のフジロックは、とくにクラブミュージックファンにとって見逃せない年である。メインステージとなるGreen StageのヘッドライナーだけをとってもGorillaz、Aphex Twin、björkが出演する。さらにWhite StageにはLCD Soundsystem、Major Lazerまで……。体が二つあれば…と思うが、そんなことは不可能なので、あとはタイムテーブルが被らないことを祈るばかり。本稿ではクラベリア編集部、3日間の妄想スケジュールを組んで見どころを紹介していく。
※本稿のスケジュールはタイムテーブル発表前のものなので、あくまでも「こうなればいいな」という希望のもと書いています。
7月28日
美声から美声に。
ボーカルでつなぐ一日と深夜の名物パーティー
東京を出て、正午過ぎに苗場に到着。まず向かうはGypsy Avalonステージ。フジロックで最初に観たいアーティストはMarter(マーテル)だ。Jazzy Sportに所属するMaterは作詞、作曲、アレンジ、プロデュース、ボーカル、演奏まですべてを自身で手がける山内将輝のソロプロジェクト。優しく鼻腔感のある歌声が彼の特徴。なかなかこんな声の持ち主に出会えることはない。
そしてここからはGreen Stageへ。Materの魅力的なボーカルに惹き込まれ、それを引きずるかのように美しい声をもつロンドン出身のポストポップバンドThe XXへ。そしてヘッドライナーの世界で最も成功を収めているバーチャルバンドGorillazへと続きたい。メンバーがアニメのキャラクターなのでスクリーンにキャラクターを投影しスクリーンの後ろでメンバーが演奏するのか? それとも本人たちが登場するのか…。目の前に広がる光景がどうあれ、Gorillazというバンドの一挙手一投足にかじりつくつもりだ。
Green Stageのヘッドライナーが終わると向かうはOasis横にあるPlanet Groove(Red Marquee)では、この日は日本人若手バンド筆頭のyahyelとロンドンWarpの鬼才筆頭のClarkが出演。yahyelは2年連続(2016年はRookie A Go-Goに出演)。一癖も二癖もある彼らが同じステージでパフォーマンスを行うことは非常にレアなことではないだろうか。
そしてこの日は長年に渡り開催されてきた金曜深夜の名物「オールナイトフジ」がプロデュースする新たなパーティーが決定。“良い子は寝る!悪い子は遊ぶ!中途半端はゆるさねぇ!”をモットーに立ち上がった、DJ & LiveI BarのINAI INAI BARがオープン。Ayashige、Bryan Burton=Lewis、DJ Tasakaなどが出演する。
7月29日
追いかけるアクト数は3日間で最多!
まさに“待望の”が付くGreen Stageの3組は見逃せない
観るべきアーティストが3日間のなかで一番多いのが29日。移動のことを考えるとField Of Heavenに出演するKyoto Jazz Sextetからスタートしたいところ。これは沖野修也が2015年に結成したジャズユニット。私も過去に2度ほど同バンドのライブを見ているが、オーセンティックなジャズを演奏しているかと思ったら、いきなりFlying Lotusの「Never Catch me」のフレーズをサンプリングするかのように入れたりと感覚がDJならでは。いつもさまざまな仕掛けを用意してくれる沖野修也が今回はどのようなステージをみせてくれるのか楽しみだ。
一方Green StageステージにはAphex Twin、Cornelius、The Avalanchesが出演する。順番を望めるのなら、太陽のもとThe Avalanchesを聴いて、夕暮れから夜にかけてのCornelius、そしてヘッドライナーのAphex Twinへ繋げたい。The Avalanchesは名盤『Since I left you』を2000年にリリースして、それ以降は、まさに作品タイトルのようにどこかに去ったかのように表舞台に姿を表れることはなかったが、昨年、セカンドアルバムをリリースしたばかり。サンプリングを駆使して音楽制作をする彼らだが、デビューアルバムの『Since I left you』はWikipediaによると3500ものサンプリングをコラージュして作られているという。やっぱり聴きたいと思うのはファーストアルバムと同タイトル曲「Since I left you」だろう。
この日に運命めいたものを感じてしまうのが、The AvalanchesとCorneliusがGreen Stageにラインナップされているところ。CorneliusはThe Avalanchesの「Since I left you」をリミックスしており、このリミックスがオリジナルと甲乙つけがたいほど素晴らしい作品なのだ。Corneliusは新作『Mellow Waves』をリリースに伴った全国ツアーも決定しているが10月からなので、このフジロックで一足先に観るチャンス。そして続くはAphex Twin。エレクトロニックミュージックシーン、鬼才中の鬼才。イギリスで6月3日に行われた「Field Day 2017」ではライブを生中継したことでも話題となった。そのライブはYoutubeにアーカイブもされているが、せっかくなら苗場のGreen Stageで楽しむことをオススメしたい。しかし、この日のGreen Stageに出演する三組、どれも“待望の”という言葉が付くような組み合わせだ。たまたまなのか、意図的なのか…、なにはともあれ歴史的ステージが続くことは間違いない。
と、この日を終わらせてしまいそうになったが、White StageでLCD Soundsystemも出演する。DFA Recordsを主催するJames Murphyのソロプロジェクトでこれまでに2度もグラミー賞に輝いている。2010年にフジロック出演後に解散したが、2015年に復活。2016年にはCoachellaにも出演している。このLCD SoundsystemがGreen Stageの3組のどこかとタイムテーブルが被るのでは? と内心ヒヤヒヤだ。
夜のフジロックの主戦場Red Marquee(この日はTribal Circus)では、14年ぶりとなるアルバムをリリースしたばかりのMondo Grossoが出演する。リリース前後でMondo Grossoの情報を見ない日はなかった、と言っていいくらい、各メディアに出演。あのミュージックステーションにも出演したのには驚きだ。新作は曲によってボーカリストが変わっていたので、この日のライブにも期待は高まる。そして同ステージにはclubberiaのアーティストアワードで2013年から2015年まで3年連続1位に輝いたNina Kravizまで出演するのも見逃せない。
7月30日
天才プレイヤーに、天才プロデューサー
世界の歌姫に、日本を代表する漢まで。
超個性派が揃う最終日
3日目ともなるとこれまでの東奔西走による疲労も出てきているかと思うが、それでも見逃したくないライブは続く。まずはField Of Heavenに出演するThundercat。Flying Lotus 率いるBrainfeederに所属する天才ベーシストだ。ここ数年のブラックミュージックの盛り上がりにおいて、誰もが認める立役者の一人で、ニューアルバム『Drunk』には、Kendrick Lamar、Pharrell Williams、Flying Lotusなど錚々たる面子が彼のために集結している。4月に来日ツアーを行ったばかりだが好評だっただけに嬉しい再来日といえる。
White StageにはDiplo率いるトリオMajor Lazerが登場。2009年にDiploが人気プロデューサーのSwitchと始動させたが、2011年末にSwitchが抜け、現在はJillionaire(DJ/プロデューサー)、Walshy FireI(MC/セレクター)がメンバーとなっている。Major Lazerといえば「Lean On (feat. MØ)」はファンが特に聴きたい曲だろうが、筆者的には静かな「Get Free ft. Amber of the Dirty Projectors」もオススメ。
そしていよいよ3日目のヘッドライナーには世界の歌姫björkが登場。もはや説明不要とはこのことだろう。フジロックには4年ぶりの出演。近年彼女が作品に取り入れているVR。この技術やアイデアを活かしたライブになるのでは?と予想している。そして編集部の最後はSunday Session(Red Marquee)のTha Blue Herbになる。今年で結成20周年を迎える彼ら。総じて代表曲のオンパレードになるのではと期待もできるし、7月に発売される彼ら初のミックスCDもあるため、その作品感をライブで表現するのでは?とも想像できる。どちらにせよ見逃せない。
本稿で紹介したのはクラベリア編集部が追いかける全16組のパフォーマンス。もちろん移動や休憩途中でばったり出くわす感動的なライブもフジロックの魅力のひとつである。さて、開催まで1ヶ月。タイムテーブルの発表が待たれるが、心から本稿で紹介したアーティストたちの出演時間が被らないことを願うばかりだ。
タイトル:Fuji Rock Festival’17
開催日:7月28日、29日、30日
会場:新潟県湯沢町苗場スキー場
■Fuji Rock Festival’17公式サイト
http://www.fujirockfestival.com/
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