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海とカルチャーに愛されたフェス「GREENROOM FESTIVAL」

取材・文:山本将志
 
 暖かな5月の気候の下、横浜・赤レンガ倉庫で開催され、毎年2日間で約10万人以上もの人を集めるフェス「GREENROOM FESTIVAL」(以下:GREENROOM)が今年で15周年を迎える。オフィシャルサイトでも「15th Anniversary」と謳われ、例年以上に盛り上がりをみせることになるだろう本フェス。ヘッドライナーには、レコード会社40社による争奪戦の末デビューし、グラミーにもノミネートされたキャリアを持つソウルシンガーLeon Bridgesや、今年のCoachellaにも出演し、メロウなソングライティングと甘いボーカルで人気の新星Tom Mischが出演する。かと思えば、ヒップホップを日本のメジャーシーンに定着させたKICK THE CAN CREW、シーンを超え絶大なリスペクトを誇る唯一無二のシンガーChara、真のストリートアーティストTommy Guerreroもいる。さらには日本におけるクラブミュージックの源流MAJOR FORCEがいれば、新世代の筆頭のKANDYTOWN、yahyel、King Gnuもいる。なんだろう、この自由さ、ほかにない!!
 




グッドミュージックの波が止まらない

 15年も続くものには、続けられる理由があるはず。2011年に「GREENROOM」に初参加して以来、本フェスのファンになった私としては、その理由は3つあると考える。①グッドミュージックに溢れていること。②どう過ごしてもいい自由な空間であること。③海と海が育むカルチャーを守り大切にしていること。
 
「GREENROOM」はジャンルでくくれない。ロックフェスでもないし、ダンスミュージックフェスでもない。オーバーグラウンドもアンダーグラウンドも関係ない。海っぽい音楽もあるが、それだけもない。ただただグッドミュージックフェスティバルである。しかし海がどういった場所なのか? その考えのもとに成り立っていることが、主催者である釜萢さんの過去のインタビューから分かる。
 
「基本的に海やビーチは誰にでも開かれているものだと思うので、そうした意味で僕らも全面的に開いていくというか、ジャンルなどに囚われないようにしたいと思っています。やっぱり海が好きな人やサーファーも、ロックからレゲエ、スカ、ハウスまで本当にさまざまな音楽を聴くので、海にジャンルはないのかなと思うんですよね」(引用元:Mikiki
 
 目を通すと音楽好きなら「どうしよう…」と困ってしまうほど魅力的なラインナップとタイムテーブル。空想フェスで理想のラインナップを考えることは誰にでもできるが、実現させるのは、次元の違う話になってくる。15年という月日をかけて、アーティストや関係者、来場者と信頼関係を築いてきた。フェスティバルを続けていくことのなかで何が一番難しかったか? その問いに釜萢さんはブッキングだと答える。
 
「ブッキングが一番難しいです。急にブッキング力が上がることはなく、毎年、ひとつずつ積み上げて5年10年15年ときました。海外、日本ともに、GREENROOMに出演してほしい、素晴らしいアーティストが本当にたくさんいて。まだまだです。これからも懲りずにチャレンジは続きます。」



2日間のタイムテーブル。DJが出演するクルーズ船Paradise Shipも人気。

 

出入り自由、無料エリアも充実。港町横浜ごと楽しめる自由な雰囲気
 
 GREENROOMならではの特徴といえば、フェス会場への出入りが自由ということ。「再入場禁止」ではないのだ。だから赤レンガ倉庫内で食事もできるし、会場から離れて海を見ながらチルアウトもできる。足を延ばせば中華街にだって行ける。決まった敷地内に留まっていなければならない。そんな決まりごとがないだけで、遊ぶ側にとってはかなりストレスがなくなる。
 
 また、チケットを持っていなくてもフェスの一部を楽しめる無料エリアがあることもすごい。無料エリアではアートやフィルムが楽しめるほか、スポンサーの趣向を凝らしたブースやフェス飯、さらにはアーティストのパフォーマンスも楽しめてしまう。この大盤振る舞い?は、前述した“海やビーチは誰にでも開かれているもの”という考えが関わってきており、結果独自性へと発展した。釜萢さん、無料エリアを設けることに正直抵抗はなかったですか?
 
「抵抗はありませんでした。可能性やチャンスと捉え、コンセプトやカルチャーを伝えるために絶対に必要な場所だと思って妥協せず作りこんでいます。GREENROOMは、有料無料の両方があってひとつです、有料エリアのライブを展開するミュージックチャージの部分と、無料エリアのカルチャーフェスとしてのアート、フィルム、マーケット、ワークショップ、キッズなどから構成されています。2017年から無料エリアにライブステージのREDBRICKとDJ 主体のPort Loungeが加わりました。マーケットに出ている、サーフブランド、スケートブランド、セレクトショップはフェスティバルのとても重要なコンテンツでいっしょにカルチャーを盛り上げ、フェスを作り上げるパートナーです。」
 
ちなみにREDBRICKには、Tommy GuerreroやKANDYTOWNが出演。Port Loungeには、やけのはら、grooveman Spot、MONKEY TIMERSなどが出演する。
 
 子ども連れが多いのも特徴だが、そんな親御さんにオススメなワークショップがある。新感覚のリズム身体遊び「キッズディスコ」。親に連れてこられた子どもの目線に立ち、ビーチのように子どもが自由に遊べ、笑顔になれば、大人も自然に笑顔になれる。家族にとって、楽しい幸せな体験を届けたいという願いから行われている。



無料エリア。中央に並ぶのは企業ブース。


アートギャラリーの様子。



夜も港町ならではの美しい夜景と一体となったライブが楽しめる。



Save The Beach, Save The Ocean


「このFestivalを通して、Music と Art を通して、海やビーチのLifestyleとCultureを伝え、子供達に大切なビーチを残していきたい。」(引用元:オフィシャルサイトより)

 これはオフィシャルサイトに書かれているGREENROOMのコンセプトだ。フェスの前後ではビーチクリーンを行ったり、フェス中ではプラカップを禁止したり、環境映画の上映や環境団体のワークショップ、チャリティアートの販売などが行われる。またこれまでにビーチにゴミ箱を設置し地域とパートナーシップを組み毎日回収する仕組みまで作っており “フェスのときだけ” で終わらない徹底した海を守る姿勢が感じ取れる。そこに、同じカルチャーを大切にしている人や企業の賛同を得て街ぐるみで発展してきたのだろう。
 フェスの期間中だけでなく、フェスの参加者が普段の生活でどうあってほしいと願いますか? 釜萢さんへの最後の質問を投げかける。
 
「みんなに海を好きになってほしい、そこがスタートです。好きなものは、傷つけないし、壊さない、汚さないはず。好きであれば大切にして守るはず。海もカルチャーもアートも音楽も。」
 
 
 音楽フェスティバルではあるから、やはり出演者に目が行きがちだが、主催者のこういった考えや取り組みを知ることで、GREENROOMの本質を感じ取ってもらえたら、いちファンとして嬉しく思います。今年の開催は5月25日(土)、26日(日)。天気になぁれ!
 
 
GREENROOM FESTIVAL’19公式サイト
https://greenroom.jp/