去る5月26日〜28日にイビサで開催された「IBIZA INTERNATIONAL MUSIC SUMMIT」は、2000人の観客とともに、ユネスコ世界遺産であるイビサの旧市街地「ダルト・ヴィラ」で無事に閉幕した。ショーではBasement Jaxx、Filthy Dukes、Pete Tong、Rob da Bankなど、世界的に活躍するアーティストが競演を遂げ、欧州のクラブ系メディアでは「イビサで開催されてきたイベントの中で、もっとも重要なイベントの1つ」とまで賞賛された。
IMSはIsland Recordsの元代表でPaul Oakenfoldのマネージャーを務めるMarc Marotによる基調演説で幕を上げた。
このサミットでは29カ国から400人近くの代表者が出席し、昨年比30%増の出席者数だった。各国から招かれたパネリストも含めると、ダンスミュージック界から450名ほどが来場したとのこと。ドイツ「K7! Records」のJuan Vandervoortはこのイベントを「革新的な音楽を作り続ける産業と知られ、やっと革新的な会議ができた」と表現している。
島内の5つ星ホテル「Ibiza Gran Hotel」ではRichie Hawtinらによる基調演説およびパネリストセッションが行われ、彼はその中で自由の発想のもと、もはや化石となっている旧来の音楽ビジネスの体制に一石を投じた(この様子はyoutubeでも公開されている)。彼のスピーチはエレクトロニックミュージックの様々な技術的可能性について多大な影響を及ぼし、「若い世代と化石世代とのギャップが生じている」と批判した。
彼の疑問を払拭してくれた人物が、若干19歳のプロモーターCallum Negus Fancey(カラム・ニーガス・ファンシー)で、音楽好きの若者が、広告によって支配されたメディアとマーケティングテクニックをどのように捉えているのかを、鋭い洞察力で観衆を驚かせてくれた。また「レコード業者や数々の音楽関連ブランドが、将来のオーディエンスに向けたマーケティングを的確に行っていない」と痛烈に批判した。セッション中にはAlfredo、DJ Pippi、DJ E.A.S.E(Nightmares On Wax)など豪華な面々がDJを務めていたそうだ。
また今後のダンスミュージック界が抱える重要問題について、参加者による電子投票も行われた。
それによると63%の参加者が「ダウンロードなどフリーミュージックのトレンドをを覆すことは不可能」と答えるなど、様々な疑問を投げかけ、それを考えさせる機会を作ってくれた。
電子投票の集計結果は下記の通り。
1Beatport時代にエレクトロニックアーティストたちにとって「レーベル」は必要なのか?
Yes: 76.5%
2 「チャート」はいまだに意味があることか?
No: 53%
3 著作権侵害は、ビジネスに打撃を与えるか?
Yes: 70.4%
4 消費者に向けた「無料」音楽のトレンドは逆転させられるだろうか?
No: 62%
5 「ポータブルミュージックプレーヤーや携帯電話が若者の社会的要素」になってきていることを受け入れましたか?
Yes: 80%
6 「Spotify」(ストリーミングサービス)はエレクトロニックミュージック業界で成功するか?
Yes: 55%
7 ラジオは今でも影響力があると感じるか?
Yes: 65%
8 実際の購入者数や、リクエスト数、オンエア数に基づいたDJ Top 100スタイルのチャートを受け入れているか?
Yes: 76%
9 今後ブレイクするであろうアーティストたちにとって、いいフェスティバルへのオファーは欠かせないか?
Yes: 62%
10 50歳以上のDJはナイトクラブでのプレイから引退すべきか?
No: 63%
11 音楽業界全体の中でエレクトロニックミュージックはしっかり認められてると感じるか?
No: 65%
12 エレクトロニックミュージックシーンは、マスな目線から外れていた方がよいか?
Yes: 69%
13 たとえばCocaCola.comでのみ楽曲が入手可能な場合、Cocoonレーベルからのニューリリースを購入したいと思うか?
No: 58%
14 この世界的不景気はあなたの音楽事業に影響を及ぼしているか?
Yes: 62%
15 新しい世代のミュージックラバーと心が通じ合っていると断言できますか?
Yes: 70%
16イビザを世界のエレクトロニックミュージックの拠点として捉えているか?
Yes / No: 50%
17 IMSは毎年イビザで開催されるべきか?
Yes: 96%
18 IMSは業界関係者のみの出席という形を維持するべきか?
Yes: 64%
19 このイベントはあなたやあなたの事業のあり方に疑問を投げかける機会を作りましたか?
Yes: 69%
20 この業界の将来に向かってあなたの声が届くと思いますか?
Yes: 86%
上記パネリストからの投票結果を考察し、今後IMSが進行予定の事業方針は、現在予定されているダンスミュージック関連事業の元となり、この業界の将来を形作る役割を果たすだろう。この事業計画に関しては近々IMSから発表があるとのこと。
またコンシューマー向けには、ダンスミュージックサイト「Beatportal」を通じて電子投票が行われ、彼らのうち80%の回答者は「ダンスミュージック界にメジャーなDJがいなくても、業界の成長は可能」と答えるなど、より客観的な回答が見られた。
加えてRekids、Toolroom,Cr2、Pacha Recordings、そしてBarraca Musicらのレーベルショーケースや、Radio Slave、Andrew Grant、Mark Knight、Sarah Main、MYNCなどのDJタイムもあったとのこと。
また最終日には、「IMS」の発展にもっとも貢献した人を称える「IMSパイオニア賞」では、サンタモニカのラジオ危局「KCRW」の音楽ディレクターを勤めるJason Bentleyが受賞を発表された、KCRWやその他の音楽監督の実績までを通じて、エレクトロニックミュージックを頂点までずっと押し上げている功績が評価されたとのこと。
Jason Bentley「IMSパイオニア賞を受賞してとても誇らしく思います。私たち全員が音楽を通じて世の中をよりよい場所へと変える力や素質があると信じているので、このような賞が関係者にいっそう刺激を与え、積極的に音楽業界に貢献していくモチベーションともなります。これからも伸び続けるダンスとエレクトロニックミュージック、そして今後インターナショナルミュージックサミットが成功するし続けることを祝いましょう!」
またこのイベントのハイライトとして、Dirty VegasがAIDSチャリティー団体「Dance4Life」をサポートするためライブでIMSテーマソングを披露した。またこの楽曲をAbove and Beyondがライブリミックスされたとのこと。そしてC型肝炎信託団体のために開催された「Get Tested」というオークションでは、Pete Dohertyのボディーペインティングが5000ユーロという高値をマークしたほか、Goldieのサイン入りポスター、それにAnna Mantronix(Scissor Sisters)のファーストツアー衣装に、Pam Hoggのキャットスーツなどに、熾烈な入札劇が繰り広げられ、団体の活動に大きく貢献した。
最後にIMSパートナーでBBC Radio 1のDJ Pete Tongはこう語った。「IMS第2回目は最高なイベントになった。サミットの水準が上げられたし、このイベントがイビザで開催されたことはとっても刺激的だった。IMSはTed CohenといったベテランからCallum Negus Fanceyといった若手までを集結させ、将来のアイディアやビジョンが混ざりあう画期的な場になった」
■IMS 09
http://www.internationalmusicsummit.com/html/home.html
■Richie Hawtinらによるパネリストセッションの模様(PCのみ)
http://www.youtube.com/watch?v=ugA2lb3g8Eg&feature=channel_page
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