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DGTL Festival 2016

 ノスタルジックな工業地帯を使用したハイセンスなロケーション、誰もが納得いく強力なラインアップ、そして先進的なコンセプトとメッセージ。毎週のようにトップDJがプレイし、ハイクオリティーなフェスティバルが開催されているアムステルダムにて、ここ数年人気が急上昇している「DGTL Festival」が、まだ冬の肌寒さがしっかり残っている3月25(金)から27日(日)にかけて開催された。

Text :noel
  
「DGTL Festival」はアムステルダム、バルセロナ、そしてADE(Amsterdam Dance Event)にてイベントを開催している比較的若手のフェスティバルで、「Dekmantel Festival」、「Awakenings Festival」、「Mysteryland」などの世界的フェスティバルに比べたらまだまだ規模感は小さいが、ここアムステルダムにて確かな軌跡を作りはじめているフェスティバルだ。その大きな要因のひとつは、“DGTL Art”と“DGTL Revolution”と名付けられた、フェスティバルを通じたアートの表現と先進的なメッセージだ。DGTL Artは、毎回テーマに沿ってアーティストをキューレーションし、フェスティバルの敷地内に設置/展示されている。開催場所のNDSM Docklandは、アムステルダム中央駅からフェリーで約10分ほど運河を渡ったところにある。工業地帯の倉庫帯をそのまま残したイベントスペースになっており、ノスタルジックでインダストリアルな雰囲気をそのまま使っている。そこに設置されているアート作品は、どれも無機質な雰囲気にマッチする鉄筋やアルミ、そしてレーザーを使用したもので、見事なまでにフェスティバルの空間を作り出している。

   
 DGTL Revolutionは、フェスティバルを通じたDGTLのコンセプトである環境保護への強いメッセージだ。驚いたのは、フェスティバル開催中、アーティスト/スタッフ含むすべてのフードに肉製品を一切使用してないこと。これも、肉製品を加工する際に発生する環境汚染を抑制するためで、フードスタンドはすべてベジタリアンフードを提供していた。それ以外にも、ソーラーパネルが設置されていたり、野菜やハーブなどを育てられるグリーンハウスの設置など、環境保護へのメッセージをアーティスティックに表現していた。


 
 さて、本題のDJ/アーティストだが、若手から大御所まで隙のないラインアップとなっていた。トップアーティストでいうと、Ame、Agoria、Gui Boratto、Hot Since 82、KINK、Maceo Plex、Recondite、Seth Troxler、Bonobo、DVS1、John Talabot、Mano le Tough、Motor City Drum Ensemble、Nina Kraviz、Prins Thomas、Rodhad、Tale Of Usと、日本ではなかなかお目にかかれない豪華なラインアップ。もちろん、オランダのDJ/アーティストのTom Tragoをはじめ、Young Marco、Miss Meleraなどもラインアップされている。ステージは、NDSM Docklandの倉庫群の一部を使用したステージや、特設テントで形成された合計6つのステージで構成されている。ここからは、私が参加した26日(土)と27日(日)のレポートを紹介したい。

 26日(土)は少し変わりやすい天気ではあったものの、昼過ぎには快晴を迎えることができたので安心した。まずは、6つのステージのなかで唯一日の光が差すAudio Stageからスタート。さすが太陽の光が大好きなヨーロッパの人、日中はやはりこのAudio Stageが人気があった。そこでは、オランダの女性DJ、Miss Meleraがプレイしていた。私自身、初めて彼女のプレイを聴いたが、力強いディープハウスのビートの裏に、フェミニンなメロディーをのせたその選曲は、雰囲気、時間帯、天気にぴったりだった。次は、メインステージのひとつであるEllum Stageへ。ここはMaceo Plexが主導しているレーベル、Ellumがホストするステージであり、彼のレーベルのアーティストやゆかりのアーティストがラインアップされていた。このときは、ドイツ・ケルンからのアーティスト、Barntがプレイ。シンセなどが使われている楽曲を中心に、心地いいテクノを響かせていた。ここから、ほかのステージも一通りチェックしてみた。会場は2つのエリアに分かれていて、歩道橋のような橋を渡ったところにフードエリアがあった。その空間では、鉄と木材をうまく組み合わせたデザインが施されており、多くの人がベジタリアンフードを楽しんでいた。また、そのすぐ近くにもうひとつのメインステージであるDIGITAL Stageがあった。そこではちょうど、本フェスにおけるビッグネームのひとり、Reconditeがライブセットを始めていた。彼の代名詞ともいえる、ドラマチックでエモーショナルなテクノで会場を大いに盛り上げ、ついにフェスティバルのギアが入ったような気がした。Reconditeの後は、個人的に26日(土)のベストアクトと感じた、Seth Troxlerがプレイをスタート。さすがアムステルダムにゆかりがあるアーティスト(今は亡きアムステルダムの伝説的なクラブTrouwは、Sethがヨーロッパで初めてレジデンシーを持ったクラブ)、彼の名前がMCによって呼ばれた時の歓声は凄まじかった。このステージの隣にあったAnalogステージのセットアップは個人的にベストだった。ここは倉庫の一部を使っており、絶妙なライティングがインダストリアルな雰囲気をしっかり出していた。ここのトリを務めたのは、「TAICOCLUB ‘16」への出演も決定しているKinkのライブセットだった。激しいパーカッションと美しいメロディーが入り混じった彼にしかできないスタイルでプレイしていた。最後に、Stereoステージと、再びEllumステージをチェック。Stereoステージでは、ロンドンの人気レーベル、Hinge Fingerの創始者のひとりとして知られるJoy Orbsionがプレイしていた、ガレージハウスと呼んでいいのか、ハウス、ジャングル、テクノ、ダブステップなどさまざまなジャンルが交差していた。そして、Ellumステージは、レーベルのボスMaceo Plexがトリを務めていた。彼の人気を物語るように、フロアは人でいっぱいだった。
 
 
 27日(日)は少し遅めに始まった。まずは、昨日のステージセットアップで一番気に入ったAnalogステージからスタート。そこではKinkの別名プロジェクトであるCyrillicとしてライブセットを披露しており、Kink名義に比べて少しダークなテクノをプレイしていた。次に、Phonoステージへ向かい、「Rainbow Disco Club ‘16」でプレイするAndrew Weatherallをチェック。“渋い”という言葉がぴったりなロービートのテックハウス/テクノをプレイしていて、彼の世界観がしっかりと放たれていた。そして、昨日のEllumステージだった場所、Maeveステージへ。昨日とは打って変わり、今日はMano le Toughと、The Drifterが主宰するレーベル、Maeveのステージとなっていた。そこでは、DixonとともにInnervisionsを主導しているAmeがプレイしていた。エモーショナルかつソウルフルなディープハウスで観客を鷲掴みにしていた。そして、再度Analogステージへと戻り、ダブテクノシーンを賑わすRødhådをチェック。個人的には、彼が27日(日)のベストアクト。Berghainを思わせるダークで激しいテクノをプレイし、Analogステージのインダストリアルな雰囲気にぴったりだった。だが残念ながら激しい雨が降り始め、なかなか身動きが取りづらい状況になってしまった。雨が止んだ隙を見て、MaeneステージのJohn Talabotをチェック。彼の織りなすメロディアスなハウスミュージックは、まるでフェスティバルのクライマックスを伝えているかのようだった。彼の後には、Maeveレーベルのボス、Mano le Toughが登場。AmeからJohn Talabot、そしてMano le Toughという流れが素晴らしかった。最後に、DigitalステージにてトリのNina Kravizを少し見て帰ろうと思ったのだが、さすがの超人気DJ、フロアは一番後ろまで満員で、早い段階で諦めてしまった。ラッシュ避けるために早めの帰宅を選択した。

   
 昨年の「Dekmantel Festival」以来、2回目のアムステルダムでのフェスティバル参加となったのだが、やはりこちらのフェスティバルのレベルの高さに驚かされる。強力なラインアップ、しっかりとしたコンセプト、そして何よりもフェスティバルすべてにおいて一貫したブランディング戦略。まるでテーマパークに訪れたような世界観を徹底して作り出している。
 日本を含め、世界中でフェスティバルシーズンがまもなくスタートする。今年は、日本で多くの「初開催」フェスティバルが予定されている。今後もヨーロッパの良質なフェスティバルをレポートしていくので、今後の活躍に期待してほしい。
 


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