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アフターコロナ時代スタート!? アムステルダムで2年ぶりに開催されたADEの看板プログラム、名門レーベルKOMPAKTのパーティーに潜入

Text: Norihiko Kawai 
Photo: Enrique Meesters, Norihiko Kawai
Special Thanks: Jon Berry (KOMPAKT)


 世界的にコロナが猛威を振るい、ここオランダも例外なく2020年の春頃からロックダウンが始まり厳しい時間を過ごしてきた。ナイトライフ産業、ひいてはダンスミュージック業界もすぐに規制対象となり、数々のクラブやバーも営業することができず、コロナを発端とし、De Schoolなどの人気クラブでさえも閉店に追い込まれる事態となった。

  ダンスミュージックシーンのフラストレーションが一気に爆発したのは、今年の8月終盤だった。夏のフェスティバル開催にゴーサインを出していた政府だったが、感染者が急増したため、ゴーサインからわずか3週間で夏のフェスティバルの開催許可を取り消したのだった。街中ではダンスミュージックシーンの再開を願うデモンストレーションパレードが8月21日と9月11日の2回渡り開催され、オランダの主要各都市の中心部を埋め尽くすほどの規模となった。



 

 しかし、成人における2回目のワクチン接種率が80%程に達し、感染者数が減少していた背景に加えデモンストレーションの訴えが通じたのか、政府は再びイベントやフェスの開催にゴーサインを出した。それと同時にマスク着用義務やソーシャルディスタンスなどの社会的なコロナ規制も一気に緩和された。そして2年ぶりにADEはカンファレンス系のプログラムを除き、パーティーやフェスティバルを中心に夜の12 時までのコロナ規制に沿って開催された。



 そんな中、ドイツの老舗レーベルKOMPAKTが、アムステルダム西側の大箱De Marktkantineでレーベルパーティーを開催した。KOMPAKTはディストリビューション業務からアーティストエージェンシーまで幅広く手がけており、世界のエレクトロニックミュージックシーンを牽引する存在だ。出演は当サイトのpodcastsにも登場してくれたJonathan KasperやデンマークのデュオWhomadewho、ブラジルのスターGui Boratto、そしてミニマルシーンのベテランRobag Wruhmeを含む9名のアーティスト。


 
 会場となったDe Marktkantineのキャパシティは約1200人で、元々は市場で働く人々の食堂として1936年に建設された。食堂としての役目を終えた後は、1950年に劇場として生まれ変わり、以降はコンサートホールやナイトクラブとして名を馳せ、アムステルダム西側のカルチャーシーンを支えている。

今回のADEを含め、現在オランダで開催されるイベントの各会場に入るには、ワクチン証明か陰性証明、回復証明の提示が必要とされている。それも手伝ってかエントランスには予想外に長蛇の列ができており、マスク規制もないので、日本人なら心配になる光景だっただろう。



 パーティーは15時にスタートしたが、会場には18:30頃に到着。中に入るとすでに、サブフロアからメインフロア、屋外の喫煙スペースやバースペースに至るまでほぼ満員だった。「コロナ禍の人数規制で人の入りはそこそこだろう」という自分の予測が外れ、小さなシークレットパーティーへの参加こそあれ大規模なパーティーが久しぶりだったので、現場の雰囲気になれるまで少々時間を要した。

そうはいってもここはオランダ。この国ではほとんどのシーンでアップリフティングなDJスタイルが支持され、アゲてなんぼの世界なのだと僕は認識している。DJバーなどでも時間帯によっては勢いのある曲が好まれる傾向にあり、ADEともなればなおさら会場内の雰囲気はあがりっぱなしで、しかめっ面をしていようものなら誰かしらが「Hey!」と声をかけてきたり、フレンドリーな雰囲気で非常にパーティーに入りやすい。客層は普通の若者からベテランダンサーまでと幅広い年齢層が集っていた。



 メインフロアは3階まで吹き抜けの構造になっており、DJブース裏もV I Pだけが行けるようなスタイルではなく、360度どこからでもオーディエンスが楽しめるようになっていて、DJブース周りは異様な熱気を放っていた。そんな中でも雰囲気に飲まれることなく、KOMPAKTのアーティスト達は絶え間なく上がる絶叫に呼応し、フロアを巧みにコントロール。その際たるはメインフロアのピークを飾ったGui Borattoのライブセットであった。Harthouseからのリリースを思い起こさせるような90年代の雰囲気、メロディアスであり厚みのあるサウンド、緩急をつけた展開にときおり硬派なサウンドも散りばめ、ライブ配信では得ることのできない、ステージ上で行うライブの醍醐味を感じさせてくれた。歓声が鳴り止まないまま、ラストのPatrice Bäumelへつないだ場面は、エレクトロニックミュージックの真髄が今ここで受け渡されているんだ、と思わせるほど印象的であった。





 セカンドフロアは名箱であった代官山AIRのメインフロアを少し大きく丸くしたような感じで、メインフロアの真横に隣接しており、音がバシバシ被っても仕方ないような状況にも関わらず、不思議なことに双方のフロアの音が邪魔をし合うことはなかった。このフロアでは、ヨーロッパで好まれるディープ・ハウスやミニマル・ハウス、テック・ハウス、そして時折モダンなディスコも投入され、良質なグルーヴがフロア全体を包み込んでいた。その中でも3番手に登場したオランダの女性アーティストNicky Elisabethは、バトンを受け継ぐやバウンシーなトラックを繰り出し、パワフルなセットでメインフロアに負けない熱気を生み出した。そして最後は、日本にもファンの多いRobag Wruhmeが登場。前者とは違って、ミニマリズムを感じさせながらも徐々にフロアをピークに持っていき、完全にオーディエンスを引き込むその術は、長年にわたり第一線で活躍するアーティストとしての深みを感じさせた。





 例年のADEのように多数のパーティーに行ったわけではないが、久しぶりに大音量の音楽を浴び、グルーヴに身を委ねたことで、失いかけていた感覚を取り戻すと共に、何か言葉では表現できないパワーが体に充填されていた。


■関連リンク
AMSTERDAM DANCE EVENT

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KOMPAKT
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De Marktkantine
https://marktkantine.nl/
UNMUTE US! デモンストレーション
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