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OUT PUT / Manami Sakamoto - vol.3
「映像の進化とパーティーシーン」Interview - Kosuke Takada | 高田浩介

Clubberiaをご覧の皆さま、こんにちは。
肌寒くなってきた最近はいかがお過ごしでしょうか?

前回より少し間が空いてしまいましたが、この期間中にもダンスミュージックシーンのパーティーは変化し続け、オンラインパーティーは勿論のこと、少しずつリアルパーティーも人数制限などのガイドラインに従いながらも復活してきました。
パーティーにおいて、普段私のようなVJやDJ、デコレーションなんかもそうなのですが、主にオーガナイザーさんからお声かけ頂き出演することがほとんどです。

様々なアーティスト・クリエーターをキュレーションし、パーティー全体の在り方、見え方を造っていくオーガナイザーに今回は焦点を当てて映像を軸にお話しできればと思います。
かれこれ10年ほどのお付き合いになり、共にたくさんのパーティーをご一緒させて頂いている高田浩介さんにお話しを伺いました。

Kosuke Takada | 高田浩介
/ Lost and Found LLC 
2000年より新木場ageHaのプロジェクトに参加。プランニングマネージャーやジェネラルマネージャーを歴任し、ディレクターとして数々のビッグパーティーを仕掛ける。

2016年にダンスミュージックやナイトライフ分野に特化したプランニング・エージェント会社 Lost and Foundを設立。WOMB、Contact Tokyo、VENTなど都内CLUBでのイベントを企画するほか、スペイン・イビサ島のクラブPachaのフェスティバルを初上陸させたり、チルアウトのレジェンドDJ、ホセ・パディーヤをマンスリーレジデントに迎えたホテル最上階でのサンセットパーティーを実現させている。

最近では、世界を席巻中のテックハウスを軸にした渋谷Sound Museum Visionの看板パーティー「EDGE HOUSE」、アンダーグラウンド・クイア・ハウスミュージックのパーティー「Motorpool」をContact Tokyoでレギュラー開催するなど、常に現在進行形かつ世界のリアルなシーンを日本に紹介している。


RESONANT -Sound of Berlin -_2015.9.22
BEN KLOCK B2B MARCEL DETTMANN / DJ NOBU / MR.TIES / DSKE


Mother × ageHa presents UNIVERSAL SOUND OF ORCHESTRA_2009.10.11

SON-KITE -LIVE- / THE DELTA -LIVE- / TAKKYU ISHINO

Manami(以下M) : 早速ですが、浩介さんといえば、Pachaのような海外輸入物からMoterpoolなどのゲイカルチャーに焦点を当てたパーティー、EDGE HOUSEなどのトレンドを重視したパーティーなど、幅広いジャンルのパーティーをオーガナイズされていますが、パーティーをオーガナイズするにあたって意識していることはなんですか?

高田(以下T) : 終わってから燃え尽きないことですね(笑)1回やって終わりじゃダメ。ダンスミュージックシーンは常に大きなうねりと揺るぎない岩のようなものが存在していて、その両方を何年も感じていたいので、一過性のもの以外はオーガナイズしないように気をつけてます。

EDGEHOUSE


世界中で巻き起こっているカッティングエッジな最新のHOUSE / TECH HOUSEミュージック旋風を体現するパーティー「EDGE HOUSE」 
音楽だけでなく、アートワーク・映像・照明・デコレーション・香りにまでこだわり
フェス規模の世界観で行われている。
Sound Museum Visionにて毎月第一金曜日に開催。


MOTORPOOL


ディスコやテクノが新旧織り交ぜプレイされるアンダーグラウンド・クイアハウス・パーティー「MOTORPOOL」。多様性を謳歌する出演者とクイーンが揃い、ゲイナイトでもなくあらゆる人種を飲み込む多様なスタイルでContact Tokyoにて不定期開催。最近オフシュート・パーティー「Service Area」も始動させた。


M : 浩介さんは、私自身よくご一緒させて頂いていて長い付き合いですが、VJは勿論Teaserやアフタームービーなど映像にもこだわりを持たれているかと思います。浩介さんから見るパーティーにおいての映像の立ち位置とはなんでしょうか?

T : かつてはパーティーを構成する演出手法でしたが、技術進化やパーティーの発展に伴って主役を張る存在になってると思います。そのわりにフライヤーに掲載されるクレジットがまだ小さかったり、紹介されるのも最後だったり、地位の向上はまだまだですよね。ライティングも同様。そもそもパーティーとは各要素の集合体だと思ってるので、どれも欠かせないと常々思っています。テレビ番組でも映画の大作でもカメラや衣装さんがいないと成立しないでしょ。あれと同じ(笑)
昔と違って、今は映像を映すだけでなく、照明のようなエフェクトやDJを映すモニター的役割もあるし、パーティーには不可欠になったんじゃないでしょうか。


M : リアルなパーティーが制限されている今は特に映像の進化がめまぐるしいですよね。
映像の比重が高くなったからこそ、できることも増えたし新しい表現もどんどん出てきて楽しいです。それに比例してパーティーにおいては映像だけでは成立しないし、音楽やデコレーション、勿論お客さんも含めて映像だけが強くなりすぎないように他の要素とどう上手く融合していくべきかという新しい悩み?も個人的にはあります(笑)
浩介さんがパーティーを作るにあたりその辺りのバランスはどう取られていますか?

T : 作り手は何を表現したいのか?お客さんは何をしたいのか?を捉えることじゃないかな。そこにきっとバランスが生まれるはずだから。一方通行にならないようにするのが大事だと思いますよ。そのためには各セクションと常にコミュニケーションをとって調整していく。ミーティングして意見交換して市場調査をして作りあげていくのがパーティーかなと。


PACHA FESTIVAL TOKYO_2016.5.3


MARTIN SOLVEIG / FEDDE LE GRAND / BASEMENT JAXX / KLINGANDE

2016年から3年連続で行われたイビザの老舗クラブPachaの日本上陸パーティー「Pacha Festival Tokyo」、そしてPacha Ibiza On Tourフェス本番中の映像は勿論のことデコレーション、アートワーク、Teaser映像などもPachaらしさ全開の世界観で埋めつくされた。


M : コロナ渦によりパーティー自体の在り方や形も大きく変わり始めていて、特に配信事業ではDJのPLAY配信は勿論ARやVRなどの最新技術も目を見張るものがありますが、浩介さんから見てパーティー配信の面白さ、難しさはなんでしょうか?

T : コロナ禍でいくつかの配信に関わりましたが、音と映像の立ち位置が逆転したように思えます。こだわった映像じゃないと面白みがないというか、「だったら高音質で音楽だけ聴こう」と思っちゃいますね。そのせいなのかどうかは分からないのですが、ほんの数ヶ月で映像演出も技術もどんどんレベルアップしてると思います。
パーティー配信というかDJ配信は、家でくつろぎながら楽しめるのが面白いけれど、環境によるんじゃないかと。。。大画面なのか携帯なのか?音響設備は整ってるのか?人によって差が出ちゃうんですよね。配信元がどれだけ頑張っても埋まらない溝があるというか。でも、逆に考えると携帯画面+イヤホンでも楽しめるものに発展していくかもしれないですよね。YouTubeみたいに、手軽なものとして。


M : VRやARが進化したことにより今後のリアルなパーティーシーンにも変化はくると思いますか?

T : リアルなパーティーシーンは、すでにドライブインフェスや野外フェスが人気だったり徐々に変化は来てますよね。でもVRやARの進化とこれはまったく関係ないと思います。密な状態への拒否反応が芽生えてしまっただけの話。

VRは配信事業において、ARはリアルな現場において進化していくんじゃないでしょうか。当たり前だけど(笑)
仮想現実と拡張現実だもん。背景を考えるとVRの発展は早いような気がします。
リアルな現場の場合、ブースに海外DJが登場してプレイすることも将来は出来るんじゃない?これがARのはず。リアルなパーティーシーンの変化の1つにこのARが入ってくるかなとは思います。渡航制限が撤廃されて飛行機に乗れるようになったとしてもこの出演手段は今後スタンダードになる可能性は大いにあるのではないかと思います。

映画レディ・プレイヤー・ワンみたいにヴァーチャルな世界にあるクラブやフェスに遊びに行けるのがVR。ヴァーチャル空間で海外の有名フェスはすでに実験を始めてる。巨額のフェス運営費の代わりにヴァーチャル空間を生み出す方に予算をかけ、ユーザーが満足するのかどうかの実験。ただね、汗かいたり雨に濡れたり渋滞にハマったり、思い出になるような体験は出来ないんじゃないかと思います。リアルな現場は必ず必要になってくると信じています。


M : 先日リアルな野外現場でのシークレットパーティーをオーガナイズされていましたが、いかがでしたでしょうか?何故野外でシークレットパーティーを行おうと思ったのでしょうか?

T : 最高でした。言葉や文字にするのは難しいんですが、「良い空間」になったと思いますよ。
休業要請によりクラブが営業自粛を余儀なくされたタイミングで新たなことに挑戦したいなーと漠然と考えてて、ちょうどヒマになったのもあるし(笑)数カ月かけてずっと会場探しをしてたんですよ。山梨とか奥多摩とか実際に足を運んで。ココだ!って場所がなかなかなかったんだけど、8月後半にようやく辿り着いたのが今回の会場なんです。当初探してたキャンプ場じゃなくってそこは農園レストラン。食と音と自然がMIXしたものはこれからのメインストリームになるだろうと踏んでたので、なんか巡り合わせというかご縁というか、、、見に行ってすぐに空間のイメージが出来ましたね。
シークレットというよりは知り合いだけで150人限定。で、都心から少しだけ離れた野外で地産地消の食材を美味しくいただけるイベントって貴重でしょ?コロナ禍で「安心・安全に遊べる場所」ってあんまりないんじゃないかなと。自分もちゃんと遊びたかったし。。。(笑)

Lost&Found



M : 長くシーンに携わってきた浩介さんから見るコロナ後のパーティーシーンはどうなっていくと思いますか?

T : コロナ前と同じ状況に戻って欲しいと期待するのはやめた方がいい。過去は栄光でいいじゃない。楽しかったあの頃っていつまでも言ってるのって年寄りくさくない?笑
人は順応する生き物だと思うからアジャストして進化すべきと思います。先ほど話したVRやARの進化はおそらく止まらない。でもリアルな現場が止まってる。なぜか?コロナ前と同じ状況に戻そうとしてるからじゃないかなと感じます。立ち止まらずに新しい目標を作って歩いていかないと。だから野外でやってみたり、まずは一歩踏み出さないとね。
コロナ後のパーティーシーンは、「クラブの野外化」や「野外パーティーのクラブ化」が進むと思うんですが、それをイチ早く仕掛けたいな~って考えてますよ。


M : 最後に一言お願いします。

T : 踊ることをやめない限りパーティーは終わらない。
新たなフェーズを共に楽しく生きていきましょう。


コミュニケーションが最も大事になってくるパーティーに置いて、コロナ渦によって新たなフェーズに突入した今、新しい実験・試行錯誤が日々行われています。
何を表現したいのか?何を求められているのか?のバランスを調整しつつ、全体を形にしていくオーガナイザーからの目線のご意見がとても参考になりました。
お客さんとのコミュニケーションは勿論ですが、作る側のコミュニケーションも必須です。
映像の進化により価値観も変わりつつある今新たなパーティーがどんどん生み出されていくのが今から楽しみです。