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OUT PUT / Manami Sakamoto - vol.7
「音と映像の融合実験」Interview - Omodaka | 寺田創一

clubberiaをご覧の皆さま、こんにちは。あっという間に春が終わり間も無く夏に入りますね。
少し間が空いていた間に私の方はいくつかのオンラインライブやMVなどのプロジェクトに関わらせて頂いていました。

MVは勿論ですが、オンラインライブでは特に映像表現の比重が高くなっていくので、音楽家の方とも密にコミュニケーションを取らせて頂く機会が多くなってきています。このアウトプットでもこれまで、VR、AR、オーガナイザー、プロモーター、アートなど様々な分野の方々にお話を伺ってきましたが、今回は音楽家側から見た映像の表現とはどんな風に見えているんだろう?と思い立ち、自身で映像と音楽を操り独自の世界観を創り出すOmodakaこと寺田創一さんにお話を伺ってみました。


Omodaka
Omodakaは「テクノ民謡とモーショングラフィックスの融合実験企画」として始動し、 液晶ディスプレイに映し出された仮想シンガーと共にGBC、PSP、DS liteやタッチパネル式シンセサイザー等のデバイスを使い、巫女装束でくりひろげるパフォーマンスが特徴。 2009年から2021年にかけて日本国内や北米、ヨーロッパ、中国、ロシアなど8カ国でライブ公演を行ってきて、2019年秋に新譜「郡上節」、2021年春には「ドダレバチ」EP がリリースされた。



Kokiriko Bushi / Omodaka

Omodaka一押しのMV。8ビットな音楽の世界観にガイコツと目玉のコラボレーションで民謡も相まって唯一無二な世界観に。動画の概要を見ると投稿が2007年になっていて、今でこそオーディオビジュアルという言葉は浸透しているが、10年以上前から映像を使った音楽表現に取り組まれていることに驚き。

Manami(以下M) : 早速ですが、まずOmodakaとは何か?を教えてください。

Omodaka(以下O) : Omodakaはダンスビートと日本民謡とチップチューンが融合した音楽アーティストの名前ですが、同時にその音楽が色々な映像作家とコラボレーションする企画の名前でもあります。

M : Omodakaを始めた経緯を教えてください。

O : 2000年の秋頃、ある展覧会でモーショングラフィクスを始めて見たのですが、それが衝撃的で、その映像作家の方にコンタクトを取って共作をお願いしたのがコラボレーション企画の始まりでした。

Kuwana No Tonosama / Omodaka

Omodakaが初めてモーショングラフィクスを知るきっかけとなった映像とデザインのプロダクション、Power Graphixxとカリスマ絵師 ohuton と共作の最新MV。キメの細かいモーショングラフィクスで、楽曲の世界観と見事にマッチした作品に。


M : Omodakaの作品は、楽曲とリンクしたたくさんのMusic Videoも見どころの1つですよね。このMV達は同じ映像作家さんが作られているのでしょうか?

O : MVは自分の好きな複数の映像監督やアニメーション作家の方々にお願いしているのですが、曲を指定したり、たまに作家に曲を選んでもらったりして、それぞれの監督や作家に好きなように作ってもらっています。 

Hietsuki Bushi / Omodaka

アニメーション作家ひらのりょうさんとの作品。約4分の中にストーリーが詰め込まれ短編映画を見ている気持ちに。絵が可愛い。


Plum Song  / Omodaka

漫画家・映像作家でもある牧鉄兵さんとの作品。牧さんとは、上記で紹介しているOmodaka一押し作品のKokiriko Bushiも共作している。


M : Omodakaでのライブはこれまでにも色々な形でもやられているかと思いますが、VRにチャレンジしようとしたきっかけはなんだったのでしょうか? 

O : 2020年夏にある配信ライブに参加したのですが、そのライブ会場の舞台監督がVR技術について教えてくれたのがきっかけです。その時は「よく理解できないけど、とにかくスゴイ映像合成技術なんだな~」という印象でした。

Omodaka TED x Haneda


Omodaka Boiler Room Tokyo Live Performance

これまでにOmodakaはBoiler RoomやTED x Hanedaなどでもライブを行っている。ライブ中にはお客さんに楽器となるゲーム機を操作してもらいながらリアルタイムで楽曲を演奏してもらうパフォーマンスも。

M : 実際にVR空間の中でパフォーマンスをされてみていかがでしたでしょうか?率直な感想や発見があれば教えてください。

O : 舞台の前にモニターを置いてもらっていて、合成具合がライブ中に確認できるのですが、それをパフォーマンスに反映させる心の余裕がまだ全然ないので、ライブ後にプレイバックを見るのがとても楽しいです。

M : VRシーンを制作するに当たり、世界観については寺田さんご自身からのイメージアイディアをベースにVRシーンのデザイナーであるnanographicaさんが要素をプラスして形にすることで、今回のような不思議な空間ができたと思っています。Omodakaは特に世界観が素晴らしく、民謡歌手である金沢朋子さんの歌声も相まって摩訶不思議な世界になっているのが特徴的に感じます。デジタルとアナログの絶妙な境目を表現されていますよね。音楽、世界観を作るに当たりコンセプトや決め事などはあるのでしょうか? 

O : nanographicaさんの作るVRステージにすでに強力な世界観があって、それにありがたく乗せてもらっている感じです。特に決め事などは無いのですが、偶然起きたヒューマンエラーなどから新しい演出が生まれる時もあります。


昨年、Omodakaが初めて行ったVRライブの様子。シーン制作にあたり寺田さんからは”春”、”秋”と”あの世感”というキーワードのみをヒントとしてもらいnanographicaさんが世界観を作り出した。撮影セッティングの際にたまたま起きたミスを寺田さんが採用し動画内途中にはomodakaが突然2人に増えたように見えるシーンも。隠れomodakaを探すのも楽しい。ちなみにこのVRライブ映像は、イギリスのLondon Independent Film Awards、ドイツBerlin Movie Awards、インドCineville Calcutta Global Cinefestなど14カ国の映画祭でセレクトされ、世界中から評価されている。


M : このコロナ渦で特に映像の技術は10年以上一気に進化したと言われています。配信ライブという形がノーマルになり、VRやAR、最近はXR (前者2つやリアル照明など複合的な技術が組み合わさった総称のこと)なんて言葉もよく目にするようになりました。日々試行錯誤された作品が世界各地で発表されています。ステージに立って表現される立場としてお客さんが実際にその場所にいるライブと、インターネットを通じての遠隔ライブの感覚の違いはありますか?

O : 普通の物理空間のライブと配信ライブとでは、観る方もやる方も舞台と映画のような体験の違いがあるんじゃないかと思います。物理ライブで有効な演出方法(例えばその場でデカい音で鳴らすとか)が配信ライブでは不可能とか、またその逆に配信ならではの演出とかもありますもんね。

M : 個人的に特に印象的だったのが、撮影中に「いつもの3倍はオーバーアクションにしないと地味に見えてしまう」というお話をされていたことです。VRの世界観が強いのもあるのですが、それだけではなく”配信”という形でお客さんが実際に目の前にいなく遠隔で表現を伝えるからなのでは?と感じました。お客さんとのコミュニケーションについては、どう感じますか?

O : 物理空間のライブだと、観客の近くに寄るとか、皆で一緒に同じアクションをするとか、そういうことが楽しいのですが、配信の時はそういう演出を別の方法、例えば「寄った位置にセットしたカメラに切り替える」とか、そういうインタラクションに変更する必要があると実感しました。

M : これはOmodakaというよりは寺田さん個人に伺いたいことなのですが、Omodakaで映像を駆使して曲の世界観を伝えるプロジェクトと寺田創一さんとして楽曲のみで音楽を伝えるプロジェクトの2面性がとても対照的で面白いなと感じています。
どちらにもそれぞれの良さがありますが、映像を組み合わせることで見える可能性などはありますか?

O : 映像はイメージを伝える力が強いし、音楽と組み合わせることでどちらか一つでは説明しにくい雰囲気を作ることが出来ると思うので、それを色々試すことは自分にとってすごく楽しいのです。これまでのDJ+VJという確立した方法もありますが、それ以外の表現の方法や可能性も沢山あると思います。

M : 今後、Omodakaとしてチャレンジしてみたいことはありますか? 

O : 6月中に2回目の配信ライブが予定されているので、それが無事に終えられるように色々準備していきたいです。それが無事に終わったら何か新しいチャレンジが見つかるかな。

M :  最後に一言お願いします。

O : 6月中に予定されているOmodakaの2回目のYoutubeでの無料配信ライブ、1回目を観てくれた方も、そして初めてのかたも是非ご覧ください。



寺田さんの言葉にあったように、音と映像どちらかだけでは説明しにくい表現も両者が合わさることにより何倍ものパワーを発揮することを体現したプロジェクトがOmodakaなんだと感じました。それぞれの解釈を尊重し組み合わせ、新たに出来上がるストーリーと予期せぬハプニングをも楽しんで演出に取り込む姿勢にエンターテイメントの根本を改めて学んだ気がします。
Omodakaの音楽を聴くと自然に元気になるのは、寺田さん自身が楽しんでライブをやられているからこそ伝わるのだと感じます。

2回目のYoutubeライブは6月25日21時から行われるそう。今回のVRライブのコンセプトキーワードは”夏”と”冬”、”バグ感”。果たしてどのような世界観になるのか楽しみです。気になる方は是非Omodakaワールドへ遊びに行ってみてください。

Omodaka / Synthetic Nature 2 Live