INTERVIEWS

Mike Mckenna

最初に日本に来たのは大学を卒業してすぐ、1994年のことなんだ。当時は故郷イギリスでジャズのDJをしてたんだけど、当時、日本のジャズシーンはすごく勢いがあったから、興味があってね。ロンドンのジャズシーンでもU.F.O.の「Loud Minority」なんかは、とにかくよくかかっていたよ。それで、忘れもしない1994年の7月21日に来日したんだけど、なんとその1週間後の28日にはもう「Bar Aoyama」でDJをしてた。それからしばらくして、毎週「Pylon」でDazzle Tと共にDJをするようになったんだ。

 でも、そうこうしてるうちに僕の音楽はルーツであるジャズから離れて、お客さんが求めるポップスなどのリミックスに偏るようになってしまい、自分の音楽に対して幻滅するようになった。それで96年には完全に音楽活動をやめてしまったんだ。 その後、3年くらいは何も音楽活動をしなかったんだけど、タイに旅行したときに入手したケミカルブラザーズのテープを聴いたところ「これはイイ!」と感銘を受け、次の日さっそくRoland社のダンスミュージック用シーケンサー「MC303」を買って、自宅で音作りを始めたんだ。ここから音楽活動を再開するんだけど、HMVで何気に買った「GU nubreed Anthony Pappa」のCDを聴いたことで、プログレッシブに注目しだした。
 それで西麻布Yellowの看板イベント「Kool」でプレイしていたKo Kimuraを聞きに行くようになり、KoやFutiqueの長谷さんと知り合いになった。そして毎回、自分のミックスCDをKoに渡していたところ、ある日、長谷さんから電話が来て「明日AirでDJしない?」って訊かれたんだ! 確か2002年の9月のことだったかな。それまでにもたくさんのミックス CDをクラブなどで配ってたんだけど、これは僕にとってすごく大きな驚きだったよ! これをきっかけに以後Koと一緒に「KOOL」をやることになったんだ。

 たぶん、ウォームアップもしっかりできるDJだってことが買われて、選ばれたんだと思う。と言うのは、日本人DJの中にはウォームアップからいきなりハードに切り出す人もいるからね。これはNGだと思うよ。やっぱりその場の雰囲気や、タイミングにあったDJスタイルというのがしっかりあって、時には「自分をこの場で全部出したい!」っていう気持ちを抑えてプレイしないといけないと思うんだ。 僕は日本でDJするのが大好きだから、日本のクラバーが何を求めているのかはだいたいわかるつもり。けど、たまーに外国から来たDJの中には、そのへんがわからない人がいて、そうするとそのDJのスキルやセンスには関係なく、あまりうまく行かないことがあると思う。たとえば例に出して悪いけど、 James Zabielaはものすごく成功しているDJだし、かなり音もいいんだけど、去年渋谷のWOMBでやったときにはクラウドが何を求めているかがわからなかったんじゃないかな。だから、あのパーティーはあまりうまく行かなかったんだと思う。

日本では、なによりもアクティブなDJが好まれるよね。ターンテーブルのうしろで飛び跳ねたり「クラウドと一緒に俺は楽しんでるんだ!」ってところで、日本のクラウドってみんなDJに注目しているけど、これはいいよね! 僕はとにかくクラウドからのレスポンスを受けながらDJするのが好きだし、自分とのコネクションを作れるクラウドじゃないと思いどおりのDJはできないなあ。とにかくクラウドとコネクトすることは重要だと思うよ。

これまでにも中国、香港、マレーシアなどでプレイしたけど、やっぱ日本のクラバーはいろいろとわかっているんだと思う。クラブミュージックに関しては、ヨーロッパ以外では日本のクラバーが一番わかっているんじゃないかな? 日本のクラバーはとにかくさまざまな情報にアクセスできるからかもしれないね。たまにちょーっと、こだわりすぎ!って思うときもあるけどね(笑)。 僕は去年、人気のクラブ雑誌Loudの読者が選ぶ「2004年度国内DJベスト投票」で1位になったんだけど、あれには本当に驚いたよ!!!でも、あれはシーンに対してけっこうショックを与えたと思うよ。日本のDJに限らず、多くのDJは自分が投票されることをあたりまえに思っていた部分があったんじゃないかな。そこに僕がいきなり1位を取ったことによって考え直した人もいると思うよ。と言うのは、僕は本当に一生懸命に自分をマーケティングしたし、そのおかげで勝ち取ったモノだと思っているから。

 音楽ってのは人間のもっとも原始的なコミュニケーション手段の1つだと思うけど、DJってのは音楽だけじゃ務まらないと思ってる。クラブで自分のセットが終わったあとや、自分のパーティーがない時には、1人のクラバーとしていろんなクラブに足を運んで行って、そこにいる人たちとのコミュニケーションをとっていく必要があると思う。VIPルームとかにこもりっぱなしではダメだと思うんだよね。

僕自身は受賞によって、やっぱブッキングが増えたし、しかもウォームアップではなく、メインDJとしてのオファーが増えたのは大きな収穫だった思う。なによりも、自分自身がやっていることに対しての自信にもなったしね。 実は、今日(1月28日)がこれまで2年間続けてきた「Kool」での最後のプレイになるんだけど、やっぱりKoolから離れるのは残念だと思う部分はあるね。でも反面、今の自分の音は「Kool」をやり出した時とはかなり変わっているので、Koとのプレイには合わなくなって来ているとも思ったんだ。だから、残念だけど、脱退を決めたんだ。

KoやFutique、それに会場であるYellowには感謝しきれない気持ちでいっぱいだよ! だって、彼らのおかげで今の僕があるってことは間違いないからね。でも、今の自分は、ダーティーハウスな音を志向しているんだよね。エッジの効いた感じの音、ちょっとディストーションっぽい音が入ったり、たまにはベタなボーカルが入ったりってな感じかな。プログレッシブはキレイなメロディーが中心になるけど、ダーティーハウスはすごく生な音が中心になるんだよ。アチトゥードが効いた感じがあるんだ。そこにブレイクスを盛り込むのが好きなんだよね。日本のDJでいうと、Duck Rockとか、Toshiyoshi NKJとか、僕と同じ英国人でやはり日本在住のDave Twomeyなんかのプレイに合うんだよ。特にDaveとは本当によく合うんだ。 実は、僕はDJをするかたわら、主にイギリスから、日本での知名度にかかわらず、とにかく「クオリティー」の高いDJを呼んで、クオリティーの高いイベントをやろうと思って、「Addiction」というパーティーを渋谷のSimoonで隔月にオーガナイズしているんだけど、4月にはディラン・ライムズを招く予定なんだ。でも、ゲストDJだけでなく日本にいるDJのフィーチャーにも力を入れたいと思っている。特にDave TwomeyとかMoments of Truthとかはもっと使いたいし、もっと日本人DJを入れたい。僕のイベントはヨーロッパのシーンを知ってる外人の来場者がすごく多いんだけど、今年は日本人にももっと「Addiction」の音を知ってもらいたいと思っている。可能なら、クラベリアやブランニューメイド、サイバージャパンなんかとも手を組んで、もっと日本のDJやクラブシーンを盛り上げたいんだ。僕が思う日本のシーンの問題は2つ。小さなレーベルがあまりないことと法律が厳しいこと。この2つをなんとかしないといけないよね。 個人的には、2005年はもっと楽曲制作に力を入れていきたいと思っている。先日も日本の某広告代理店に依頼されてフランスの無名ポップスターの曲をリミックスしたところ、さまざまなDJ/アーティストのリミックスが収録されたコンピレーションCDに使われたんだよ。実はほかにも、いますごく有名なアメリカの男性ポップスターのリミックスを手がけているんだ。これは本当にまだ公表できないんだけど、3月にリリースされる予定の彼の新アルバムに収録されるはずだよ。

当面の目標は、オーシャンズ11のサントラを手がけたDavid Holmesがやったような、けっこうオールドスクールなファンキーな曲のリミックスを手がけるってこと。あと、ほかにも、たとえば70年代のロッド・スチュアートの「Do You Think Im Sexy?」のリミックスとか、さまざまな曲のリミックスを作っていて、すごくかっこいい仕上がりになった。きっと、クラブでかけたらすごく受けると思うので、楽しみにしてて!

最後に読者にメッセージ? うーん。人生は短いから、とにかく毎日楽しんでください。他のヒトが成功したらそれを称え、常に自分も成功できるようにがんばれば何かしら結果はついてくるから、毎日前向きに楽しみながら生きて行くこと、これが一番大切だよ。後今年も投票してください!