M-Swiftとして、デビュー以来4年で、『Morning Light』 『Evening Sun』 『Sunshine of Love』と3枚のアルバム、勝手に自分でM-Swift初期3部作って呼んでいるんですが(笑)、さらに24 CARAT名義、Marcus Beggとのコラボアルバムを入れると、フルアルバム5枚、リミックスその他含めると8枚のアルバムを出してきて、正直ちょっとリセットしたかったし、新たなことにトライしたかった。
そんな時、今年の年始に映画「WORKING HOLIDAY」のサウンドトラックの話をいただき、これはいいぞと非常に新鮮な気持ちで臨めたんです。製作期間は今年の1月、2月。初演は今年3月の沖縄映画祭で、映画はもちろん、音楽も評判がよくて、サウンドトラックリリースの運びになりました。
さらに、それと並行して次のM-Swiftのアルバムの方向性をさぐるべく、新曲の録音を進めていたんですが、それも収録しようという話になり、さらに以前から進めていた僕のジャズプロジェクト24 CARATファーストアルバムの未収録楽曲を含む完全版のリリースも合わさり、最終的には2枚組で僕のワークス集という形でのリリースになりました。なんか休めない運命なのかもですね。
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実はこのレコーディングにもドラマがあって。なかなかのスケジュールで、詩とメロディーができたのがなんと前日。Nick、Elisabeth、僕のスケジュールのこともあり、収録に使えるのはたったの3時間。さらに渋滞で2人の到着が遅れ、残り2時間。大丈夫か?とスタッフも不安そうでした。前日に曲ができるって、彼女にとってはスタジオで初めて楽曲を聞くような状況なんですね。スタジオに入り、30分ほどスタディーしたあと、エンジンがかかり歌い出した時は、スタジオ中に拍手が起こりました。ざっと3テイク。コーラスを重ねて、それもほぼ1発で終了。さすがのキャリアと実力。30分余ったので、コーヒー飲んでました。
あと、僕のスーパーブロークンイングリッシュを世界でただ1人一字一句たがわず理解できるNickの存在も大きかったです(笑)。 僕は、リミックス運がいいんですよ。これまでJazztronik、MAKOTO、Spirit Catcher、Tiger Stripe、4 Hero、福富幸宏などさまざまなアーティストにリミックスをお願いしましたが、全て当たりリミックス。僕自身の他のアーティストのリミックスをするときにやっぱり歌素材がメロディーがしっかりしているとやりやすい。そういう意味では、僕の曲はボーカリストがトラックの上でパフォーマンスしているというよりは、しっかりメロディーなので、リミキサーもそこを軸にしっかり自分の世界観を表現してくれているというか。とにかく、すばらしいリミキサーに出会えているわけです。
今期のBrisaリミックスですが、今度彼がBrisa presents Omnic名義でダブステップアプローチの新曲をリリースするんですが、それを聞いた時に絶対にお願いしようと思ったんです。ダブステップなどの新しいアプローチを取り入れつつ、しっかりフロアでかけられるリミックスにしてくれました。Kai&Kyleは韓国、そして中国のアーティストの2人組なんですが、このトラックでベースを弾いているのは、M.A.Wの多くの作品に参加しているGene Perezなんです。Newyorican Soulの名曲Runawayも彼ですよね。世界は狭くなったというか。とてもソウルフルで、これはどこでプレイしていも盛り上がるリミックスに仕上げてくれました。リリースツアーでのどのバージョンをプレイしようか本当に悩みますね。オリジナルも含めて3バージョン、3枚使いでプレイしようかな。 それはもちろん、映像、ストーリーという主役がいるなかで、自分の引き出しからどうしようかいろいろ考えました。台本を繰り返し読んで世界観をつかんで。監督の岡本さんと打ち合わせを重ねて。岡本監督は非常に音楽にも造形が深くて、イメージの話だけでなく、しっかり音楽の言葉で話してくれ、いろいろアイデアが膨らんでいきました。
メインテーマは何度か書き直した甲斐もあって、4分弱の間に山あり谷ありの展開を作る事ができました。ストリングスで始まって、テーマがあり、さらにパーカッションソロ、さらにブラスセクションでの展開。
まるで映画の台本に沿っているかのようなストーリーのある展開になりました。実はこれ、監督からのリクエストだったんです。最初のテーマメロディーができた時に、僕的にはできた!感があったのですが、監督から、さらに映画のストーリーのような展開をとリクエストがあり。1番時間を使ったところなんです。結果的にこの仕上がり。おかげさまで僕個人としても音楽家として一皮向けた曲になりました。全体的に、非常にクリエティブで楽しい作業でしたね。 僕自身、年間150本ぐらいは映画を見るんです。こてこてのアクション映画から、ヨーロッパ映画、もちろん日本映画も。なので、影響を受けてないはずがない。そして、24 CARATなどのインストものは僕の頭の中では曲と一緒に映像も浮かんでいるんです。僕の音楽はもともと叙景的な音楽なんです。今回のラストテーマは、映画「イル・ポスティーノ」や「ニューシネマパラダイス」に出てくるような美しい風景を思い浮かべながら作りました。
そんな僕の趣味もあり、プレパーティーでは僕も含めて、出演DJ全員、映画音楽を織り交ぜてプレイしてもらいました。楽しかったですよ。今回CDで解説をお願いしている小川充さんには、膨大なコレクションから映画音楽だけのスペシャルDJセットをお願いしたり。レコードカルチャーの奥深さを感じました。
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