INTERVIEWS

Mark Barrott

DJ HarveyやQuiet Villageなどのリリースにより、バレアリックシーンに一大旋風を巻き起こしたレーベルInternational FeelのボスMark Barrott。2014年の夏にリリースしたアルバム『SKETCHES FROM AN ISLAND』は世界中から絶賛され、その後のニューエイジ/バレアリックシーンの潮流を決定づけたことも記憶に新しい。その彼が、人気アルバムシリーズ第2弾『SKETCHES FROM AN ISLAND 2』を7月13日(水)にリリース。本アルバムの制作環境や現在のライフスタイル、International Feelの今後の方向性などについて、彼に話を聞いた。

Text : Yu Onoda
Translator : Megumi Wakatsuki

 

 

 
僕にとってのイビサは、人々と田園地帯、降り注ぐ陽光、魔法が感じられるようなムード……そんな魅惑的な土地だね。


ーーMarkは、イギリスのシェフィールド出身と伺いました。その後、現在の拠点であるスペインのイビサ島に至るまでの足跡を振り返っていただけますか?
2000年に故郷であるイギリスのシェフィールドを離れ、ベルリンに2年間住み、次に北イタリアにわたり、そこで3年間暮らしたんだ。そして、再びベルリンに戻った後、ウルグアイのプンタ・デル・エステを経て、スペインのイビサ島にやってきた。最初にイギリスを離れた時、スタジオも移転する必要があったんだけど、テクノロジーの発達というのは素晴らしいもので「スタジオ丸ごと一軒」を1台のパソコンの中に収めることができた。だから、パソコンとインターネット接続によって、世界のどこにいても音楽制作が可能になったんだ。そして、イタリア在住時に、世界中のホテル、たとえばパークハイアット東京のような高級ホテルの音楽環境を整えるプロジェクトに携わったことをきっかけに、音楽コンサルタントのビジネスを始めた。その時期は世界中を飛行機で500フライトかけて回ったかな。本当に多くの国々を訪問したし、そのコンサルタント業務は本当に楽しくて、心躍るものだったんだけど、今はイビサというひとつの場所に留まっていることや、新たな音楽制作を精力的に行えていることにとても幸せを感じているよ。

ーー『Sketches From An Island』シリーズは、あなたが身をおいているイビサの環境や日々の生活が大きく影響している作品だと思います。遠く離れたイビサは、日本において、トレンドが目まぐるしく移るクレイジーなパーティーアイランドとして脚光を集めているのですが、あなたが魅了されているイビサとはなんでしょうか?
イビサの“クレイジーさ”というものは、この島の1年間におけるわずか数ヶ月間のみの、本当に小さな部分的なものなんだ。イビサ全体がクレイジーだと考えるのは、言ってみれば、日本全体を東京そのものと考えるのと同じことだよ。僕は、島の北部の人の少ない静寂で平穏な、そして豊かな自然に恵まれた田園地帯に住まいを構えているんだ。僕にとってのイビサは、人々と田園地帯、降り注ぐ陽光、魔法が感じられるようなムード……そんな魅惑的な土地だね。

ーーそんな素敵な環境のもと、どんな日常があり、またどんな制作環境や手法で制作が行われたんでしょうか?
現在僕はきちんとしたスタジオをもってなくて、家族全員がいる部屋で、パソコン、キーボード、ギター、ヘッドフォンを用いて音楽制作をしているんだ。制作している音楽は、暗い部屋のなかでは生み出すことができないものであるから、部屋に気持ちいい陽の光が差し込むような環境で制作しているよ。そして、僕が制作している音楽は「Life music」であるとも思っている。なぜなら、自分が制作しているような音楽は、みんなが人生を過ごしていくうえで必要なものだと考えているから。それから今は、人々の日常生活を映画で例えるなら、その映画のサウンドトラックに位置づけられるようなフォークミュージック(民族音楽)を制作しているところだよ。
 

 

 

 
落ち着いたダウンテンポの音楽を作る際の「状態」が自然なものなんだ。



ーー収録曲やレコーディングにまつわる面白いエピソードがあれば教えてください。
ファーストアルバムで成功を収めた後に、次の新しいアルバムの構想を練り始めた時のことなんだけど、頭のなかに浮かんだリズムのイメージを実際に楽器を使って演奏し、その後にまたそれを脳内でアレンジしてそれを再び楽器を使って演奏する、という方法を繰り返し行ったんだ。この脳内再生と実際に演奏をすることの繰り返しによって、音楽がまるで溢れ出るような状態で制作されたんだ。この技法は非常にシンプルなものであるけれど、僕にとって音楽を生み出す上での大切な技法となった。

ーーアルバムには収録されていませんが、「Bush Society」や「Cascade」といったシングルはアルバムとも相関関係にあるダンストラックになっています。あなたにとって、音楽的に今もっとも興味のあるフィールドや試みはなんですか?
僕にとっては、落ち着いたダウンテンポの音楽を作る際の「状態」が自然なものなんだ。時折、ダンスフロアでプレイできるような曲が生み出されることもあるんだけど、通常はリラックスできるような音楽を制作しているよ。今興味を持って取り組んでいるのが、432Hzのヒーリングミュージック、座禅のための曲、「存在」を確認するための曲だね。

ーーあなたにとって、心から癒やしが感じられる音楽とは?
じつはあまり音楽を聴かないんだ・・・・。それより僕は、オーディオブックや座禅から癒しや安らぎを得ているよ。

 

 

 

 
「未来」というのは、その「今」という瞬間の積み重ねによって展開されるものだと思うんだ。



ーー近年、素晴らしい作品もたくさんリリースされていますが、かつて『Cafe Del Mar』がブームとなって消費されたように、表層的に“バレアリック的な”サウンドスタイルを模倣した作品がたくさんリリースされ状況は混沌としています。あなたにとってバレアリックミュージックとはなんでしょう?
僕にとって、バレアリックミュージックやイビザミュージックとは「窓枠」のようなものというか、「向こう側」から窓枠越しにさまざまなものを与えてくれる音楽だね。

ーーあなたが運営しているレーベルInternational Feelは、2009年のスタート以来DJ Harveyの復帰作をはじめ、その作品クオリティの高さから総計10万枚以上のセールスを上げているとうかがっています。個人で立ち上げたレーベルを含め、レーベルが無数に存在する昨今、あなたが考える理想のレーベルとはなんでしょうか?
完璧なレーベルとは、まずそのレーベルに所属しているアーティストありきと定義するレーベルであり、なおかつアーティストの視線に立ってアーティストの存在を見据え、そのアーティストが制作したいものを考えてくれるレーベルだと思う。また、レーベルには作品の詳細に注意を払い、その作品の確固たるアイディンティティを確立させる責務がある。そういった姿勢をもつレーベルが理想的なレーベルだと思うね。

ーー近年、International Feelでは日本が世界に誇るGonnoをはじめ、さまざまなプロデューサーによる素晴らしいダンストラックがリリースされている一方で、Len Leise、CFCF、Wolf Muller & Cassらによるサウンドアートやリスニング指向の作品も増えています。レーベルの方向性や今後のプランについて教えていただけますか?
近年、僕は座禅を集中的に行っているんだ。自分のルーツ、もって生まれた資質、そして「現在」について、座禅での規則的に繰り返している呼吸から考えることができるね。そこには、過去も未来も存在しなくて、「今」という瞬間だけがある。「未来」というのは、その「今」という瞬間の積み重ねによって展開されるものだと思うんだ。だから、僕は座禅を通じて、自分が今いる地点から今後のプランや方向性を垣間見たり、考えたりしているよ。
 

 

 

- Release Information -
タイトル:SKETCHES FROM AN ISLAND 2
アーティスト:Mark Barrott
リリース:7月13日(水)
レーベル:International Feel/Music 4 Your Legs
価格:3,024円

[トラックリスト]
1. Brunch With Suki
2. Over At Dieter’s Place
3. Driving To Cap Negret
4. Winter Sunset Sky
5. Distant Storms At Sea
6. Cirrus & Cumulus
7. Der Stern, Der Nie Vergeht
8. Forgotten Island
9. One Slow Thought

■リリースページ
http://www.clubberia.com/ja/music/releases/4762-SKETCHES-FROM-AN-ISLAND-2-Mark-Barrott/
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