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日本のダンスミュージックシーンを盛り上げたい! SATOSHI TOMIIE、グローバル視点でのメッセージ

取材・文:yanma(clubberia)
協力:HITOMI Productions

 

 日本のダンスミュージックシーンに特化した国際カンファレンス「Tokyo Dance Music Event」(以下TDME)が11月30日(木)から12月2日(土)の3日間にわたり開催される。連載3回目は、次世代エレクトロニック・クリエイターオーディション「INTERLUDE from TDME」の特別審査員として参加するSATOSHI TOMIIEにインタビューを行った。
 
 
 
 
ーーまず、ダンスミュージックに特化した国際カンファレンスについてどのような見解を持たれていますか?
 
メールや電話でなく直接会って話をすることや場を共有することは、どんな業種でも重要だと思います。名前だけは知っているけど、会ったことがない。特にネットの普及以降はそうなりましたよね。でも、こういったイベントから曲がブレイクすることもありました。WMC(Winter Music Conference)に関して言うと、アメリカサイドでもヨーロッパサイドでもシーンの発展に寄与したところが大きいと思いますね。
 
ーー日本でダンスミュージックに特化したカンファレンス「TDME」がスタートしたのは去年ですが、「TDME」に期待することは何でしょうか?

昨年の「TDME」のBOILER ROOMをいくつか見たんですけど、東京ならではのアーティストが出ていて面白かったですね。日本のアーティストがヨーロッパなどで面白いと思われているところもあるので、どこまで発信していけるかに期待しています。世界中でダンスミュージックが盛り上がっていますが、やはり現在の多くのアーティストやインダストリーの活動拠点などはヨーロッパだったりするので、東京に12時間かけて行く価値をどう作っていくのか、それをどう工夫するのかも興味深いですね。WMCはマイアミだからそれほど遠くなく、まだ寒い3月に暖かい場所で交流を深めることができる。ADE(Amsterdam Dance Event)はエレクトロニックミュージックの盛んな域内にあるからアクセスがいいし、仕事に集中しやすい。ものすごく簡単に代表的な2つの国際カンファレンスの特色を言いましたが、盛り上がっているカンファレンスだと遠くからも人が集まってくる。その中で東京は参加者にどう価値を見出してもらうかが興味深いですね。東京は間違いなくアジア域内で一番のエレクロニックミュージック文化があると思うので、「TDME」が続くことによってこの極がますます影響力があるものになっていくことを期待しています。
 
ーーツアーで各国周られて現在面白いと思う都市を教えてください。

最近みんなが声を揃えて言うのは、ポルトガルのリスボンですね。ベルリンはクールを少し超えてしまった感があると言ってベルリンからリスボンに引っ越す人が最近増えていると聞きます。これからどうなっていくかはわかりませんが、かつてのニューヨークもそうだったように、クラブシーンが盛んになる場所っていいクリエイターが多いように昔から思っています。なので、いいクリエイターが移住してしまって才能が流出してしまったりすると、クラブシーンそのものから発信するものが少なくなってくる。そうしたパターンはいくつか見てきました。
 
ーーでは日本でアーティスト活動をするのであれば、東京と地方、どちらが良いと思いますか?

あんまり関係ないと思います。その人の才能と言ってしまえば身も蓋もないのですが(笑)。ただ、DJをやりたいとかであれば、東京のほうがいいとは思います。DJのキャリアを積みたいのに、クラブが少ないところで活動するのは大変ですよね。加えて言うと作っているものがクラブミュージックである以上、DJの好み、例えばイントロの感じとかをある程度理解しやすい環境にいたほうがいいとは思います。

昨年のTDME内でBOILER ROOMとコラボレーションして開催されたパーティーの様子


ーー日本に帰国する際によく関係者から耳にすることは何ですか?

正直あまり盛り上がっていない、というような話を聞きますね。僕は、日本に住んでいないので何かを言えるわけではありませんが、僕らがクラブで遊びだしたころの「よくわからないから、いろいろ見てみよう」的な感じがない時期なのかもしれません。週末になると当たり前のようにバーに行って、クラブに行く。それが今でも普通のヨーロッパなどと違って、日本でも昔あったそういう週末の普通の活動のクラビング文化が今の日本では失われてしまった時期なのかもしれません。でも、今たまたまそういう時期で、また戻ってくるのかもしれませんね。
 
——TDMEのオーディションで特別審査員として参加されますが、今、TOMIIEさんの琴線に触れる音楽はどのようなものでしょうか?
 
作品にもよりますが、あえて言うとしたら今は、少ないエレメンツでグルーヴが作られているもの、メロディーではないところでキャラクターがあるものですね。これは今、僕自身も挑戦していることです。今ってコンピューターで何でもできてしまいます。でも、何でもできるということは、とても不自由なんです。制限があると工夫をする。何でもできることは、クリエイティビティという面でインスピレーションが欠如してしまうように思っています。僕は、完全にハードウェアに回帰をしたんですけど、それもまた自分に制限を設けさせるためでした。
 
ーーでは、TOMIIEさんが音楽制作を始めたころは、どういった制作環境でしたか?

最初はカセットテープのマルチトラックですね。あと、ローランドの808や909などのドラムマシン。それにターンテーブルとハードウェアのシーケンサーやシンセでしたね。今は、同じ機材使うにしても当時に比べたらめちゃくちゃ便利ですよね。とにかくハードドライブレコーディングができる点が大きな違いかな。とりあえず何かをやって、後からコンピューター上でいじれますし。
 
ーー「TDME」のプログラムをひとつ自由にプロデュースできるとしたら、どのような企画をしたいですか?
 
音を出すワークショップがいいですかね。話すだけより、音を出しながら話したほうが楽しいと思うので。ただ音を出しても面白くないので、あらかじめ宿題を出して、それを持ち寄ってもらい何かを作るとか。
 
ーーこれまでの音楽人生で、誰かと熱い議論を交わした思い出はありますか?

しょっちゅうありますよ。今でもあります。みんないろんなサブジェクトに対していろんな考え方を持っていますから、今でもぶつかるし、面白いですよ。正解がないですからね。何がベストか? それは自分が信じていることが、その人にとっての真実なので。なんていうのかな、言ってみれば向こうが納得することもないし、自分も納得することもない。だから、どちらかが正しいということはないように思っていて、意見を交換するのが楽しいですね。例えば、「今出ている音楽がつまらないから俺は古い曲をかけるんだ」といった人もいるし、それに対して「古い音楽ばかり流していて飽きないのかな」と思う人もいますよね。僕は後者なのですが(笑)。でも、これにも正解はないじゃないですか。いろんな人の意見を聞くのは面白いですよ。

ーーTOMIIEさんが海外でよく名前を見たり聞いたりする日本人のアーティストは誰ですか?

田中フミヤ君、寺田創一さん、Kuniyukiさんの名前はよく見ます。あとは、DJ NOBU君、大槻君(Satoshi Otsuki)、袖山君(DJ Sodeyama)、Tomoki Tamura君、So Inagawa君かな。違うジャンルだったらもっといるでしょうけど、みんな頑張っているなと思っています。
 
——TDMEのオーディションに応募するクリエイターにアドバイスを送るとしたら、どんな言葉をおくりますか?
 
音楽がいいことは当たり前として、その先、重要になってくるのは人脈のように思います。東京で活躍したいなら東京の、世界で活躍したいなら世界との繋がりを作ったほうが早いです。そのシーンにいる人のほうが強いし、いいタイミングでいいところにいた人が強いと思うので。

ーー最後に、音楽と接するときの昔から変わらないポリシーを教えてください。

成功体験をリピートしないということですね。一回やったら前に進もうと。飽きっぽいっていう性格もあるのですが、新しいものにチャレンジしていくことが好きなんですよ。


 


 SATOSHI TOMIIEが特別審査員として参加する次世代エレクトロニック・クリエイターオーディション「INTERLUDE from TDME」の応募は下記より(応募締切は11月17日)
 
■INTERLUDE from TDME
https://www.clubberia.com/ja/features/tdme/
 
■TDME公式サイト
http://tdme.com/ja/