アナログサウンドの黄金時代を築き上げ、20年に渡りクラブミュージックの進化を見守ってきたAllen & Heath XONE:92が、新たな時代に向けて「XONE:92 Mk2」として生まれ変わった。100%アナログ設計による温かみのあるサウンド、伝説的な2系統のVCFフィルター、そして新搭載のサイレントスイッチング機能など、その革新的な進化は、世界中のDJたちの期待を一身に集めている。
現在は渋谷 WOMBで「TIME HOLE」を主宰し、過去にはTRESVIBESのメインアーティストであり、海外でも活躍するSatoshi Otsuki、サイケデリック・テクノシーンの革新者として世界を飛び回るLiquid Drop Groove主宰のYUTA、クィアレイヴ「SLICK」を主宰「AFTER LIFE」のレジデントDJとして実験的アプローチで東京のアンダーグランドミュージックシーンを牽引、近年ではベルリン「BERGHAIN」でもプレイ経験があるMari Sakurai、そしてModestを主宰し国内若手屈指のスキルを誇るSAKUMA。4名の気鋭アーティストたちが、この最新鋭機が持つポテンシャルを探究。アナログミキサーの新たな地平を切り開く、渾身のテストプレイしたレポートをお届けする。
Satoshi Otsuki (Time Hole)
日本の福島県出身。15年以上 WOMB でレジデントを務める彼は日本国内にとどまらず、2009年よりヨーロッパを舞台に活動。そして、現在ではイビサ DC10で開催される Circo Loco の常連となる。2016年には Boiler Room にも出演。2017年にはスペインのレーベル Isla Records より、UNIT との共作”Hikari EP”をリリース。2022年よりTime Holeを始動。
ーこれまでの活動の中でAllen & Heath Xoneシリーズの使用歴や、Xoneシリーズへの印象を教えてください。
初めて使用したのは17年くらい前です。
Allen & Heath Xoneの持つフィルターに特化した操作性に、当時それまでのDJミキシングのスタイルが変わるほど衝撃があったのを覚えています。それまでのグルーヴへの革新があったと感じました。
ーMk2になったXone:92を触った印象はいかがでしたか?
第一の印象は音質でした。
全体的に締まった音が前にしっかり出る感覚。Allen & Heath Xoneが提示する現代のハイファイサウンドは、Vinylを使用する上でもその特徴がしっかり出るので、データとVinylの音のバランスも良く、プレイする上でとてもフリーな感覚でした。その中で前に出る低音の特徴がとても気に入っています。
ミキシングに関して大事な、リニアカーブの対応、フィルタースイッチONのままでも音圧が変わらない部分などのアップデート箇所も大事な部分です。
YUTA (Liquid Drop Groove)
10年を超えるトランスキャリアで多くの功績を残し、2015年よりテクノに転身。2016年にLiquid Drop Grooveを発足、楽曲リリースやPodcast、動画配信、NESSと始めたバイナル専門レーベルTGPXLDGの他、AgaitidaやEDENといった記憶に残る野外パーティ、屋内型フェスSPECTACLE、海外レーベルとのコラボシリーズでBassiani Tokyoなど、レーベルの可能性を最大限に引き出すアプローチは多岐に渡り、類を見ない唯一無二のテクノレーベルとして国内の中核を担う。昨今はアジアを中心にツアーを重ねるなか、ベトナムや香港のシーンと密接になり、特にベトナムのハノイSAVAGEやホーチミンThe Observatoryとはダナン拠点のフェスJaponismを経由して強固な関係を築く。東京においては、VENTにて全表現の主軸となるLDGのレーベルショーケースを展開する他、ENTER(ex Contact)では由緒正しきディープテクノPendulum、MITSUKIにてミニマルとテクノのミクスチャーRed Lightning、三つのレギュラーパーティを持つ。
メインアクティビティのDJはテクノを土台に、ハウス要素がブレンドされたトライバルやアシッド、時にヒプノティックでトランシー、時にブレイクやベースを挟み、縦横無尽が生み出すサイケデリックなグルーブとシネマティックなプレイを持ち味とする。過去にアジアはタイWonderfruitのQuarry Stage、ベトナムの洞窟フェスEquationとRetreat、中国各地や香港、ベトナム等のクラブ、ヨーロッパではトビリシやポルト、ベルリンなどのクラブ、クロアチアMODEMやハンガリーOZORAといったフェス、日本ではrural、MOMENT等に出演。NTS Radioの他、世界のマニアックな層に届けるPodcastにもDJ Mixを提供、モジュラーの名手である奇才O-MAとのトラックメイクなど、YUTAは東京から世界に向け発信する異端児の一人だろう。
ーこれまでの活動の中でAllen & Heath Xoneシリーズの使用歴や、Xoneシリーズへの印象を教えてください。
Allen & Heathとの出会いは10年以上前、使用歴はXone 92と96になります。92を触り始めた当時の印象は、MIDが二つあるし、ヘッドホンモニターのスイッチオン/オフの操作が他メーカーとは大きく異なるので、衝撃を覚えました。その後、自身の音楽がテクノになり耳心地が変わり出した頃に再度Xone 92を体感してからは、緻密なミキシングができるマシーン、柔らかくも太いサウンド、という印象に変わりました。個人的には一周してやっぱり92が好き、現場でセットアップされていると何だか安心します。笑 テクノシーンにおいて絶対的な存在なのも頷けますよね。
ーMk2になったXone:92を触った印象はいかがでしたか?
フィルターの操作性が格段に良い、綺麗に入るので楽しいです、暴れ馬が躾されたような感じでしょうか。笑 その反面、RESとLFOの掛かり方がパワフルになっているので、フィルターでかなり遊べそうです。
何よりも、Mk2は縦フェーダーが抜群に良くて、Allen & Heath史上で最大の変化だと思う、今まで以上にロングミックス向きの仕様に改善されています。メモリ8くらいでドッと入るオリジナル機に対して、Mk2はその引っ掛かりがなくなりメモリ1または2からスムーズにミックスされるのが大きな特徴。もちろん、このカーブの程度も好みに設定できるので、従来オリジナル機の機能も残しつつ、アップデートされた側面を併せ持つ万能型に仕上がってます。
Mk2は、Xoneシリーズがアプローチしてきた音像はそのままでありながらもハイファイサウンドに寄せていて、微細な動きに対しても表現力が高まった姿はまさに一級品であり現場向き。DJブースで対面できる日が今から待ち遠しいです。
また一つ、世界中で愛される素晴らしい名機の誕生と言えるでしょう!
Mari Sakurai (SLICK / AFTER LIFE)
東京を拠点に活動するDJ。
テクノを軸とし、実験的な要素を取り入れながら力強くスリリングな展開を見せるプレイスタイルと、現場主義者としての視点を空間演出に反映させる姿勢で、東京のダンスミュージックシーンを切りひらく存在としての地位を確立している。
国内外のアンダーグラウンドなイベントから野外フェスティバルまで幅広いステージで精力的にプレイを展開し、〈Rinse FM〉、〈NTS Radio〉、〈Refuge Worldwide〉、〈The Lot Radio〉などのPodcastにmixを提供。
2024年には、ベルリンの名門クラブ〈Berghain〉に初出演を果たし、同年10月に再出演した。
また、オーガナイザーとしての一面も持ち、2020年からクィア・レイヴ〈SLICK〉を始動。
2022年からは、〈翠月-Mitsuki-〉で唯一のレギュラーテクノパーティー〈AFTER LIFE〉のレジデントDJを務める。
2023年からは、Alarico、Ignez、Phillipa Pacho、Blue Hour、Quelza、GiGi FM、Altinbas、MARRØNなどの著名アーティストをゲストに迎え、東京のシーンにおける新時代のダンスミュージックを探求し提唱するパーティー〈KILLIAN〉を共同主催するなど、多岐に渡り活躍している。
- これまでの活動の中でAllen & Heath Xoneシリーズの使用歴や、Xoneシリーズへの印象を教えてください。
私のDJ活動において、Allen & HeathのXoneシリーズは常に信頼の置ける存在です。特にXone:92は、その柔軟性と音質の高さから、これまで多くのクラブやフェスで使用してきました。EQの細やかなコントロール性能や滑らかで奥行きのある出音は他のミキサーにはない魅力で、テクノやハウスといったジャンルをプレイする際に、トラックの表現力を大きく広げてくれます。クラブシーンで定番として愛される理由が実感できる、安心感のある機材です。
- Mk2になったXone:92を触った印象はいかがでしたか?
Xone:92 Mk2を初めて触った際、従来モデルの良さを継承しながら、細やかな改良が施されていることに驚きました。特に印象的だったのは、縦フェーダーに搭載された3パターンのチャンネルカーブ切替スイッチで、プレイスタイルや好みに応じた調整が可能になった点です。フェーダーのストロークが長くなったことで、ロングミックスでのグルーヴコントロールがよりスムーズになり、精度が高まりました。
また、ヘッドホンモニターの音質がより現場仕様に進化しており、細かな音のニュアンスが掴みやすくなったのも印象的でした。
従来の「アナログらしさ」を保ちながら、現代のプレイニーズに応える進化が実感できる素晴らしいミキサーだと思います。
Sakuma (Modest)
SAKUMAは、優れた洞察力で変化する空間と時間の流れを巧みに掌握し、セットを通じて独自性の高いストーリーを描くDJである。緻密なミキシングで音のグラデーションを活かしながら、時に躍動感あふれるアプローチを織り込み、フロアの焦点をひとつに整えていく腕前は国内でも随一。この揺るぎないスキルは、様々な環境下でプレイしてきた経験によって会得したものである。
地元・新潟でキャリアを始め、2015年以降は東京を拠点としながら、WOMB、VENT、Contactなど都内の大小様々な主要ベニューから、rural、Re:birth、Liquid Drop Grooveなど国内屈指のフェスティバルに至るまで幅広く活躍。また2017年から定期的に開催し、現在はWOMBを拠点としている主宰パーティー 『Modest』では、これまでにDJ NOBUやEric Cloutier、Valentino Moraなどと渡り合い、彼の存在感を示す大きな因子となっている。そして2023年には、10年以上かけて培ってきた実力を高く評価され、国内最高峰のパーティー『FUTURE TERROR』にも連続して出演。他とは一線を画するそのセンスは、東京を代表するDJとして厚い信頼を得ている。
- これまでの活動の中でAllen & Heath Xoneシリーズの使用歴や、Xoneシリーズへの印象を教えてください。
長らく現場でXone S2、92、96を使用。 独特のEQのキレや混ざり具合はXoneならでは。 その場に合ったプレイがし易く、好んで使用しています。
従来の92特有の温かみと96のハイファイ感が融合し、個人的に"コレが欲しかった!"という絶妙な部分が見事に解消されました。 92独特のフェーダーカーブも3種選択出来るようになり、精度と操作性がアップグレードされ、より繊細なミックスが可能となりました。
20年の歴史を持つXONE:92は、その独特のアナログサウンドとフィルター機能で、多くのDJたちを魅了してきた。今回、4名のアーティストによるXONE:92 Mk2のレビューから浮かび上がってきたのは、従来の特徴を継承しながらも、現代のニーズに応える形で進化を遂げた姿であろう。
クラブやフェスティバルのスタンダードとして長年君臨してきたXONE:92。その血統を受け継ぎながら、現代のDJプレイに求められる性能を追求したMk2は、まさに新時代のスタンダードとなる資質を備えていると言えるだろう。
Allen & Heath Xone:92 Mk2
4+2 チャンネル アナログDJ ミキサー
販売価格:¥245,000-税別
詳細はこちら
クラブシーン新時代の幕開け
Allen & Heath Xone:92は、クラブ・ミュージック史における時代を定義してきました。そして今、新たなスタンダードを打ち立てるためにシーンに再臨します。アナログ機器ならではの暖かみあるサウンド、精密なコントロール、時代を構築した信頼性-次世代のアンダーグラウンド・イノベーター、そしてビッグルームのスターたちのために進化を遂げ、新時代を切り拓きます。
主な特徴:
- フォノ/ライン4チャンネル+ マイク/ライン2チャンネル
- 100%のアナログ回路とミックスバス・サミング
- サイレントスイッチによる2系統のアナログフィルター
- 精細な4バンドEQコントロール
- スムーズなミキシングを提供するカスタムmini innoFADER® Pro
- ブラックライトで映えるアップデートしたストームグレー・カラーリングの筐体シャーシ
- 新搭載の3段階、チャンネルフェーダー・カーブ・スイッチ
- チャンネル1-4の入力レベルとソース・マッチングのアップデート
- 操作性を向上したXone:VCFの改良
- アナログレコードの再生能力を向上させるRIAA プリアンプのアップデート
クラブシーンを象徴するXone:92のレガシーをベースに、サイレントVCFスイッチング、新しいカスタムinnoFADER®クロスフェーダー、そして92のDNAを受け継ぎながらパフォーマンスを向上させる精密なアップグレードを果たした次世代機の登場です。
クラブシーンを象徴する92 サウンドとリファイン
20年にわたり、Xone:92はそのアナログ設計によるサウンドと革新的なパフォーマンス性能でダンス・ミュージックのサウンド・スタンダードを確立してきました。
新しいXone:92は、DJやクラバーが愛してやまないその象徴的なサウンドを、オーディオ・パスに妥協のない最新の高性能アナログ・コンポーネントを搭載して提供します。
クラウドを感動させる低音、切り裂くような高音、そしてデジタルにはないアナログ機器特有の暖かさを体験してください。小規模クラブシーンから大規模なフェスティバルまで、フィジカルなレベルでオーディエンスとの融合を実現します。
ブース用の設計
新しいXone:92は、クラブ、フェスティバル、そして過酷なツアーにも耐えられるよう、頑丈に設計されています。
クロスフェーダーは、業界屈指のミニinnoFADER Pro®にアップデート、オリジナルの92フェーダーのカーブにマッチするように調整され、よりスムーズで正確、耐久性に長けた新しいミキシング体験を提供します。
新しいXone:92は、クラシックなストームグレイのカラーリングを刷新し、ブラックライトなど低照度下での視認性を向上させるUVプリントのアップデートが施されています。主要なコントロールの視認性を高め、人間工学に基づいた凹型のフィルター・スイッチとXFadeアサイン・スイッチでミキシング操作とパフォーマンスを繋ぎ、オーディエンスとDJブースとの繋がりをより強固なものに昇華します。
唯一無二、伝説のフィルター
2004年、Xone:92フィルターのリリース以前と以後でクラブシーンの時代は一変。20年経った現在でもベンチマークとされており、新しいXone:92はさらなる進化を果たします。
アップデートされた新搭載フィルターは、92の伝説的なフィルター・サウンドを維持しながらも、パフォーマンスに最適化されたコントロール・カーブにより、DJとオーディオエンスはその周波数精度の向上を体感するでしょう。サイレント・フィルター・スイッチングにより、シームレスな切り替えが可能になり、強化されたレゾナンスで、DJプレイングの新たな次元へクラウドを誘います。
究極のアナログEQ
多数存在するDJミキサーの中でもXone:92だけが誇る高精度アナログEQは、サウンドを正確にシェイプし、ミキシングにクリエイティブな表現をもたらします。
6つのステレオ・チャンネルすべてに、Xoneシリーズ定評の4バンドEQを搭載し、HF帯とLF帯のトータル・キルと高域と低域、二系統のミッド周波数コントロールによって、極限までサウンドを手繰り寄せることが可能です。
チューンアップされた高精度プリアンプ
Xone:92フォノ・プリアンプは、サウンドの微粒子に迫る特別に調整されたRIAAカーブと、アナログとデジタルのソースを境界を取り払うために改良されたLine/Phonoソース・マッチングにより、レコードプレイのサウンドをアップデートさせるほか、多様な音源との同時再生においても最高の結果を提供するためにデザインが施されています。
クラブシーンのアイコン
Xone:92はあらゆる機器や音源ソースを取り込む、汎用性の高い6チャンネル・アナログ・ミキサーで、どんな環境にも響き渡る暖かくパンチのあるサウンドを特徴としています。
他の追随を許さないサウンド・クオリティ、堅牢な構造、ミックスエンジニアリングと人間工学に基づく操作性の提供により、92は世界のトップDJのライダーに指定され、イビサのスーパー・クラブからマイアミのビーチ・バー、ベルリンのアンダーグラウンド・クラブからロンドンのウェアハウス、渋谷のクラブエリアに至るまで、世界中のDJブースのマストアイテムとなっています。