欧州最大級にして世界最大級のジャズフェスティバル「Montreux Jazz Festival」
まず、本題に入る前に「Montreux Jazz Festival」について説明を。「Montreux Jazz Festival」は、スイス・モントルーのレマン湖のほとりで開催されていて、今年で49年を迎えたフェスティバルです。開催期間中は25万人もの人が集まることもあり、欧州最大級にして世界最大級のジャズフェスティバルとして知られています。また、世界三大ジャズフェスの一つとも称されいてもいます。ちなみに残り二つは、Newport Jazz Festivalニューポート・ジャズ・フェスティバル/1954年~/アメリカ)、Monterey Jazz Festival(モントレー・ジャズ・フェスティバル/1958年~/アメリカ)。そんな、「Montreux Jazz Festival」が東京で開催されるということは、今年のトップトピックスの一つなのです。
ジャズフェスティバルでもPsychemagikやEddie C、Mala & Cokiなどクラブ系アクトも出演!この幅広さが最大の魅力
「ジャズフェスティバル」と聞くと、スタンダードなジャズのイメージを持つかもしれませんが、「Montreux Jazz Festival Japan 2015」の場合は、ラインナップが非常に幅広いのが特徴的です。これは、本国スイスの「Montreux Jazz Festival」も同様。実際に今年7月に開催されたスイスの「Montreux Jazz Festival 2015」では、The Chemical Brothers、Lady GaGa、D'Angelo And The Vanguardの出演やÂme、Hudson Mohawkといったクラブ系アクトも出演しています。もちろん、ジャズフェスティバルなのでHerbie HancockやChick Coreaといったジャズ界の巨匠たちも多く出演しています。これは、ジャンルとしての「ジャズ」に固執するのではなく、ジャズという音楽が持つ自由さや、そのスタイルを「ジャズ」として捉えていることが大きいのでしょう。 その“本家モントルー”のスタンスが踏襲されているので、東京開催も幅広いラインナップが組まれています。特にMala & Cokiが出演する都内屈指のベースミュージックパーティー「DBS」とのコラボレーションがその最たるものでしょう。しかし、Malaと「Montreux Jazz Festival Japan 2015」に出演するクラブジャズのキーパーソンGilles Petersonとの関係をみれば、そう不思議ではありません。Malaは、Gilles Petersonとキューバの首都ハバナにGillesの作品『Havana Cultura: The Search Continues』用のレコーディングを行うため同行しています。そして、MalaはGillesの作品とは別に、スタジオの廊下で別レコーディングをして作りあげたアルバムがあります。それが、2012年にリリースし、ベースミュージックとキューバ音楽を見事に融合し高い評価を得た『Mala In Cuba』です。今回、GillesとMalaが同じステージに立つことはありませんが、「Montreux Jazz Festival」の名の下、東京でラインナップされているのは、ひとつの奇跡かもしれません。
また、10月2日(金)にLIQUIDROOMでは、冒頭に紹介した「Rainbow Disco Club」が開催されます。この公演で特に注目したいのは、良質なエディット作品を2000年代の終わりよりリリースし、今年は「Fuji Rock Festival’15」にも出演したPsychemagikでしょう。大のレコードコレクターとも知られる2人が揃って来日するのは初めてなので、どんなレアトラック群で踊らせてくれるのか非常に楽しみですね。また、<Crue-L>や<Endless Flight>といった日本のレーベルからもリリースするほか、来日経験も豊富でファンキー且つ安定感抜群のプレイが人気のEddie Cにも注目です。そして、全プログラムを通して外国人アーティストが多いなか、メインフロアでパフォーマンスを行う日本人アクト、grooveman spotとsauce81による77 KARAT GOLDのライブも見逃せません。
アシッドジャズ好き、グッドミュージック好きがオープンからクローズまで楽しめる一夜
10月10日(土)にUNITで開催される「ARBAN Club」。この日のラインナップは、90年代初頭を彩ったアシッドジャズブームの真っ只中にいた読者には、Gilles Peterson、Earl Zinger、松浦俊夫(HEXとしての出演)のクレジットを見ると、はずせない内容となっているのではないでしょうか? 特にEarl ZingerことRob Gallagherは、GallianoやTwo Banks of Fourでの活動を含め、アシッドジャズブームの一翼を担ったアーティスト。今回、GillesのプレイにMCだけでなくエフェクトも絡めるパフォーマンスになるそうなので、二人でどのようなプレイをするのか気になるところです。そして、90年代初頭より日本のクラブシーンを牽引してきた松浦俊夫の指揮のもと組まれたHEXがフルメンバーとしては約10ヶ月ぶりにファンの前に姿を現します。現代進行形のジャズを提案するHEXがどのようにジャズを進化させるのかにも注目です。そして、この日のライブで出演するMelanie De Biasioも押さえておきたいアーティストです。「Montreux Jazz Festival 2015」のトレイラームービーで使用されている楽曲で歌っているのが彼女。このトレイラーを見てみると、少しクラブジャズが好きな人であれば、どこかで聴いたことある雰囲気を感じとれるでしょう。そう、偉大なるジャズシンガーのNina Simone。Melanieの雰囲気からは、古き良きジャズ、ブルース、ソウルからの影響も感じられると思います。余談ですが、2014年にリリースしたアルバム『No Deal』は、RadioheadのドラマーPhilip Selwayも自身の年間ベストアルバム1位に挙げています。
ここまで挙げたのは、UNITのワンフロアのみですが、この日はSALOONに環境音を録音し再構築するYosi HorikawaをはじめCalmとShhhhhが、UNICEには、DJ Quietstorm、Killer-Bong、Righteous (矢部直 and DJ Quietstorm)が出演するので、どのフロアもグッドミュージック溢れる一夜になることでしょう。
音楽シーン話題沸騰のオープニングパーティー
これまでは、特にクラベリア読者にオススメなプログラムを紹介してきましたが、実は一番の目玉といっても過言ではないのが、初日10月1日(木)の「Opening Night by ARBAN」なのです。なぜ、この日が注目を集めるかというと、ChassolとMockyの2組が出演するから。おそらく両者ともあまり聴く機会がなかった名前だと思いますが、この機会に、ぜひ覚えてください。Chassolは、ミュージックコンクレートという1940年に誕生した音楽の表現形式を用いています。身の回りに存在する生活音、生き物の鳴き声など、あらゆる音を映像にまとめループさせ、その映像にピアノでコードをのせることにより彼の音楽は完成します。Gilles Petersonが主宰する「Worldwide Awards 2015」において、Album Of The Yearの部門で3位を受賞しています。いっぽうMockyは、今年リリースしたノルスタジックでありポップでもある都会的なリスニングミュージックをパッケージしたアルバム『Key Change』がDJ/アーティストやメディアからも好評を博しています。『Key Change』をリリースしたレーベル<Windbell>のサイトを見ると2002年にファーストアルバム『In Mesopotamia』をリリースし、2004年に伝説のイベント「Raw Life」への出演が画策されていたとか。2010年には友人でもある天才ピアニストChilly Gonzalesとの来日が予定されていたが叶わなかったため、ファン待望の来日公演となるのです。
これらのラインナップを見ていくと、ジャズがいかに自由な音楽性なのかということを感じ取ってもらえたと思います。これまで挙げた公演は、特にクラベリアの読者向けですが、10月9日(金)の、晴れたら空に豆まいてに出演するFlo Morrisseyの妖精のような透き通った世界観もオススメです。また、10月19日(月)~25日(日)までジャズの殿堂Blue Note Tokyoに出演するDavid SanbornやJohn Mclaughlinに関しては、前述してきたアーティストの多くが彼らからの影響を受けており、オススメ公演に挙げているので、ぜひチェックしてみてください!
■モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2015公式サイト
http://www.montreuxjazz.jp/