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Pioneerの新作「CDJ-2000NXS2」&「DJM-900NXS2」発表会に潜入

 2月12日(金)に恵比寿The Garden Roomで、Pioneerから新しく発売されたDJ機器「CDJ-2000NXS2」と「DJM-900NXS2」の新作発表会が行われ、さらにその両モデルを実際に使用した公開収録パーティー「DOMMUNE EXTRA CDJ-2000NXS2,DJM-900NXS2 LAUNCH SPECIAL!!」も同時に開催された。
 今回発表された製品は、現在多くのクラブに常設機材として設置されているマルチプレーヤー「CDJ-2000NXS」と、DJミキサー「DJM-900NXS」の音質や品質、そして機能を大幅にグレードアップさせた上位モデル。従来の製品でも、操作性や技術力の高さは十分にうかがえたが、今回はそれをさらに凌ぐ完成度の高さだった。この2つの製品がどのような進化を遂げたのか、当日の新作発表会の進行とともにご紹介していく。
 
 各媒体や機材ショップなど一部関係者向けに行われた新作発表会は、代表取締役社長の井出氏の代表挨拶から始まり、今回の商品企画を担当した高瀬氏、湯浅氏による商品説明へと進んでいった。
 まず、両モデルの一番注目すべき点は、徹底した音質の向上だ。「CDJ-2000NXS2」では、MP3、AAC、WAV、AIFFなど従来の音楽ファイルフォーマットに加え、新たにFLACやApple Losslessに対応。96kHz/24bitのハイレゾ音源の再生が可能となった。それに伴い、「DJM-900NXS2」も96kHz/64 bitのミキシング処理、ディザリング処理を採用。これまで以上に解像度が高く、ワイドレンジで密度の高い生々しい音を再現できるようになった。近年急速に普及しているハイレゾ音源市場の拡大化に注視した結果が実を結んだ新モデルは、世界のクラブシーンに一石を投じることになりそうだ。
 
 ロビーには、「CDJ-2000NXS2」と「DJM-900NXS2」で組まれたDJセットがいくつか展示されていた。2CDJ×1DJMのオーソドックスなセットのほか、ラップトップやDJ用外部エフェクターとのセット、なかにはスマートデバイスがミキサーに繋がっているものまであった。早速ブースに近づき、実際にプレイしてみた。
 「CDJ-2000NXS2」には、前モデルから継承している高精細大型フルカラー液晶ディスプレイが搭載されているのだが、前モデルが6インチ
/400dotsの2カラーだったのに対し、本モデルは7インチ600dotsのマルチカラーに進化している。またタッチ操作に対応しており、なんと、ディスプレイ内に表示されるキーボードによりタイピングでのキーワード検索が可能になり、目的の楽曲を素早く探すことができるようになっていた。また、任意の再生位置を記録する「HOT CUE」が最大8個まで利用できるうえに、「HOT CUE」や「LOOP」などを使用するタイミングがずれた時に自動的にビート補正してくれる「QUANTIZE」機能が大幅に進化。1/8、1/4、1/2、1/1と4段階で「QUANTIZE」の設定が可能に。さらに、今まで「Serato DJ」でしか対応していなかった大型パッド搭載のDJコントローラー「DDJ-SP1」が、USBケーブル接続することで使用可能になり、本機のパフォーマンス機能の一部をコントロール。外部機器を使ったダイナミックなアクションと直感的な操作により、今までにないさまざまなDJプレイが期待できそうだ。  
 一方の「DJM-900NXS2」で一番最初に目に付いたのが、前モデルにも搭載されていた簡易エフェクター、X-PADの大型化だ。拍数がパネル化され、選択が直感的になり、なおかつ従来通り指で触れるだけでエフェクトのオン/オフやパラメーターを自在に変化させることができる。また、どのチャンネルにエフェクトをかけるのか目視できる「FX チャンネル選択インジケーター」、ミキサー内部でのデジタルクリップの状態が一目でわかる「CLIPインジケーター」が各入力チャンネルとマスター出力に備わっていた。これで手元が暗いなかでも簡単にエフェクトをかけることができ、ミキシング時に適正な音量コントロールを行えるだろう。そのほかにも、
従来の「SOUND COLOR FX」に「PARAMETERノブ」を搭載したことで、FilterのレゾナンスやDub Echoのフィードバック量を調整することが可能になったことや、エフェクトの周波数帯域を指定できる「FX FREQUENCY」など、さまざまな追加機能があったが、とくに気になったのはSEND/RETURNのセクションだ。従来、「BEAT FX」に入っていた本セクションが今回より完全に独立。本機内蔵の「BEAT FX」と外部エフェクターを同時に使用できるようになったのだ。さらに、RETURNのセクションには、従来のINSERTタイプのルーティングと、エフェクト音を別チャンネルに戻すAUXタイプのルーティングを切り替えるスイッチャーが新たに加わっていた。つまり、チャンネルから出力される音と、外部機器でアレンジした音をそれぞれ別のチャンネルから同時に出力できるということだ。単にミックスのレンジが広がるというだけでなく、ミックスに対する根本的な考え方が変わりそうな、まさに新時代のミキサーが登場したと感じた。  
 時刻が夜8時になると、両モデルを実際に使用した公開収録パーティー「DOMMUNE EXTRA CDJ-2000NXS2,DJM-900NXS2 LAUNCH SPECIAL!!」がスタート。DJ、クラブ関係者から、会社帰りのサラリーマンの方まで多くの人で賑わうなかステージに現れたのは、フォーマルな服装で身を包んだベテランDJ/プロデューサーのPeechboyだ。独特なエフェクト使いによるエモーショナルなDJプレイに定評のある彼は、ハウス~テクノを基調とした安定感のあるグルーブでフロアをジャック。従来の「BEAT FX」や新しくなった「X-PAD」を使いながら、チャンネルフェーダーでカットオン/オフさせるトリッキーなパフォーマンスを見せるなど、まるで今回の新機能をすでに使いこなしているような、実にスムーズなプレイを披露した。
 Peechboyが2時間ほどプレイした後、BOREDOMSのEYEが登場。彼がブースに立つと、それまで柔らかなダンストラックが流れていたスピーカーから急にハイパスフィルターがかかったようなキレのあるノイズがほとばしり、会場の空気が一変。原曲なのかエフェクトなのか判断できないようなトランス感溢れるサウンドから、拍がいつまでも一致しないポリリズムのような不可解なリズムトラックへと移り変わり、気づけばノイズ、トランス、テクノ、ジューク、ダブなど、さまざまなビートを縦横無尽に駆け巡っていた。また、終始彼は、「X-PAD」や液晶パネルの
「Beat Jump」、「Slip Loop」を無造作に扱いつつ、CDJのキューボタンを高速に連打。アグレッシブを極めたそのアプローチを見て、両モデルに底知れない可能性を感じた。  
 当日フロアで使用していたメインスピーカーは、
Pioneer DJが業務用音響機器事業へ参入し、その第1弾モデルとして発表した「GS-WAVE」。さらに、リアスピーカーとして、同じく第1弾モデルの「XY-Series」より、「XY-218S」と「XY-152」が設置されていた。このハイクオリティなサウンドシステムの設置により、今回新しく登場した両モデルの音質を最大限にまで引き出し、会場のどこにいても良質かつパワフルなサウンドを体験することができた。
 今後、さまざまなパーティーやフェスティバルで活躍するであろう「CDJ-2000NXS2」と「DJM-900NXS2」。格段にグレードアップ化した機能をどう活かし、どのようなDJスタイルが今後築かれていくのだろう。クラブシーンの将来がますます楽しみだ。