テクノシーンのみならず、エレクトロニックミュージックシーンのトップアーティストRichie Hawtin。彼が開発に携わったPLAYdifferentlyのDJミキサー「MODEL 1」を自ら説明し、デモンストレーションを行うため、5月20日(金)に渋谷のレコードショップ、テクニークに登場した。
MODEL 1は、Allen & HeathのXoneシリーズを手がけていたAndy Rigby-Jonesとのコラボレーションにより開発されたアナログミキサー。6系統のステレオ入力に2系統のステレオAUXセンド/リターン、マスターアウト、ブースアウトの構成。DJミキサーの象徴的な横フェーダーは姿を消し、長い間鎮座していた3バンドのEQの代わりにハイパス/ローパスフィルターが搭載されていた。
「ほかのミキサーとの良し悪しではなく、MODEL 1自体が非常にユニークな形をしているということが重要です。従来のミキサーの規格とは別のものを、今日のDJ機器業界に提案しています。形が同じだと、どうしても同じ音が出てしまう。形が違うということで、新しい想像力というものがもしかしたら生まれるかもしれないですよね。チャンネルが多いのも今までになかった“自由度”を高めたからです。私の場合は、Traktorで4つのチャンネルを一緒に使います。みなさんがターンテーブルを2台、もしくは3台使用しても問題ありません。それがCDJ3台に変わっても問題ありません。“自由度”を高めることで生まれる可能性が重要なのです」
「従来のDJミキサーは、いろいろなところにボタンやノブがある、そしてひとつのノブで数種類のエフェクトがかけられる。多機能で便利ではあるが、いろいろなことができすぎてしまう…。MODEL 1では、ひとつのボタンやノブにひとつの機能しか持たせていないことが、もともとの哲学でありコンセプトでした」
“自由度”というテーマは、2つあるヘッドフォン端子や2つあるCUEといった細かなところにも宿っていた。
「従来のDJミキサーだとCUEはひとつですがMODEL 1にはAとB、2つのCUEボタンがあります。そしてヘッドフォンの端子が2つあります。たとえばバックトゥバックとか、他の人と一緒にプレイするとき、前のDJとプレイ時間が来て変わる時などにお互いが別の音を聴けたりしたら、なにか音楽的な可能性というものを作り上げられるかもしれません。これらの機能はMODEL 1が初めてです」
操作性のほかに音質面ではどうだろうか? もちろん世界のトップアーティストが開発に関わっているのだから最高のDJミキサーを作ろうとしたに違いない。では具体的にどこだろう。
「現在市販で売られている、みなさんが買うことができるミキサーというのは、一般用といいますか…。アマも含め“DJ”が非常に多い現代で、私たちプロにとって重要なことは本当にいい音質だと思えるものを使うこと。プロ用のものを使うことです。DJブースには、ラップトップを使うDJ、CDJを使うDJ、ターンテーブルを使うDJ、さまざまなDJがいます。どのデバイスを使っても平等でしっかりとした出力の音が出せるというところに重要性もおいています」
「このミキサーを初めて使うときは、自分のギグやDJなど人前で使用することはオススメしません。たとえば自転車に乗るときなどと一緒で、みなさんはいろいろな自転車に乗れるけれど、これは特別な自転車です。まず一回後ろに下がってちゃんと練習して、このミキサーの特性を理解して使えるようになった時点で使用してください。このミキサーはできることの幅というものがすごく大きいので、これを購入してそのままDJできるものではありません。その分大きく飛躍して、自分ができる可能性という自由度はあります。DJとしてこのミキサーを“楽器”として扱ってほしいということです。」
このMODEL 1はPLAYdifferentlyのサイトから購入できる。価格は2,550ポンド。日本円にて約40万円となる。
■PLAYdifferently
http://playdifferently.org/