近年、音楽の聴き方においてダウンロードやストリーミングが主流になっている一方で、2017年には前年比132%の販売数増加を示したアナログレコード。100年以上、製造過程において大きな変化が見られなかったが、革新的なレコード「HD Vinyl」が2019年に製品化予定と発表された。
この「HD Vinyl」、オーストリアのRebeat Innovation社により2016年に特許申請され、現在は同じくオーストリアのJOANNEUM RESEARCH社が開発を進めている。さらにこの技術に対して480万ドル(約5億円)の投資が行われたようで、2019年夏までにはHD Vinyl技術を採用したスタンパーが製造されるようだ。
アナログレコードとの違いについてだが、HD Vinyl= High Definition Vinyl は文字通り高音質、そして70分の再生が可能。高音質を実現する為にハイレゾオーディオファイルを音源として使用すること、3Dトポグラフィックマッピング技術の利用、そしてセラミックの素材のHD Vinylスタンパーはレーザーを使って溝が構成される。この溝、アナログレコードの場合は針と一部しか接触しないが、HD Vinylにおいては針と正確に合わせることで、アングルエラーが抑えられる。また、20Hz - 100kHzという高い周波数特性の実現や1つのスタンパーで作れるアナログレコードの数も多く、既存のものの5倍にあたる10,000コピー程度が製作可能で、さらに製造時間も60%の短縮を実現する。そして特筆すべきは、従来のターンテーブルと100%の互換性を備えており、HD Vinylを問題なく再生することができるのだ。ただし、針と溝の形状をぴったり合わせる必要があるので、HD Vinyl専用の針が必要になる。
従来のアナログレコードの製造過程には欠かせない化学薬品も不要になり、環境にも配慮されているHD Vinyl。アナログレコード製造側の職人不足や設備老朽化の問題も踏まえ、Rebeat Innovation社ボスの予測通り「5年以内に、世界で80%のマーケットシェアを得られる」時代が来るのかもしれない。
HD Vinyl
https://hdvinyl.org/
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