デンマークのオーディオ・メーカーAIAIAIが、“ワイヤレスのスタジオ用ヘッドフォン”として世に送り出した「AIAIAI - TMA-2 Studio Wireless+」を1月18日に発売。同モデルは去年に発売された「AIAIAI TMA-2 Studio」と性能を同じくしながらも世界初の超低レイテンシーワイヤレス接続技術「W+ Link」を備えた製品。あの伝説的なテクノDJであるRichie Hawtinが共同開発したことでも話題となっており、今後のスタジオ用ヘッドフォンの新たな可能性を切り開く革新的な製品として世界中のクリエイターの間で大きな注目を集めている。
同社が製造するヘッドフォンは、モジュラー式を採用していることで知られており、本作もパッケージを開封すると、それぞれのパーツが個別に包装されていた。何かと故障の多いヘッドフォンだが、同社は個別のパーツ毎の販売も行っているので、故障した場合には壊れた部位だけを購入することが可能で、お財布や環境にも優しい仕様となっている。全てのパーツは説明書を見る必要もないほど簡単に組み立てることが可能だが、決して簡素な作りになっているということではなく、むしろかなり頑丈な印象を受ける。イヤーパッドの位置調整も細かい調整が可能で、長時間の使用が全く苦でないほど、着用性も完璧だ。
元になっている「AIAIAI TMA-2 Studio」と比べてみると、重量が僅かに重くなったのが感じられる程度で、それでも他のスタジオ用ヘッドフォンよりは十分軽いと思われる。ヘッドバンド部分には、今回加わった「W+ Link」と「Bluetooth」接続を可能にする部品が入っているようで、前作より一回り大きくなっていて、頭と接する部分には柔らかいシリコンのような素材が採用されている。
今作の目玉となる「W+ Link」接続に関しては、モバイルバッテリー程の大きさの「X01 - Transmitter」と呼ばれるパーツを通して本体と連携することで使用が可能になる。ヘッドフォンと本パーツのボタンを同時に押すことで、ペアリングが完了し、機材のアウトプットに「X01」のプラグを挿せば、超低レイテンシーでのワイヤレス接続が完了する。
実際に楽曲制作に使用してみると、音域のバランスがフラットで優れていることはもちろん、何よりもワイヤレスで作業することがこんなにも楽なのかと感銘を受ける。Richie Hawtin本人が、「クリエイティビティの可能性を制限したくない」と語るように、私たちは今までこのコードによってかなりの制約を受けていたということが、体験してみれば痛いほど分かることだろう(特に中規模以上のスタジオを持つクリエイターにとっては、革命的な進歩だと思われる)。遅延時間は公式発表によると16ms(つまり0.016秒)となっており、体感では感じることが難しい。実際に楽曲制作に使用する限りは、注意深く聴いても全く遅延を感じることは無かった。
さらに、私が感動したのは、Bluetooth接続へのシームレスな切り替えが可能となっている点。ヘッドバンドには音量調節と電源・再生ボタンとなる3つのボタンが搭載されており、裏側にはスライド式のスイッチがある。このスイッチを通して、「W+ Link」と「Bluetooth」を切り替える訳だが、スタジオから外出する場合には、このスイッチをスライドさせるだけでBluetooth接続で自身のスマートフォンから音楽を聴くことができるので、他の音響機器を持ち運ぶ必要なく、このヘッドフォンだけで日常生活を過ごすことができるわけだ。
充電は、低遅延モードで約15時間、Bluetoothモードで約80時間の音楽再生が可能となっているが、もし充電が無くなった場合には同梱されているオーディオケーブルを使用して、通常のヘッドフォンとして使用することもできるので、充電切れの心配も無用である。
有線ヘッドフォンと無線ヘッドフォンは、今までは棲み分けが出来ていたが、無線ながらも低遅延でロスレスオーディオが聴けるとなれば話は別。この「AIAIAI」の新作は、最前線で活躍するプロフェッショナルなクリエイターを満足させるのにも十分な品で、もちろん初心者のクリエイターにとっても大きなメリットを享受することができるはず。
「AIAIAI - TMA-2 Studio Wireless+」は、現在39,800 円(税込)で販売されているが、それぞれのパーツ毎の販売も行われているので、同社の以前のヘッドフォンをお持ちの方は、パーツだけのアップグレードも検討してみてはどうだろう。 (YutaroY)
国内取扱代理店:
BEATINK
株式会社サウンドハウス
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