
クラブのフロアとともに歩んだ11年
MUTEKは2000年、カナダ・モントリオールで始まった。電子音楽とデジタルクリエイティビティを軸に、現在はバルセロナ、メキシコシティ、ドバイなど世界7都市で展開している。日本版のMUTEK.JPは2016年にスタートした。
MUTEK.JPはこれまで、渋谷を拠点に開催を重ねてきた。2024年は渋谷WOMBとSpotify O-EASTを会場に、ライブプログラムを展開している。普段テクノやハウスを聴きに通うクラブで、音と映像の実験的な作品に出会える。その距離の近さが、MUTEK.JPの持ち味のひとつになってきた。
今年はJR東日本との共催で、会場を高輪へ移す。会場のMoN Takanawaは、2026年3月にTAKANAWA GATEWAY CITY内に開館した。「New Cycle!」というテーマには、次の10年へ向けた新たなサイクルを始める意図が込められている。

最終日、PLASTIKMANが16年ぶりに日本へ
テクノファンが最も注目するのは、やはり最終日だろう。11月23日、Box1000で「PLASTIKMAN | POLYPHONIC FERMENTATION」が世界初披露される。開場は17:00、開演は18:00で、20:00に終演する。PLASTIKMAN名義のパフォーマンスが日本で行われるのは16年ぶりとなる。
PLASTIKMANは、Richie Hawtinが1990年代初頭から続けてきた名義で、ミニマルなテクノの探求と深く結びついてきた。前回の日本公演は、2010年12月に幕張メッセで開催された「WOMB ADVENTURE 2010」だった。当時のツアーでビジュアルを担ったのもAli Demirelで、二人は長年にわたってタッグを組んでいる。
新作のテーマは「発酵」。タイトルは、麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が同じ容器で同時に進む、日本酒造りの「並行複発酵」に由来する。二人は2026年4月に京都の月桂冠、秋田の新政酒造、石川の吉田酒造店(手取川)を訪れ、醸造の現場を撮影・録音した。そこで収めた映像とフィールドレコーディングが、作品の素材になっている。
Hawtinは約20年にわたって日本酒と関わり、「酒サムライ」の称号も持つ。音と映像が別々の小さな粒子として始まり、やがて絡み合っていく自分たちの制作プロセスは発酵によく似ている、と彼は語る。
ライブでは、映像がより抽象的な世界へと向かう。Demirelは日本の「月見」と、万物が移り変わる「移ろい」という概念を着想源に挙げている。葛飾北斎や横山大観が描いた月の表現を手がかりに、発酵を捉えた顕微鏡映像と、岩肌や流れる水の接写を重ね合わせるという。

約100畳の畳空間で触れる、もうひとつの「発酵」
作品はパフォーマンスにとどまらない。11月23日から12月27日まで、MoN Takanawaの約100畳の畳スペース「Tatami」でインスタレーションが無料公開される。こちらは酒蔵の映像と日本の自然風景を組み合わせた映画的な表現で、ゆっくりと変化する音と映像が繰り返し上映される。出入りは自由なので、ライブの前後に立ち寄ることもできる。
初日の15:00から20:00には、sakejumpとのパートナーシップによる日本酒プログラムも開かれる。新政酒造がHawtinとのコラボレーションで手がけた限定ボトル「Cosmos Clear Spark|ENTER.Sake PLASTIKMAN. Edition」を、陶芸家・古谷宣幸のお猪口や酒器ブランド「SHUWAN」で味わえる。瓶内二次発酵による天然のスパークリング日本酒で、本数限定の抽選販売となる。応募方法などの詳細は、11月上旬にsakejumpの公式Instagramで案内される予定となっている。
2つのフロアを行き来する3日間
20日から22日は、大ホールBox1000の「A/Visions」と、Box300の「Play」が同じ時間帯に並行して進む。チケットがあれば、各フロアの定員内で両方を自由に行き来できる。クラブでフロアを渡り歩くような感覚で楽しめる。

11月20日(金)Max Cooperの新作で開幕
A/Visions 1(20:00〜22:00)は、イギリスのMax Cooperが単独で務める。計算生物学の博士号を持つ電子音楽家で、2026年5月に自身のレーベル〈Mesh〉からアルバム「Feeling Is Structure」を発表した。この新作を軸に、3D映像を用いたオーディオビジュアルライブを行う。
Play 1(19:00〜22:30)では、To Rococo Rotの元メンバーRobert Lippokが、映像作家Lucas Gutierrezとのデュオで出演する。イタリアのAimée PortioliによるGrand River、モントリオールのSeulement、日本のMasayuki Azegami & Seiichi Segaも名を連ねる。


11月21日(土)mouse on the keysとRyoichi Kurokawa
A/Visions 2(18:30〜)には3組が登場する。ピアニストHania Raniの別プロジェクトChilling Bambino、結成20周年のmouse on the keys、そしてベルリンを拠点とするRyoichi Kurokawaが並ぶ。mouse on the keysは、ヴァイオリニストの常田俊太郎とVJのrokapenisを迎えた特別編成で臨む。
Kurokawaは2010年、Prix Ars ElectronicaでGolden Nicaを受賞している。今回上演する「nD」は、2005年に始まった「cm:av_c」シリーズの第3作にあたる。音と映像、抽象と具象のあいだを揺れ動く世界を、二面構成のスクリーンで描き出す。
Play 2(18:00〜)では、フランスのCanblasterとNeurotypiqueによるNEUROSCANが日本初公演を行う。Riccardo Giovinetto、Nicolás Melmann、Johanna Elina Sulkunen & Tapani Toivanenも出演する。

11月22日(日)着席で観るDaito Manabe × ELEVENPLAY
この日のBox1000は、1F・2Fともに着席の自由席となる。A/Visions 3(19:00〜)では、Daito ManabeとMIKIKO率いるELEVENPLAYが、ダンスインスタレーション「+1+1+1+」を上演する。カナダのPatrick Watsonによる新プロジェクト、Film Scores for No Oneは日本初演となる。

Play 3(18:00〜)は国内勢が厚い。tamanaramen、台湾のニューメディアアート・コレクティブDimension Plusに加え、Eq ( E.O.U + vq )、JACKSON kaki、Azikazin Magic Worldがスケジュールに名を連ねている。
当日までに押さえておきたいこと
Box300の収容人数は約400名で、入場は先着順となる。満員時は一時的に入場が制限され、退場者に応じて案内される。目当てのアクトがある場合は、早めの移動を考えておきたい。23日はBox300での公演はなく、Box1000のPLASTIKMANのみとなる。
Box1000は、20日・21日・23日が1Fスタンディング、2Fが着席の自由席となる。2F席はPremium Seatの購入者が利用できる。ステージとビジュアルの全体を見渡したい人は、2F席も選択肢になる。
入場は18歳以上に限られ、写真付き身分証明書による本人確認がある。会期中の日中には、トークセッションを含むカンファレンスや、IRCAMによるワークショップ「MUTEK.JP Pro Digi Lab」も予定されている。20日から22日にTatamiで開催される「ETERNAL Art Space Exhibition 2026」は、別チケット制となる。
チケットは10月21日からPhase 2の価格で販売されている。各券種とも枚数限定で、前売券が予定枚数に達した場合は当日券の販売はない。詳細はMUTEK.JPのオフィシャルページで確認できる。

MUTEK.JP 2026 11th Edition
日程:2026年11月20日(金)〜23日(月・祝)
会場:MoN Takanawa: The Museum of Narratives(TAKANAWA GATEWAY CITY内)
主催:一般社団法人MUTEK Japan
共催:東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
11月20日(金)
A/Visions 1|Box1000|20:00〜22:00
Max Cooper
Play 1|Box300|19:00〜22:30
Robert Lippok & Lucas Gutierrez / Grand River / Seulement / Masayuki Azegami & Seiichi Sega
11月21日(土)
A/Visions 2|Box1000|18:30〜22:10
Hania Rani presents Chilling Bambino / mouse on the keys / Ryoichi Kurokawa
Play 2|Box300|18:00〜22:10
Riccardo Giovinetto / Nicolás Melmann / Johanna Elina Sulkunen & Tapani Toivanen / NEUROSCAN (Canblaster & Neurotypique)
11月22日(日)
A/Visions 3|Box1000|19:00〜 21:50
Film Scores for No One - a Patrick Watson project / Daito Manabe × ELEVENPLAY
Play 3|Box300|18:00〜21:45
tamanaramen / Dimension Plus / Eq ( E.O.U + vq ) / JACKSON kaki / Azikazin Magic World (VJ: tsuchifumazu)
11月23日(月・祝)
PLASTIKMAN | POLYPHONIC FERMENTATION|Box1000|開場17:00 / 開演18:00 / 終演20:00
Richie Hawtin & Ali Demirel
インスタレーション「PLASTIKMAN | POLYPHONIC FERMENTATION」
2026年11月23日(月・祝)〜12月27日(日)
MoN Takanawa Tatami|入場無料
※初日は日本酒プログラム(15:00〜20:00)を開催。期間中の公開
チケット
パスポート(4日間通し):Phase 2 30,000円 / Premium Seat 40,000円
1日券:Phase 2 10,000円 / Premium Seat 15,000円 / U25 5,000円
当日券:13,000円 / Premium Seat 18,000円 / U25 5,000円
https://mutekjp.zaiko.io/
インスタレーション「PLASTIKMAN | POLYPHONIC FERMENTATION」
2026年11月23日(月・祝)〜12月27日(日)
MoN Takanawa 4F Tatami|入場無料
https://tokyo.mutek.org/
