clubberiaを御覧の皆様こんにちは
緊急事態宣言は解除されましたが、どうなることやらな今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
ソーシャルディスタンスやリモートワークが引き続き求められている中、前回のオンラインセッションの話に続き、今回はレコーディングスタジオで行われているリモート化について、レコーディングエンジニアのGregory Germain(グレゴリー ジェルメン)さんに聞かせてもらったお話を紹介します。
Gregory Germainさんは、フランス生まれ、パリ育ち
日本の文化に憧れて10代の頃から様々な日本の音楽に触れ、20歳で来日し、日本語、英語、フランス語の三ヶ国語を巧みに操るレコーディングエンジニアさんです。
このコラムでも以前に登場してもらったことがあるのですが、今回はzoomでお話を聞かせてもらいました。
CD HATA:お久しぶりです!まずは自己紹介をお願いします。
Gregory Germain:日本に来て15年以上になるんですが、レコーディングエンジニアを目指す為、日本の音楽専門学校へ入学し卒業後は、スタジオグリーンバードでアシスタントとして数多くのメジャーアーティスト、バンドの作品に参加していました。
2011年Digz, inc Groupに入社し、ポップスやダンスミュージックを中心にエンジニアをやっています。
CD HATA:この映像のスタジオがGregory Germainさんの普段仕事をしているスタジオですよね?
Gregory Germain:そうですね。今もそこからzoomしています。
CD HATA:緊急事態宣言中は、やっぱりスタジオもお休みだったんですか?
Gregory Germain:はい。たまにスタジオ内で1人で作業することはあったんですが、会社自体は休業していました。
CD HATA:緊急事態宣言が一応あけて、再スタートしたと思うんですけど、どうですか?
Gregory Germain:弊社のスタジオはエンジニアが作業するコントロールルームと演奏をするレコーディングブースの入り口が分かれているので、ミュージシャンの人が建物に入ってから自分たちと接触することなくレコーディングをはじめることもできるんです。ただディレクターや関係者の人達が沢山集まるのは避けた方がいいと思っていました。とはいえレコーディングをしながらディレクションなど指示を出したり、関係者の人達の意見を聞きながら作業をする必要もあるので、最近はそれを遠隔リモートでやることも試しています。
CD HATA:どんな感じでやっているんですか?
Gregory Germain:音はaudiomoversで送り、映像をzoomで送っています。例えばこないだは、自分はコントロールルームでオペレートをし、ヴォーカリストがレコーディングブースで歌い、ディレクター、作詞家、トラックメイカーなど関係者がそれぞれの家でaudiomoversとzoomを通して確認をしながら作業を進めるという方法を行いました。
レコーディングブースに置いているPCは映像のみで使う為、zoomの音声はオフにしておき、音声はレコーディング用のマイク経由のものを使います。zoom越しの人達の音声はキューボックス経由でヴォーカリストが聴けるようにしました。
CD HATA:なるほど!僕がやっているバンドDachamboも、ミックスダウンの様子をエンジニアがaudiomoversで送り、それをメンバーが聴きながら作業をするというのをやったことがあります。
Gregory Germain:この時もヴォーカリストのマネージャーさんはロビーで待っている間、zoomでその様子を確認していましたね。
CD HATA:それも便利だ(笑)
Gregory Germain:また別のプロジェクトの話なんですが、福岡のディレクターの人が東京に来なくてもできるようにということで始めてみて、やってみたら上手くいきましたね。
CD HATA:一見シンプルな感じしますけど、ルーティングとかちょっとややこしそうですね。
Gregory Germain:コントロールルーム置いてあるzoomの音声はコミュニケーション用にオンにしてあるんですけど、オンのままにしておくとヴォーカリストが歌う時にその雑音が妨げになるので、いちいちオンオフをしなくてはならないんですよ。アシスタントエンジニアがいる場合はやってもらうんですけど、1人の時はそれが面倒で…
CD HATA:トークバックの操作も慣れないと面倒ですもんね。
Gregory Germain:そう!それが2つある感じですね。MUTEOMATICという、DAWが停止すると自動的にマイクを開き、DAWが再生モードまたは録音モードになるとミュートしてくれるものを教えてもらって試したこともあります。
別のプロジェクトで、ドラムとベースのリズム録りを遠隔でディレクションをしてもらいながらレコーディングをしたことがあるんですが、ベースの音は録音モードにしておかないとディレクターには聴こえないんですよ。
ディレクターから「こんな感じにならないかな?」とオーダーがあり、ベーシストが「こんな感じですかね?」と試し弾きをしてもDAWが停止状態だとディレクターには聴こえないといったこともあったり。
CD HATA:なかなか難しいですね。でもその辺はちょっとした慣れと改善で解決できそうですよね。
CD HATA:でもやっぱりまだ例えばドラムとベースが別々の場所にいて遠隔でレコーディングするっていうのは難しいんですか?
Gregory Germain:そうですね。どうしても遅延の問題もあるので…
エンジニア同士で遠隔で仕事をする方法の情報交換はしていて、一番近いツールとしてはsoundwhaleというのもあるんですけど、回線速度の問題もあって、まだ実用的ではないですね。
CD HATA:そうなんですよね。音楽ってちょっとした遅れがあると、もうアウトですもんね。
Gregory Germain:回線の問題がクリアされたとして、プラグインとしてリモート機能があるものを差し込んでも遅延が発生するので、DAW自体にリモートレコーディングの機能が組み込まれるとかじゃないと難しいかもしれないですね。
CD HATA:そっか!DAWのマスターアウトをただ送るってだけでも遅延しますもんね…
解決しないとならない点は色々ありそうですが、それができたらまた面白いことができそうな気がします!
前回のコラムで、オンラインセッションのことを話していた時にオンラインならではの面白さをみつけていけたらいいよねって話をしていて「共有している画面を白黒にするとノスタルジーな感じになって、そんな雰囲気でJazzやBluesのセッションをするのがリアルとはまた違って良かった」って話が面白かったんですけど、オンラインのレコーディングができるようになったとして、リアルとは違うどんなことができたら面白いと思います?
Gregory Germain:やっぱりVR方面ですかね。例えば60年代のニューヨークのBarだったり、フランスの田舎のお城とかの仮想空間を作って、そこで演奏したものをレコーディングする。
CD HATA:それ面白そう!リアルのレコーディングでも場の雰囲気で演奏が変わってきますもんね!
Gregory Germain:そこにお客さんも入ってこれたり、その様子を配信したりもできますよね。ARでもいいんですけどゴーグルをしちゃうと演奏しずらかったりするかな?
CD HATA:確かにそれは面白そうだ!
といった感じで、最後は妄想を膨らませましたが、話に出てきたツールは、CD HATAが作ったオンラインセッションのフェイスブックグループページでも話題にあがっています。
Gregory GermainさんはWavesのフェイスブックグループページの管理人もしています。
Gregory Germainさんのホームページはこちらです。
まだまだ発展の伸びしろが沢山あり楽しみな分野です。
Gregory Germainさん今回はありがとうございました!
CD HATA