BLOG

OUT PUT / Manami Sakamoto - vol.8「NFT アートの可能性」Interview - Saeko Ehara | 江原彩子

Clubberiaをご覧の皆さま、こんばんは。すっかりご無沙汰してしまいましたがいかがお過ごしでしょうか?

ダンスミュージックシーンも今年はパーティーは勿論のこと、リアルなフェスティバルがどんどん戻ってきたり活気がかなり戻ってきましたね。

私の方は、この1年の間にフェスティバルやリアルイベントでのVJ活動と並行しながらもこのブログでも紹介させていただいたXRライブやARを使った演出ライブなどオンラインを軸にしたお仕事にもトライさせて頂いていました。

そんな中でNFTのプラットフォームで作品を展示して頂くことがありNFTアーティストの方々と色々お話をさせて頂く機会がありとても興味深いお話もできたので今回はNFTについてご紹介できればと思います。

 

NFTとは?


少し前にはなりますが、恐らく私達が一番耳にした中でキャッチーなNFTのニュースでいうとアメリカのデジタルアーティストBeepleのNFTアートが75億円で落札されたというニュースではないでしょうか?

Beeple 「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」

NFTとは、「Non-Fungible Token(ノン-ファンジャブル トークン)」の頭文字を取ったもので、「非代替性トークン」、替えがきかない唯一無二のトークンという意味を持ちます。

トークンとはブロックチェーン技術(データの改ざんや不正利用が極めて困難な技術で安全にデータを記録できる技術)を使用して発行した「暗号資産」の総称です。

NFTの作品の売買は、Ether(イーサ)やBitCoin(ビットコイン)などの仮想通貨を使用してやり取りが行われます。(その後、プラットフォームを介し現金に変換する事が可能)

何故、NFTが注目されているかというと、例えば画家が描いた絵画を購入した場合に所有者を明確にする事はその「絵」自体が実際に手元にあるので明確にする事は簡単だったのですがデジタルアートやオンライン上にある物の所有者を明確にする事はこれまで非常に困難でした。それがNFTの登場により、デジタルアートを所有しているというという証明ができるようになり所有者の明確化とともに世界で1つだけのにアートを所持しているという証明ができるようになったのでレア性を持ち価値を上げる事が可能になったという点が1つの大きなポイントです。

ダンスミュージックシーンの分野でもDeadmau5とRichie Hawtinが開発を発表した音楽NFTゲーム「Pixelynx」や、Ricardo Villalobosがスペイン人アーティストSixe ParedesとのコラボレーションNFT作品を発表するなど音楽家とデジタルアーティストのNFT作品が少しずつ出始めています。

Pixelynx + NIANTIC : TEASER
詳しくはこちら



Amnesia Ibiza presents Ricardo Villalobos x Sixe Paredes 



そんなNFTアート、デジタルアートの世界で精力的に活動されているアーティストのSaeko Eharaさんにお話を伺ってみました。

江原彩子 - Saeko Ehara




東京を拠点に活動するアーティスト、VJ。2010年にオランダのハーグ王立美術学院(KABK)を卒業。10年以上、コンサートを中心にエンターテイメントの世界で、映像制作とオペレーション業務を担当。主にJ-POPのアーティストのコンサートで、日本中のアリーナ、コンサートホール、ライブハウスでVJを行う。2019年から、キャリアアップのためにデジタルハリウッドでクリエイティブコーディングを学んだことがきっかけで、再び自分の作品を制作し始め、発表を行っている。

Manami(以下M) : まずは、SaekoさんがNFTを始めたきっかけを教えてください。

Saeko(以下S) : 私がNFTを最初に知ったのは、Instagramでした。2021年の初めに、私がフォローしていたアーティスト達が、NFT、Foundation、SuperRare、hic et nunc(現在のTEIA)などをタグづけし始め「これは何だろう?楽しそうだな」と思ったことでNFTを知りました。

しばらくはNFTに興味があっただけで、知識が何もないまま過ごしていたのですが、同年の6月にアーティストのKaoru TanakaさんからFoundationの招待状をいただいたことをきっかけにNFTを始めました。

M : NFTプラットフォームは昨今沢山出てきていますがSaekoさんが出展されているプラットフォームはどこでしょうか?

S : 私は主に、FoundationSuperRareTEIAVersumにミント(作品を出品すること)しています。他にも、Anna Condoさんというアーティストのキュレーションで、1stDibsというプラットフォームでNFTの展示のお誘いをいただいたり、Manamiさんのキュレーションで、REFRACTION 2.0にお声がけいただけたりと、様々なプラットフォームへミントする機会が増えてきています。


精神の美 - spiritual beauty



Specimens of Gummy Bears



Birth
NFTプラットフォームで販売されているSaekoさんの作品達。キラキラと幻想的な世界でまさにデジタルアートの絵画を見ているような気持ちに。





Refraction NYC
クラベリアブログでも以前紹介させて頂いたカナダ発デジタルアートと音楽の祭典、Refraction Festivalが今年も開催。今回は、メタバース・NFTの方向に大きくシフトチェンジし開催が発表されました。私は今年キュレーションを担当させて頂きSaekoさんを含む、Hana Watanabeさん、JACKSON kakiさん、Kaoru Tanakaさんらデジタルアーティスト4組に参加いただき、私は音楽家のmachìnaとコラボレーション作品を制作しました。先月末にはNYブルックリンにあるZERO Spaceというベニューで、世界各国のアーティストがRefractionの為に制作したNFT作品がプレミア公開という形で展示会が開催されました。

: それらのプラットフォームに出品している理由はなんでしょうか?

S : Foundationは、クリエイターアカウントを取得するために招待状が必要だったのですが、大ファンのKaoruさんからご招待いただけたこともあり、特に思い入れがあります。

SuperRareは、Instagramなどでオフィシャルに投稿される作品のクオリティがとても高く、プラットフォームに入るための審査もとても厳しいという噂を聞いていたので、ずっと憧れでした。今年の3月に、World of WomenのDani Tonさんと、World of Womenのコミュニティの皆さんにキュレーションしていただいて、SuperRareのプラットフォームでフィーチャーしていただきました。まだまだSuperRareの知識や経験は浅いですが、温めていきたいと思っています。

Women’s History Month

Tezosのプラットフォームは、アーティストのKazuhiro Aiharaさんにお誘いいただいて始めました。Ethereumのプラットフォームは、ガス代(作品を出品する際に必要な手数料のようなもの)のコストがとても高く、使用する際に環境が破壊されると危惧されています。反対に、Tezosのプラットフォームではガス代がほぼかからず「Clean NFT」と呼ばれています。環境に配慮しながらNFTを楽しめるという点に魅力を感じて始めました。

M : 私もこの前初めて知ったのですがSaekoさんのお話にも出てきているTezosというプラットフォームが最近すごく人気が出てきているとのことですがその理由はなんだと思いますか?

S : Tezosはガス代がかからないこと、環境に配慮しながらNFTを楽しめることが人気の理由だと思います。全体的にコストがかからないので、色々と実験しやすいのも良い点です。Ethereumで出品しているアーティストは、Tezosでもアカウントを持っていることがとても多いです。

また、販売価格もEthereumのNFTよりかなり安価なので、私はよくお気に入りのアーティストの作品を購入しています。微力ですが、大好きなアーティストをサポートできることがとてもうれしいです。私も、Tezosのプラットフォームで出品した時(TEIA、Versum)に、よくアーティストに作品をご購入いただきます。

作品の購入を通して、アーティスト同士の結束が強いコミュニティが出来上がっている印象があるので、そこもTezosが人気の理由だと思います。

M : 環境に配慮しながらNFTを楽しめるというのは具体的にはどのような事でしょうか?

S : 作品を出品したり、リストしたりしてマーケットに出すための手続きが発生する際に、Tezos系のプラットフォームはほとんどガスが発生しないと言われています。
Ethereumのガス代が、平均で3000~5000円くらい(変動します)なのに対して、Tezosでは数十円くらいなのでそれだけEthereumは、システムを稼働するのに負荷がかかっているということだと思います。

M : NFTは仮想通貨でのやり取りで作品の売買が行われていますが、ふとした疑問でアーティストへの収入にはどのような流れで繋がるのでしょうか?

S :コレクターの方にNFTをご購入いただくと、アーティストが設定した金額の暗号通貨が収入となります。暗号通貨は取引所で換金すれば、現金化できます。

私はEthereumのプラットフォームをメインに活動をしています。Ethereumはガス代やプラットフォームのロイヤルティも高いですが、利幅も大きいため、作品がまとまって売れてくれれば、かなりの収入になります。また、二次流通で作品が売れた場合にも、金額の10%程度(プラットフォームにより異なります)の収入があります。

今のところ、過去に購買へ繋がったのは、プラットフォームでのフィーチャー、Twitterでのツイートとリツイートでした。Twitterのコメント欄に作品を買いたいというメッセージをいただいたこともあります。アーティストによっては、InstagramのDMでコレクターの方からコンタクトをいただくこともあるそうです。アーティストによって様々なケースがあるようですが、SNSで自身の作品について積極的に発信していくことがとても大切だと思います。

M : SaekoさんのオススメのNFTアーティストを何人か教えてください。

S : オススメのアーティストは世界中に本当にたくさんいますので、絞るのがとても難しいですがあえて日本人に限定させていただきますとこんな感じです。

EM!

Haruko Hayakawa

Kaoru Tanaka

Kazuhiro Aihara

Masataka Torimi

Shunsuke Takawo

Tomoro Kinoshita

Yoshi Sodeoka

Yuuki Morita

Yuma Yanagisawa

YUUUI

(アルファベット順)

M : SaekoさんはNFTのみでなくリアルイベントでもVJやライブパフォーマンスをされていたり展示などもされてますよね。少しNFTとは話が逸れてしまいますがSaekoさんの作品はどれもキラキラしていて夢の中にいるような気分にさせてくれる作風が私もとても大ファンです。
作品のインスピレーションやコンセプトはどのように作られているのでしょうか?

S : どうもありがとうございます。私の作品は、全て子供の頃の記憶がベースにあります。子供の頃に、キラキラしたカードやシール、おもちゃのアクセサリー、ガラス小物を集めることが大好きでした。作品のモチーフによく花を使うのですが、私は花の名前を全て覚えてしまうくらい花の図鑑を見ることが大好きでした。今でもキラキラしたものや花を見るとすごくときめきます。

純粋に何かを好きだなと思う気持ちを作品に込めることで、キラキラしたもので世の中が溢れたらいいなと思っています。

MUTEK JP at Shibuya Stream Hall (2021)
Music: NTsKi、Photo: Shigeo Gomi





PIXELBLOOM at ARTECHOUSE DC (2022)
Curated by Junichi Takekawa

*左側3点がSaekoさんの作品


CULTURE GATE to JAPAN '+A+’ at Tokyo International Cruise Terminal (2022)
Presented by: The Agency for Cultural Affairs、Curated by Junichi Takekawa




0 // 2021 Public Visuals Tokyo x TDSW at Tunnel Tokyo (2021)
Music: Shuta Yasukochi、Photo: Syuhei Kishimoto




見ているだけでワクワクするようなSaekoさんの作品達。私も実際にライブパフォーマンスなどを拝見してますが目の前で見るとより没入感があり素晴らしいです。

M : Saekoさんが考えるNFTの可能性とはなんでしょうか?

S : NFTは、アーティストとして生きていく可能性を秘めた、画期的なシステムだと思います。作品を売ることで生活が出来れば、制作の時間も十分に確保出来るので、作品のクオリティを上げることにも繋がります。
また、SNSで海外のアーティストと交流を深めることで、海外での活躍のチャンスも広がると思います。

私は、オランダのハーグ王立美術学院(KABK)という、アートアカデミーを卒業していますが、日本へ帰国してからはVJの仕事でアート作品を制作する時間をとることが出来ませんでした。コロナの影響で、仕事が全てキャンセルになった時期にNFTをスタートさせたのですが、収入面だけでなく、アーティストとしていただいた展示やイベントの機会のほとんどがNFTを通したものです。

Aboutページ
https://skohr.works/about

今はまだフルタイムアーティストとして生きる旅路の途中にいますが、NFTのおかげでその夢も実現可能だと思っています。

M : 最後に一言お願いします。

S : 今、NFTに挑戦している、これから始めてみようというアーティストの皆さんに、この内容が少しでもお役に立つようであればうれしいです。

私はNFTを始めてちょうど一年くらいになりますが、売れる時もあれば、全く売れずにすごく落ち込むこともあります。成功も失敗も含めて、貴重な経験として、時間をかけて自分の土台を築いていこうと思っています。NFTはどっぷりと浸れるくらい面白いものですが、どんな時も楽しむことを忘れずに、肩の力を抜いて進もうと思います!

ここまで読んでいただきまして、ありがとうございました!Manamiさん、NFTについて語る機会を設けていただいて本当にありがとうございました!

---

Saekoさんが仰っていたように私自身も、日々の仕事に追われ自身の純粋な作品制作や技術を磨く時間を限られている中で行う事がとても大変な状況で悩んでいました。NFTはまだまだ新しい技術なので、法整備が敷かれていない部分や作品を出品する際にもプラットフォームによっては高額な手数料がかかったり、仮想通貨の値上がりや値下がりに収入が大きく左右されるのでリスクを伴う部分もあります。しかし、それらと上手くバランスをとりながら自分の作品を出品して、成果としての収入が得られるのはアーティストとしてとても魅力的だと感じます。そしてNFTやメタバースなどオンラインでのコミュニティは、国や場所など関係なく沢山の方と繋がり自分を知ってもらえる点が何よりも魅力的だと感じます。

FoundationやSuper RareなどNFTプラットフォームでは日々物凄い勢いで沢山の作品がUPされているので是非興味がある方は覗いてみてください。