NEWS
>

日本のダンスミュージックシーンを盛り上げたい
登壇者に聞くTDME

 日本のダンスミュージックシーンに特化した国際カンファレンス「Tokyo Dance Music Event」(以下TDME)が11月30日(木)から12月2日(土)の3日間にわたり開催される。連載2回目は、初開催時の出演者へ取材を行った。回答者は宇川 直宏、カワムラユキ、Zeebra、SEKITOVAの4名(50音順)。彼らの目にはTDMEがどのように写っていたのでしょうか。また、TDMEを有益に過ごすためのヒントも紹介。

 
宇川 直宏
(DOMMUNE主宰/現在美術家)

現在美術家/映像作家/グラフィックデザイナー/VJ/文筆家/サウンドシステムオーナーなど、多岐に渡る活動を行うアーティスト。日本におけるVJのオリジネイター。2010年3月、立ち上げたライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」は、開局と同時に記録的なビューアー数を叩き出し、国内外で話題を呼び続けている。

■DOMMUNE公式サイト
www.dommune.com/


——昨年、TDMEに登壇されて思ったことはありますか?
 
昨年、はBOILER ROOM JAPANとしての配信と、さらにはトークセッションにも2本参加させていただきました。そのうちの1本はNina Kravizさんとの対談で、そのテーマがテクノグローカリズムでした!グローバリズムではなくグローカリズムだということがポイントです僕も彼女も、日本とロシアに生まれました。いうならば、デトロイトから生まれたとされるシカゴハウスから派生したテクノ、そこからセカンドサマーオブラヴを通じて、ヨーロッパ全土に拡散したテクノ。そんな現代のテクノマップから考えると、局所的な地域から生まれたカテゴリーが、新たな地域性と共振しながら、テクノは発展していると思われます。アメリカ主導で加速したグローバリズムに対して、地域性を重視する思想がヨーロッパを中心に生じ、地域に着目する目が向いています。ゼロ年代の大きな潮流としてのクリック/ディープミニマルを生み出した、Ricardo VillalobosやLucianoはチリのコミュニティで音楽性を育んだ。また、ルーマニアンミニマルハウスの[a:rpia:r]は、RhadooとPetre InspirescuとRareshによって成り立ち、プレス枚数の極端に少ないヴァイナルや、インタビュー、ウェブへの露出を控え、アーティストとしてのコマーシャルな活動を拒否しながら、ルーマニアから世界へと新たなミニマルの概念を生み出しました。例えばイギリスのEUからの離脱は、グローカリズムの一つの象徴だと考えられます。ペレストロイカ以前の抑圧的な政策の下では、レコードをリリースすること自体が規制されていた、そんな歴史を持つロシアに生まれたNinaはтрипという母国語のロシア語で表記されたレーベルを立ち上げた。これはまさにグローカリズムを打ち出した、彼女独自のDNAだと感じました。
 
——TDMEが発展していくために必要なことは何だと思いますか?
 
商業主義に加担しすぎず、批評的視点を獲得し、アンダーグラウンドに常に目を向け、発芽以前の種、もしくは原石をサポートして、世に伝え広める。そういった、「あしたのジョー」おける泪橋の丹下段平(©梶原一騎/ちばてつや)的親愛の情が必要だと思います。
 
——日本のダンスミュージックシーンの発展にとって必要なことは何だと思いますか?
 
グローカリズムとエキゾチシズムは密接な関係にあります。異国の文化に憧れを抱く心境です。それを音楽に落とし込んだのが、エキゾチカという概念だと思います。かつて異国の文化への憧れは、音楽を通じて、満たされました。しかし、インターネット以降、 Google Earthでどの地域も観覧することができる(NASAとの連動で火星も月も青雲も)。そんな時代、今世紀におけるエキゾはどこにあるのか?そのことを考えると自ずと進む道が見えてくると思います。
 
——参加者はどのような心持ちで参加するといいと思います?
 
まずは観光者としての心持ち、その後は移住民になる覚悟。
 
——TDMEのプログラムをひとつ自由にプロデュースしてよいことになったら何を行いますか?
 
オーディオビジュアルと呼ばれる以前の「音と映像の蜜月史」。


 
カワムラユキ
(DJ/プロデューサー)

2010年に渋谷道玄坂にて、ナイトクラビング前のウォームアップをコンセプトにしたDJバー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。国内外より多くのゲストが訪れる人気スポットに。2014年にはミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を設立。Sakiko Osawaやナマコプリ、Watusi(COLDFEEET)などのアーティスト・プロデュースや作品リリース。独自の視点によるイベント企画やキュレーションを多数手がけている。最新作は、水曜日のカンパネラ x カワムラユキ「金曜日の花魁」、山代温泉瑠璃光25周年記念詩写真展「あなたの水になりたい」、しぶや花魁 presents 渋谷系セッション@りんご音楽祭 2017など。

■公式サイト
http://oiranmusic.com/


――昨年、TDMEに登壇されて思ったことはありますか?
普段考えている事をそれぞれの立場から論じ合い、情報交換しあう良い機会だと感じました。
 
――TDMEが発展していくために必要なことは何だと思いますか?
要点を簡潔にまとめたレポートを定期的に配信してゆくこと。以降の意識確認にも繋がるかと思います。
 
――日本のダンスミュージックシーンの発展にとって必要なことは何だと思いますか?
多様性を認め合い、ジャンルを越えた交流と親睦。新しい世代のユニークな発想を持ったプロデューサーの育成。
 
――参加者はどのような心持ちで参加するといいですか?
積極的な交流を。
 
――TDMEのプログラムをひとつ自由にプロデュースしてよいことになったら、何を行いますか?
マネージャー、ブッキング、プレスなど、ダンスミュージックシーンを支える為に働く女性たちが考える、シーンの未来についての対談。


 
Zeebra
ヒップホップ アクティビスト

伝説と化したヒップホップグループ「KING GIDDRA」のフロントマンとして90年代から活躍。最近では、オーガナイズ&メインMCを務めるMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日)は一大ムーブメントに。また、風営法改正への活動やPLAY COOLでの運動が評価され、渋谷区観光大使ナイトアンバサダーに就任。2017年にはヒップホップ専門ラジオ局「WREP」をインターネットラジオとして開局。ヒップホップシーンの拡大に貢献した立役者。


■公式サイト
https://zeebra.amebaownd.com/


——昨年、TDMEに登壇されて思ったことはありますか?
 
90年代のニューヨークで行われていた、ニューミュージックセミナーに行っていたこともあって、自分にとってはカンファレンスと言うもの自体が当たり前にありました。今の時代にとってカンファレンスの開催は必然性があると思います。主催の実行委員会も昨年は試行錯誤されたと思うんですけど、まず始めるということが大事だと思うし、育てていきたいですね。

 
——TDMEの課題は何だと思いますか?
 
業界人に向けてやるのか、一般の人に向けてやるのか、ターゲットを明確にしたほうがいいと思います。業界人に向けてやるのであれば、もう少し参入がし易いものであるべきだと思うし、一般人に向けてやるのであれば入場料を抑えてアクセスし易い状態を作るべきだと思います。
 
——TDMEの目的のひとつにオーバーグラウンドとアンダーグラウンドをそれぞれのシーンを結びつけることがあるかと思います。ただ、このふたつが良好の関係を築けるとものだと思いますか?
 
何をもってオーバーグラウンド、アンダーグラウンドって言うかだと思うんですけど、僕はその意識が全然ありません。DJがかけているアンダーグラウンドな曲があっても、流行ればオーバーグラウンドですし。流行りたくないっていうのであれば別ですけど、“自分のやっていることが盛り上がってほしい”と思っている人にとって、境界線はないと思うんです。
 
——現在の音楽シーンに求めるものとは?
 
メジャーから作品を出していようが、インディーから出していようが、いいものであれば、きちんと取り上げるメディアが増えればいいなと思います。
 
——参加者はどのような心もちで参加するといいですか?
 
音楽業界の人たちって個が強い人たちで、まとまりづらいイメージがあると思うんですけど、たぶん他の業界も同じだと思うんです。でも他の業界は、みんなでまとまる取組みをしている。例えば、ゲームショウがあったり、金融カンファレンスがあったり、コミケがあったり。まとまって有益な巡りを作っているわけだから。とにかく得をしようと思って来たらいいと思いますよ。得にならなかったらやる必要ないんだから。人と知り合って仕事に繋がるかもしれない、新しい技術に触れてアイデアが生まれるかもしれない。お見合いパーティーだと思うと楽しくなりますよ!貪欲に望めばいいと思いますよ。
 
――TDMEのプログラムをひとつ自由にプロデュースしてよいことになったら、何を行いますか?
 
それだけでも一目見たいと思うヘッドライナーを入れたいですね。まず楽しいことがないと人は動かないじゃないですか。さっきのお見合いパーティーじゃないけど(笑)。難しい話をずっと聞くのは大変だから、そこに“FUN”っていう要素を入れたいですね。


 
SEKITOVA
(DJ/プロデューサー)


2012年に自主レーベルからアルバム『premature moon and the shooting star』をリリース。当時17歳ながら、玄人向けのグルーヴィーなディープハウスからテックハウス、ビートダウンまで作り出すアーティストとして話題になる。以降もさまざまなクラブイベントへの出演、Big Beach FestivalやUltra Japanなど大型フェスティバルにも出演している。

■Twitter
https://twitter.com/sekitova


——昨年DJとして出演した際に記憶に残っていることは何ですか

たしかあの日は風邪を引いていて…。念願のBoiler Roomだったし、気合いが入りすぎてたのかも。プレイ中のことは映像を見るまで全然覚えてなかったような。オープニングセットだったのもあって出演時間前にもリハの流れのままプレイさせてくれて、そこでは普段DJプレイではあまりかけない緩い曲ばっかりかけてました。たしかFaistとかジャズのスタンダードとかかな。客入れのためというよりは、自分の緊張をほぐすためにUSBに入ってた好きな曲をひたすらかけてましたね(笑)。
 
前日までアグレッシヴにいくか涼しげな感じでいくかすごく迷ってて、結局後者を選ぶことになりました。ふわ~っとした感じの曲からちょっとだけ微熱みたいな温度を感じるのが好きで。そういう、音が無理なくダンスさせてくれるあの感じがオープンにもあうかなと。それにしてもちょっと無難すぎるかな?と思う瞬間もあったけど、結果的には好きなものを押し出せてよかったと思ってます。いろいろ荷が降りてからのSatoshi Otsukiさんがすごく良かったのも良い思い出。
 
ーーカンファレンスやワークショップには参加しましたか
 
去年は大事をとって自分の現場以外は回れなかったので、今年スケジュールが合うなら、いろいろ見てみたいです。始まる前から僕の地元の大阪でも、一流レーベルによる楽曲制作クラスのために準備をしている人が結構いて、ここまで波及しているんだなと印象に残っています。
 
――TDMEのプログラムをひとつ自由にプロデュースしてよいことになったら、何を行いますか?
 
マイノリティ(被差別経験を含まない単なる少数派も含む)の居場所としてクラブやクラブカルチャーはどのように機能・変遷してきたのか? このことについて勃興当時の様子を知る人、今の人、方々にいる現地の人、アカデミックな立場の人らの話を伺えたら面白いかなと思います。
 
あとは音楽を聴いたり、ダンスをしていると楽しくなったり悲しくなったりすることやその力の使い方について。これは名前を出しますが、ホスピスなどで音楽による緩和ケアを行っている音楽療法士の佐藤由美子さん、老人ホームで“とつとつダンス”なるワークショップを開いて身体コミュニケーションをされている砂連尾理さん、脳と音楽の関係性について理研で研究している宮崎敦子さん、各地の幼稚園でDJをしているアボカズヒロさんらにお話を伺いたいです。DOMMUNEの宇川さんが乱入してきたら、もっと面白くなるかな(笑)。
 
——TDMEがどのように発展してくことが、日本のダンスミュージックシーンにとって理想だと考えますか?
 
続けること! あと大阪の人間としては、年一回の本山のほかに全国でワークショップやカンファレンスがあると嬉しいですね!

 
 
 先日、カンファレンスの登壇者も発表されました。普段、私も接点を持つことができない人たちばかりなので、積極的に交流を図ってこようと思います。Zeebraさんの言葉を借りるとしたら、貪欲に得しに行こうかなと。
 
■TDME公式サイト
http://tdme.com/ja/

 
24
NOV

RANKING

  • WEEKLY
  • MONTHLY
  • ALL