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Dachambo CD HATAのMachine de Music コラムVol.72
Go Hiyama図鑑

clubberiaを御覧の皆様こんにちは

2020年も気がつけば、あと一ヶ月ちょっと
コロナの影響ですったもんだしてたら、今年もあっという間でしたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

今回は、テクノDJとして数々のリリースや海外ツアーを行い、サウンドデザイン会社“ECHOES BREATH”の代表でもあり、「音」を見つめなおす展示会「見えない展示」の主催、東京藝術大学ゲスト講師など、音を多角的な視点から捉えた活動をしてる音楽家、Go Hiyamaさんとお話をした時の様子です。

わたくしCD HATAも、テクノDJとして活動をしつつ、Dachamboというバンドもやりつつ、楽曲制作の講師、またinvisi fellowsとして、音を多角的な視点から捉えた活動という、同じ方向を見ているシンパシーを感じ、今回zoomでお話させてもらいました。



CD HATA「Ableton Meetup Tokyoで登壇してもらった以来かな?お久しぶりです!」



Go Hiyama「その節はお世話になりました!」

CD HATA「まずテクノアーティストとしての活動から聞きたいんだけどいい?」

Go Hiyama「2002年にデビューして、その2,3年後から海外ツアーがはじまり、そこから10年以上、毎年海外ツアーはしていましたね。リリースも絶え間なくしていました。」

CD HATA「このコラム第20回目に登場しているShin Nishimuraさんが、10年くらい前かな?Go Hiyamaさんの話をしていて、その時からGo Hiyamaさんのことを存じ上げていてw」

Go Hiyama「そうだったんですね。Shin NishimuraさんのPlus Recordsからも何タイトルかリリースしていましたね。」

CD HATA「そんなテクノアーティストとして活躍していたGo Hiyamaさんが、サウンドデザイナーとしても活動しているのを見ていて、自分も今サウンドデザインを含めた音そのものに対して見つめ直しているのもあって、今日は色々な話を聞いてみたいと思いました。サウンドデザイン会社“ECHOES BREATH”を立ち上げたきっかけを聞かせてもらってもいいですか?」

Go Hiyama「テクノプロデューサーだけが自分のやりたいことなのかな?と思い始めた時期があったんですよ。元々は建築を勉強していたり、デザイン全般に興味があったのもあって、サウンドデザインの会社を作りました。」

CD HATA「テクノだけが自分のやりたいことなのか?で言うと、別名義のLisMは、いわゆるテクノとはまた違った作風ですよね。」

Go Hiyama「そうですね。踊るためのテクノだけを作っていた時に、違う音楽を作りたくなり、BPMも遅めでリスニング向けの作品を作っていました。音楽的に色々なことをやりたくなったのもありますし、絵とか芸術や、他ジャンル、他分野の人と話をすると面白いじゃないですか、そういった意味で違うことをやりたくなったのも会社を始めたきっかけに繋がるかもしれませんね。」

CD HATA「自分も音楽ばっかりやってきた人間なんだけど、確かに他のアート表現をしている人から得られるものって大きいよね。アートとデザインとエンターテイメントってくくりで言うと、俺なんかがやってきたことは、エンターテイメントの要素が強いかなと思ってて、アートとかデザインって視点で、音楽や音をとらえることに最近は興味が強くなってるんだよね。」

Go Hiyama「僕の中では、アートとデザインに対して、エンターテイメントはまた別の領域にある物のような気がしています。“Krebs Cycle of Creativity”というのがあって、これはサイエンスとエンジニアリングとアートとデザインの4つの領域に分けて考えていくやり方なんですが、これは物凄く腑に落ちましたね。」

CD HATA「なるほど!これ興味深い!」

Go Hiyama「会社のホームページに“Krebs Cycle of Creativity”から引用させてもらった箇所もあります。」



CD HATAOUR SOUND DESIGNって所だね。サウンドデザインに興味を持ったきっかけは何かある?」

Go Hiyama「きっかけといいますか、サウンドデザインという言葉は色々な使われ方をしていて、例えばウィキペディアのサウンドデザインの項目には、いわゆる音効さんにあたることが書かれていたり、建築でサウンドデザインというとホールなどの音響設計だったりするんですよ。でも自分の中でのサウンドデザインはもっとシンプルなもので、デザインは意匠だと思うんですが、意匠として音を作り上げていくことがサウンドデザインだと思っていて、例えば電車の発車メロディーもデザインされていますし、HATAさんの所属しているインビジさんもそういうことをやられていますよね。」

CD HATA「そうそう、俺も音楽をやってきた中で、そもそも音って?所に行き着いて、このコラム69回目にも書いたインビジに足を突っ込んでいったら、すげー世界が広がってたwと思って、俺もバンドやDJをやってきたんだけど、そういった方向に向き、Go Hiyamaさんもテクノアーティストとして活躍しながら、そういった方向にいってるのに共感をして、今日はお話をお聞かせ頂いているわけですよw」

Go Hiyama「ありがとうございます!自分なりのサウンドデザインを確立していきたいと思っています。」

CD HATA「そんなサウンドデザイン会社“ECHOES BREATH”からリリースされているAutomatic BGM Generator“AISO”のことを聞いていこうかな。」



Go Hiyama「音楽には、作り方、聴き方、在り方があると思っているんですが、まず作り方に関して言うと、“AISO”は、あえてシンプルにテクノロジーと音楽を面白く融合させ、それが、あ~面白いね!だけで終わるのではなく、ミュージシャンの為になるものを目指しました。例えば時間軸で、頭の1小節目、0秒から作っていくということにとらわれないとかですね。
開発に参加してもらっている元スーパーカーのナカコーさんの言葉を借りると“AISO”からのインスピレーションで音楽家による表現の選択肢が増える。作曲方法は一つではなくて良く、音楽には色々な作り方があり、その一つの提案ができたらいいと思っています。
次に聴き方なんですが、昔だとCDやカセット、レコードなどを再生機器に入れ、よし音楽を聴くぞ!という聴き方、今だとストリーミングのアプリを立ち上げてプレイリストを聴くというのもあると思うんですが、BGMに焦点をあてて、聞き流すという一つの分野、ジャンルを提示したいと思いました。“AISO”はボサノバが流れてジャズが流れて、次にロックが流れるというものではないです。音楽家によるある範囲の曲調で音楽が流れ続けます。曲間の無音はなく、自分がスイッチを切るまでずっと曲は終わりません。それって音楽の聴き方を変えると思いました。
最後に在り方なんですが、そういったBGMに焦点をあてた音楽が世の中に出ていった時に何が起こるのかなと思いました。
例えば、そのうちのミュージシャンの収入、稼ぎ方についてで言えば、CDをリリースする場合、だいたい1500~3000円くらいの価格相場というものがありますよね。ダウンロードだと150~200円くらいですかね。そこから何%がアーティストに還元されてという。ストリーミングなんかはもっと少ないと思うんですが、そのルール、システムに従わないといけない。
でも新しい音楽メディア自体を作ってしまえば、自分でルールやシステムを決めることができる。
作り方、聴き方、在り方は、それぞれ選ぶことができますし、その選択肢を広げる手助けになればと思っています。」

CD HATA「なるほどね!俺、音楽をBGMとして聞けなくてw、例えば喫茶店とかで打ち合わせをしている時に、BGMがかかってるとついついそっちに耳がいっちゃって、この曲はこういう展開の後にこういう展開になってるからカッコイイんだな、とかに意識がいっちゃって、あれ?話なんでしたっけ?とかなっちゃったりもしてw」

Go Hiyama「HATAさんは音楽をやられているので、そこまでの深度でBGMに意識がいきますが、そこまでの深度ではなくても、みんな何かしらを感じてはいると思うんですよ。
無意識でも、例えば曲が終わったタイミングで2秒くらい無音があると、あっそろそろ行こうか?みたいな。聴いているわけではないんですが、感じてはいるんですよね。
その辺をきちんとデザインしてあげるのが、サウンドデザイナーとしての役割でもあると思っています。
“AISO”でやろうとしたことが、無音と音楽の間のものを作ろうと思ったんです。
無音だと寂しかったり空気が張り詰めた感じになってしまうので、それが嫌で何かしら音楽はかけておく、極端に言ったら音楽を聴きたいんじゃないんだけど、しょうがないから音楽をかけている。
音楽だとメッセージ性が強かったり、ジャンルの好き嫌いがあったり、曲間があったり、そういったことがBGMとしての音楽の場合、問題点だなと思い、音楽が聴きたいんじゃないんだけど、無音は嫌だという時にフィットするものを作りたかったんです。」

CD HATA「そっか!風鈴なんかはそういうポジションのものだよね。
あと“AISO”はRaspberry Piってカードサイズのコンピューターに組み込んだっていうのが面白いと思った!」

Go Hiyama「それも色々な方から言って頂きます。自分の中では自然な流れで、ハードウェアで販売するのもソフトウェアで販売するのもどちらもありでした。逆にどちらか一方だけでという考えはないですね。」

CD HATA「ハードもソフトもどちらも良さがあるもんね。
飲む時にチリーンって音が鳴るカップ“モノヲト” 
これは100%アナログだよね。」

monowoto from bird and insect on Vimeo.


Go Hiyama「そうですね。陶芸家の方も新しいことに挑戦したいという考えがあったらしく、僕も音楽だけではなく音自体で何かやれることはないのか、音自体で社会貢献ができることはないのかと思っていて、そこで交差する部分があり話が発展しました。
陶磁器・肥前吉田焼“224”は色々な陶磁器を作っているブランドなんですが、カップにしようという話になるまでに色々なディスカッションをしました。」

CD HATA「ホントだ!ホームページ見ると、いろんなものを作っている会社なんだね。そしておしゃれ!」

Go Hiyama「ビートたけしさんとコラボレーションをしたこともあるらしいです。
発想が柔軟な分やれることが色々あったので落とし所をみつけるのに時間がかかりました。」

CD HATA「カップを傾けると玉が転がって、芯に当たると音が出るって仕組みだと思うんだけど、芯の太さだったり、玉の大きさだったりで音が変わるよね。」

Go Hiyama「はい。磁器なので焼いた時に伸縮したりもするので、その調整は大変でしたね。理想の音に近づける為に色々試してみたんですが、ある時にふと、目的は良い音を発音させることではなく、大切なのは、飲んだ時に心地良いと思ってもらうことなんだと気づいたんです。
どうしても音楽家目線だと、いかにいい音を鳴らすか、大きな音量で鳴らすかなどに意識がいきがちなんですが、クリエイター目線ではなくユーザー目線になれるか。アートという自己目線だけでなく、デザインという他者目線になれるか、それがサウンドデザインだと思います。」

CD HATA「お~なるほどね!」

Go Hiyama「以前、Go Hiyamaさんはユーザー目線のわかるアーティストですね、と言って頂いたことがあって嬉しかったですね。」

CD HATA「それは嬉しい評価だよね!今日はありがとうございました。個人的にすげー為になりましたw 今後ともよろしくお願いします!」

Go Hiyama「こちらこそ今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました!」


アートとデザイン、音を多角的な視点から捉える、まさに今 CD HATA的に興味大なお話を実はココに書ききれないくらいwお話しました!
AISO、モノヲト、機会があったら是非お試し下さい。

CD HATA


ECHOES BREATH
https://echoes-breath.com/

AISO
https://aiso.ooo

モノヲト
https://echoes-breath.com/works/%e3%83%a2%e3%83%8e%e3%83%b2%e3%83%88%e7%99%ba%e8%a1%a8/