コラム第28回目


clubberiaをご覧の皆様いかがおすごしでしょうか?
今年も残りわずかですね。
年を追うごとに月日の流れが早くなり、くるくる回ってすぐ来年ですね。

この『Machine-de-MUSIC』普段はデジタル機器に関してのことが多いんですが、今回はアナログな話です。
九州ツアーで福岡に行った時に、1枚からオリジナルのレコードを作ることが出来るShemerRecordsさんにお邪魔した時のことを紹介します。



CDプレイヤーを所有していない人もチラホラいる昨今ですが、みなさんはレコードプレイヤーは持っていますか?
このコラムをご覧になられている方は、DJの方もいらっしゃるでしょうから、ターンテーブルを所有している人は比較的多くいらっしゃるのかな?
ダブ・プレートという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
直径12インチ、または10インチ、7インチのアセテート盤にダイレクトカッティング方式で録音したレコードのことをダブ・プレート(Dubplate)といいます。
アセテート盤は塩化ビニール製の通常アナログ盤よりも強度が弱く、湿度や経年変化により表面剥離なども起きやすく、致命的なのは数回レコード針をおとすだけで音質が極端に悪くなる性質を持っているのですが、ShemerRecordsでは、塩化ビニール製の盤に直接カッティングして世界で一枚のレコードを作ることができます。
市販のレコードはプレス式で生産されていますが、一般的にはダイレクトカッティング方式の方が音がいいと言われています。(製作する人の技量による所が大きいのですが)

今回は、12/16にリリースされる「CD HATA & MASARU/Angel Defense」をカッティングしてもらいました。




まずはデータをWAVで渡し、PROTOOLSに取り込みます。
PROTOOLSのアウトがモニター用とカッティングする機械に出力されています。

45回転でカッティングしてもらうことにしたのですが、45回転のレコードをカッティングしてもらう場合、PROTOOLS側でサンプリングレートを落とし再生したものを、半分の速さで回転させているレコードにカッティングしていくという方法をとっていました。
ゆっくり再生したものをゆっくり録音し、早く再生させることによって最初と同じスピードになるってことですね。
昔のプログレのレコードなどでは、こういった手法で製作されたものもあるそうです。
当然、45回転のままカッティングすることも可能なんですが、物理的に早く回転させればさせるほど、刻み込むレコードに揺れが発生し、その揺れが音のムラになってしまうそうです。なので、半分の速さでゆっくり回転させることで、より安定させた音を記録することができます。いろいろ試した中でベストな方法をとっているとのことでした。
なるほどですね!

作業の後、ShemerRecordsのオーナー興(コウ)さんといろいろお話をしたので紹介します。

HATA ※以下(H)「このスタジオではいつからレコードをつくってるの?」

興さん ※以下(K)「2年前ですね。もともとDJをやっていてレコードでプレイをしていたので、レコードに対しての思い入れはありました。レコードのカッティングをするようになったのは、オリジナルの楽曲をレコードでプレイできるようにする為というのもあるんですが、今、音楽ってデータが主流になってきてるじゃないですか、それも便利でいい点もあるんですが、やっぱり形に残るものっていいと思うんですよ。作れば世界に一つですから、そう思ってはじめました。」

H「そうだね。確かに自分も普段の生活の中では音楽をデータで取り扱うことが多いけど、レコードだったり形があるものになると感慨深くなるなぁ!このレコードのカッティングマシーン凄いね!」



K「これはドイツ製のものです。マイクで有名なNeumannなんかもカッティングマシンを作っていて、50~60年前のカッティングマシンで現役で使える名機なんかもあるんですが、現行のカッティングマシンを導入しようと思い、ドイツまで研修を受けにいき購入しました。今でもたまに現地まで指導を受けに行くんですが、細かいことなんですが、行くたびに新しいノウハウの発見がありますよ。」

H「DJが自分の楽曲をプレイする為にカッティングをお願いするのは多そうだよね。他にどんなところからお願いされたりするの?何か面白いのとかあった?」

K「無音のレコードを作って欲しいというオーダーがありましたね。」

H「え?無音ってことは溝は掘ってあるけど音が入ってないってこと?」

K「はい。NHK連続テレビ小説のサウンドトラックも手がけている、ノイズ界の大御所の方からのオーダーでした。問い合わせが入った時に一瞬もしかしたら?と思ったんですが、まさかと思っていたらご本人でビックリしましたね。(笑)」

H「そのレコードは何に使うんだろうね。」

K「レコード場合、たとえ無音でも針がレコードにこすれるチリチリした音が聴こえるじゃないですか。それを無響室の中でサイン派の演奏と同時に聴くという企画だったそうです。」

H「なるほど、NHK連続テレビ小説のサウンドトラックも手がけている、ノイズ界の大御所の方らしいね!」

K「NHKといえば、教育テレビで音楽の基本的な仕組みを子どもたちが感覚的に理解できるような、主人公が音楽の力でみんなを救出していくという冒険物語の番組があって、毎回一つの楽器などがテーマにして構成されているんですが、ターンテーブルの回があり、オリジナル曲をスクラッチしながら曲を再構築するというのがあったんですが、そこで使うレコードもカッティングしました。

あとは芸大生の卒業制作で使う為のレコードだったんですが、レコードって外側から内側に針が動いていき、最後は同じ円周をずっと回り続けるんですよ。通常は曲が終わって無音になった所が無限にまわっているんですけど、その最後まで音を入れると最後の一周の音が無限にループするんです。それを利用して、録音した環境音を無限ループさせた何台かのターンテーブルを同時に再生させるというインスタレーションのような卒業制作用のレコードを作りました。

レコードの溝を終了させるのは、カッティングしている針を持ち上げて止めるんですけど、最後の一周をピッタリ一周で止めないと奇麗にループしないんです。手作業でやっている為、カンでピタっと一周で止めるんです。レコードに溝を刻み込みながらモーターの力で外側から内側に移動させていくんですけど、最後にそのモータのみ止めると内側に移動せず同じ場所を刻み込んでいきはじめ、ぴったり一周で針を持ち上げるんです。最終的にはカン頼りなんでスキルが必要でしたね。」

H「AUDIO ACTIVEのギターのCutsighさんがリリースしたLOOPってレコードもその原理で作ったやつなんじゃないかな。」

K「あとは結婚式のプレゼントにみんなのお祝いメッセージをレコードにしてサプライズで贈るとかもありますね。メッセージを式の途中で録音して、そのメッセージの音声ファイルを後日メールで受け取ってパソコンの中に保存してあったとしても、何年か後に聞くってなかなか無いと思うんですよ。HDは保存にも向いていないし、いつか消えてしまう。でもレコードとして形に残っていれば、ふとした時に聞いてみたりすることもあると思うんですよね。」

H「そのレコードを飾っておいたりしたら、誰か遊びに来た友達が、そのレコード何?って話になって、ちょっと聞いてみようかってなって、また感動!とかってありそうだね。写真もデータで保存しておくことで便利な部分もあるかもしれないけど、昔の本になってるフォトアルバムを開いて見てみることで、その時の思い出に浸れるのが大きかったりするもんね。やっぱり形として残っているっていうのはいいよね。
少しスタジオのことも聞いていい?モニターはMusikelectronicを使ってるんだ。これ選んだ基準はある?」



K「音の正確性ですね。JBLとかも試したんですが、Musikelectronicの音を聴ける場所があって、こっちの方がより正確な判断ができると思ったので導入しました。サブウーファーも入れています。」

H「マスタリング的な観点で音の判断が必要になるだろうから、Musikelectronicの音はいいかもね。以前このコラムでとりあげたKOYASくんのスタジオもMusikelectronicで、確かにくっきりしてるなと思ったな。
この壁にあるのは外から引いてる電源の配電盤か何か?」



K「そうですね。外の電線から200Vを引いて、変圧器を使って100Vと115Vに変換しています。200Vを引くのはオススメですよ。そんなに金額もかからないしケーブルを変えるよりもハッキリと音の違いを判断することができます。というか電源をしっかりさせることでケーブルによる音の違いなどもわかるようになりましたね。」

H「ケーブルとか凝りはじめたらキリがないよね(笑)」

K「僕は持っていないんですが、NASAの人工衛星でつかっているようなケーブルだったり(笑)、ビンテージケーブルとかも凝り出したらキリがないですよね。」

H「今回レコードをカッティングしてもらって、やっぱり自分の作った音だから、どういうふうになっているかがはっきりわかっているからこそ、それがレコードになることでレコード特有の音の質感っていうのがはっきりわかったな。独特のサチュレーションの感じっていうのかな。好きだな!」

K「一番は元の音源をそのまま原音に忠実に収めるというのを意識しています。アナログにコピーする以上絶対に劣化というか音の変化はありますよね。そのままであればオリジナルが一番音が良いわけだし、その音の変化も含めてレコードの魅力としてとらえてくれればと思います。繰り返しになってしまいますけど、世の中、データとか目に見えないものが増えていってるじゃないですか、今一度レコードや形あるものに目を向けるのもいいものですよ。あとこういうお店をやることで、HATAさんもそうですけど、ケンセイさんなど普通に生活していたら接することができないようなアーティストと接することもそうですが、音楽が向こうからやってくるのが良いですね。」



オーナー興(コウ)さんのレコード、形あるものへのこだわりを感じる話を聞けました。
ShemerRecordsのホームページものぞいてみて、もし良かったら1枚からレコードを作ってみてはいかかがでしょうか?
http://shemer-records.com

フェイスブックページ
https://www.facebook.com/shemerrecords/

今回1枚だけレコード作りましたが、12/16にリリースされた「CD HATA & MASARU/Angel Defense」もチェックしてみて下さい。
またレコードでもリリースしたいなぁ~!!!



SoundCloud 試聴サイト
iTunes
Beatport
Amazon MP3
Google Play
Juno Download


お話のオマケ

H「俺的にはこれ気になるんだけど、RhodesもだけどE-muのSP1200とTR808」



K「これ使ってたまにLiveSetやったりしてるんですよ。」

H「お~!それも今度聞いてみたいなぁ~!」

というわけで、2015年も『Machine-de-MUSIC』見て頂き皆様ありがとうございました!
また来年もよろしくお願いします!

 CD HATA




archive
第一回 「Kaossilator Pro」その1
第二回 「Kaossilator Pro」その2
第三回 温故知新!?
第四回 「PICnome(ピクノーム)」その1
第五回 「PICnome(ピクノーム)」その2
第六回 「CI2+ de CUBASE 」
第七回 音楽制作の移り変わりと時代の変化に対する不可分的相関関係について!?!(タイトルなげぇ?!?)
第八回 「年末スペシャル」MIXに深みあり、人に歴史あり!!!
第九回 新年のご挨拶
第十回 KAOSS PAD QUAD「くわぁ~ドォ!!!」
第十一回 【社会の時間】社会科見学の巻
第十二回 音を見る!!!
第十三回 りらっくスタジオ
第十四回 新年あけまして~!!!旅のお供にmonotron DUO&monotron DELAY
第十五回 やっぱ幅の広さは大切ッスね!!!
第十六回 スペインはバスクからのウェルカム!!!
第十七回 裏の裏は表だったのだ!!!
第十八回 人生がインプロビゼーション
第十九回 一枚のアルバムができるまで
第二十回 やっぱり繋がりって大切ですよね!!!
第二十一回 マ~ヤっぱり2013年もよろしくおねがぁいをしま~す!!!
第二十二回 このコラム 3rdアニバーサリーなのさ~ど!!!
第二十三回 へび年クネクネ振り返る!!!
第二十四回 小さな巨人『littleBits』
第二十五回 わかりはじめたハイレゾリューション
第二十六回 世界基準の田舎テクノフェス その名「rural」
第二十七回 Ableton Liveを酒の肴に
第二十八回 形あるものへの美学
第二十九回 Machine-de-MUSICとMASCHINEで
第三十回 モジュラーシンセは無限大の音作り
第三十一回 シンセ番長の大博物館
第三十二回 "CD HATA & MASARU / Octopus Roope" 音の中身はこうなっている
第三十三回 日本初 音楽カンファレンス&イベント『TOKYO DANCE MUSIC EVENT』
第三十四回 蜻蛉-TONBO-「Tokyo Mad Cave」リリース記念 O.N.O a.k.a MachineLive対談インタビュー
第三十五回 Machine-de-MUSIC 北海道編 第一弾 kuniyuki studio
第三十六回 Machine-de-MUSIC 北海道編 第二弾 Hideo Kobayashi studio
第三十七回 Sakiko Osawa「Chronic」リリース 日々研究
profile
DJ HATA
CD HATA


Yahoo公認フェス番長”Dachambo”のシンセサイザー担当
Dachamboは5度のフジロックへの出演しており、ライジングサン、朝霧jam、サマーソニックなど日本のフェスへ多数出演することで、Yahooよりフェス番長の称号を与えられる。
またオーストラリアツアー、アメリカツアーなどワールドワイドに活躍し2016年9月16日ベスト盤アルバム”HERBEST”をリリース
http://goo.gl/ywPyvU

CD HATA名義のテクノDJとしても、野外フェス、クラブイベントで精力的に活動中
remix制作、MixCDリリース、アンビエントアルバムをリリースし、オーストラリアやフランス~スペインツアーなど海外でも活躍し、元i-depの藤枝伸介との「Polar Chalors」Ableton認定トレーナーKOYASとの「CD HATA×KOYAS」kannonsoundプロデューサーMASARUとの「CD HATA&MASARU」等、多彩なリリースを重ねる。

また、300ページに及ぶ「Logic Studio テクニカルマスター」執筆などデジタル機材に精通しており、DJスクールidpsで楽曲制作の講師を務める。
http://www.idpsorg.com/production


『CD HATA』
facebook
http://www.facebook.com/CDHATADachambo
Twitter
http://twitter.com/DJHATA_Dachambo
tumblr
http://hatadachambo.tumblr.com/
mixcloud
http://www.mixcloud.com/CDHATA/
YouTube
http://www.youtube.com/playlist?list=PLMm1DgIPaBk-QX9Lq-k-TfyV_RhrCQHDc
beatport
https://pro.beatport.com/artist/cd-hata/190156

INFOMATION


海外・日本の第一線で活躍する現役DJを常任講師として迎えているDJスクール「IDPS」にてCD HATAも講師をしています。
東京校楽曲制作コースではLogic Proを、楽曲制作オンラインコースではAbleton LiveまたはLogic Proを選択可能となっています。
興味のある方は、カウンセリングの予約をお願いします。

東京校 楽曲制作コース
http://www.idpsorg.com/production

楽曲制作オンラインコース
http://www.idpsorg.com/production_online


DJ SCHEDULE


2017/5/19 (FRI)
『caldera』
at RAF-REC
18:00 - 0:00

GUEST DJ
CD HATA from DACHAMBO

DJ
JOJO(FANTASIA)
SAITOPEN(SANDINISTA/OPEN)
ryohei(BASE the SPACE)
yoshiki(caldera)

Used Cd / Record & Cafe
【RAF-REC】
〒990-0828
山形県山形市双葉町2-1-1

フェイスブックイベントページ
https://www.facebook.com/events/294297070999411/





2017.05.20 (SAT)
『ONENESS』

at THEARTER (福島県郡山市清水台1-6-9 八幡プラザ3階) OPEN/START 22:00
DOOR 2,500yen(w/1D)

Special Guest
CD HATA (Dachambo)

Guest DJ
U-SKE (dob masala)

DJ's
HII (ONENESS/GRASSCODE)
Sho Nagamine (HOOP)
Syuhey

Dachamboのサイケデリックシンセストと活躍し、昨年末にテクノトラックをCD HATA&MASARU名義でOctopus Roopeをリリースし勢いが増しているCD HATAさんが1年半ぶりに来郡です!
そして会津の重鎮U-SKEさんも出演です!
良質なダンスミュージックを体感しに是非とも!

フェイスブックイベントページ
https://www.facebook.com/events/1845972062332859/





2017/5/26 (Fri) 『TYPE NINE』
@Aoyama TenT
OPEN 22:00~
Charge:1,000yen(with 1D)
- 出入り自由

■Line up
CD HATA(Dachambo)
TOMO HACHIGA(HYDRANT/NT.LAB)
K.N.(hydraulix/original mass recording)
CHIE NAKAJIMA(RE:INSOLENCE)
Gradate (Tokyo Bass Music)
SHIT DUO
SHINICHIRO IMANARI(09recordings)

2016年から都内で不定期開催するテクノパーティー「TYPE NINE」。今回は日本最強(狂)サイケデリックジャムバンド"Dachambo"のシンサイザー担当CD HATAと前回に引き続き再登場となる孤高のダークミニマリストTOMO HACHIGA、そして日本のACID TECHNO第一人者にて、日本のアンダーグランドテクノシーンをリードするK.N.が緊急参戦いたします。

Aoyama TenT
東京都渋谷区東1-2-23 旧ma東ビル3F

フェイスブックイベントページ
https://www.facebook.com/events/304063510016494





2017.5.27 (SAT)
『Oregon Eclipse 2017 Teaser in TOKYO』

今夏、アメリカ・オレゴン州で開催される「オレゴン皆既日食フェス」のプレパーティー「Oregon Eclipse 2017 Teaser in TOKYO」が5月27日(土)に新木場ageHaにて開催決定!

Dachambo
CD HATA
出演

【 Oregon Eclipse 2017とは?】
オレゴンの大自然の中、アートや音楽に囲まれて1週間キャンプをしながら皆既日食を観測するという巨大野外イベント。
世界中400以上のアーティストが7つのステージに集結し、3万人以上のオーディエンスが熱狂する!

http://www.clubberia.com/ja/events/266803-OREGON-ECLIPSE-2017-TEASER-in-TOKYO/



INFOMATION
release

release

RIPPLE

CI2+

release

release

release

release

release

release

release